44話
「うおりゃあああああっ!」
次の相手は、1級モンスターのグラビティ・タイタンと、亜人系モンスターの集団、計80体の群れだ。最早モンスターハウスと言っても過言では無い。
グラビティ・タイタンは、黒い皮膚の全長18メートルにも及ぶ巨人であり、シンプルにデカくて強い身体能力に加え、重力を操作することができる特殊能力を持つ。
重力操作が出来ることは主に二つ。一つ目、触れた物に反重力を与え、浮遊させることができる。二つ目、触れた物に重力を与え、他のものを引き寄せさせる。
ただ、コイツ自身はあまり頭が良くない。そこまで重力操作の能力を駆使して戦うことは無く、基本的には反重力を相手に与えて、地に足付かなくなったところを襲うか、地面の重力を上げて、相手の足を地面に貼り付けたところを襲うか、だ。
「『雷神の槍』!」
触れずとも重力付与が出来るのであれば、かなり対処は難しい。しかし、触れることが必須の重力操作であれば、地面の重力をいくら増やしたところで、必中必殺の効果を持つ『雷神の槍』は止められない。
サクッとグラビティ・タイタンの心臓を撃ち抜き、残りの亜人系モンスターを倒していく。2級モンスターのリザードマンや、エレメンタル・オーガなどが少々面倒だが、私たちの敵では無い。
80体にも及ぶ亜人系モンスターの群れは、約3分で全滅した。
「よーし!次行こー!」
次は犬系モンスターの群れだ。リーダーはケルベロス。いくつかのオルトロスを従え、構成の多くはインフェルノ・ウルフである。
ケルベロスは三つ首を持つ地獄の犬で、めちゃくちゃデカい。オルトロスはケルベロスの二つ首バージョンで、一回り小さい。インフェルノ・ウルフは、地獄の獄炎を身にまとった大きめの狼だ。この群れは、30匹程度の数になっている。
犬系モンスターの強さは、その身のこなし、素早い攻撃、鋭い牙や爪による攻撃力がポイントだ。また、コイツらは全員『獄炎』の特殊能力を持ち、獄炎に焼かれたダメージは、ポーション等での治りが非常に悪い。いわば呪われた炎である。故に、探索者からはかなり嫌われている奴らだ。
「行きます!」
コイツらを倒すのであれば、セオリーは近付かずに倒すことだ。
サーシャが持っているトップグレードの自動小銃は、威力と安定性が非常に高い。基本的にジャムる心配が要らず、特殊弾にも対応している。
「ワオオオオオオン!!」
サーシャの銃弾がケルベロスの三つ首、全ての眉間に命中。ケルベロスは断末魔を上げた。
特殊弾とは、モンスターの素材を用いて作られた弾丸であり、1発1発がかなりの値段を誇る。いまサーシャが撃ち込んだのは、凶悪な毒を持つモンスターから生成された銃弾であり、命中した生物のタンパク質を瞬時に分解させるという効果を持つ。つまり、生物系のモンスターであれば、この弾丸1発で致命傷を与えることが可能なのだ。
外皮が硬いモンスターや、無機物系のモンスターには通用しないが、ケルベロスは銃弾自体は通るため、非常に相性が良い。
たちまちケルベロスの頭部が一部崩れさり、ボタボタと血を垂らしている。流石に一撃で仕留めることは出来なかったようだ。
「どんどん行きますよ!」
サーシャは、マガジンに装填された30発を全て発射する。それらは確実にケルベロスの肉体を崩壊させていき、撃ち終わる頃には、ケルベロスは虫の息だ。
『何じゃありゃ!!』
『あれは1発10万円するって噂の、ネクロファージ銃弾じゃないか?』
『結構グロいな⋯⋯』
『何百万かする攻撃放って倒せないって、ケルベロスヤバくないか?』
『確かに』
サーシャは、ネクロファージ・スライムから生成された特殊弾を撃ち終えると、すかさず新たな特殊弾のマガジンでリロードする。
あのマークは⋯⋯ダイナマイト・ゴーレムのコアから生成された特殊弾か。
