42話
Re:Bloomのパフォーマンスが終わると、会場は拍手に包まれた。
しかし、ハトビの時とは違い、歓声のような物は聞こえない。一瞬失敗したかと思ったが、みんなの表情を見れば、荒い呼吸でお互い目配せして笑っている。
顔を見れば