「爆ぜてください!!」
崩れ落ちたケルベロスの皮膚を貫き、その内部に着弾した特殊弾は、ケルベロスの内部で大爆発を起こす。それは、巨大なケルベロスの頭が吹き飛ぶほどの衝撃だった。
『なんか頭吹き飛んだけど!?』
『何あれ怖い⋯⋯』
『あれ、人に撃ったらどうなるんやろな』
『そりゃお前⋯⋯即死だろ⋯⋯』
『ダンジョンこえー』
あれ、高いんだよなぁ⋯⋯。ネクロファージ・スライムの銃弾は、取り扱いが難しいもののネクロファージ・スライムからかなり採取できる。一方、ダイナマイト・ゴーレムのコアは、ダイナマイト・ゴーレム1体から少ししか採取できない。その為、1発40万円する。流石にこっちはサーシャも節約してくれたようだ。
なお、ネクロファージ・スライムも、ダイナマイト・ゴーレムも、1級モンスターである。
ケルベロスも倒したことだし、残りのモンスターも倒していこう。とりあえず私は『雷神の槍』使って槍を投げれば、オルトロスもインフェルノ・ウルフも容易く撃破可能だ。
「アリサとセリナはどうする?」
「ふふん。私の新たに開発した遠距離攻撃を見せてあげるわ」
「私も試したいことあるんだよね〜!」
「よし、じゃあ各々やってみようか!」
まずは私だ。いつも通り魔法を付与した安物の槍を、オルトロスに向かって投げる。オルトロスは頭が二つあり、だいたい同時に頭を潰さないと再生する厄介な能力も持つ。そのため、投げる槍は二つだ。
「ウオオオオオオオン!!」
「よっしゃ撃破!」
『相変わらずこの投槍は一体⋯⋯』
『細かいことは気にするな』
『リンネちゃまの神業だ。それ以上でも以下でも無いぞ』
これはもう見慣れたのか、殆どの人が突っ込まない。ありがたい話だ。
アリサの方を見てみると、何やら剣に魔力を込めているようだ。魔力操作は得意じゃなかった印象だったけど、練習したみたいだね。
「——っ!はぁっ!」
「ワオオオオオオン!!」
一閃。アリサの剣から鋭い衝撃波が飛び、それがオルトロスの頭を同時に二つ切り落とした。
漫画とかで良く見る、斬撃を飛ばすというやつだ。あんなのやってる人、異世界でもそう居なかったぞ。そのうち剣からビームとか出したりするんじゃなかろうか。
『え?』
『は?』
『なんか、斬撃飛ばしてなかった?』
『そんな事出来るの?』
『ここはコミックの世界かな?』
『アリサ様ヤバすぎる』
いやぁ、そうだよね。そりゃこれはザワつくよね。だって斬撃飛ばしてんだもん。そんなのアリかよ!って話にもなるよ。
当の本人は、無事に新技を成功させられたことに喜んでいた。⋯⋯まぁ、喜んで飛び跳ねてるアリサが可愛いから、いっか。
次にセリナを見てみると、投げナイフを投げていた。
「ほいほいほいほい!」
「ウオオオオオオオオオオオン!!ワオオオオオオオン!!」
よく見ると投げナイフに紐か何かが付いているようで、投げたナイフが手元に帰ってきている。
投げナイフの精度は非常に高いらしく、同時に10本投げたナイフが、綺麗に1直線を描きオルトロスの首を落としていた。まだこっちの方が斬撃飛ばすよりは、まぁ有り得る⋯⋯かなぁ。
あと、投げてから次の投擲までが速い。1秒で3回は投擲してるみたいだ。この辺は、実にファンタジーである。
『投げナイフってさぁ』
『皆まで言うな』
『もう銃とか要らないですよね』
『ライフルより貫通力あるのは何?』
『知らん』
『相変わらずのチートっぷりだなぁ⋯⋯』
こちらもコメント欄がザワついている。大抵のことは「フルールだから」とスルーする癖がついてきた視聴者たちも、初見のことにはツッコミしたくなるものらしい。
そんなこんなで、ケルベロスの群れを倒した私たちは、特殊弾の補充のためにも、その死体を余すことなく魔法袋に詰め込んだ。




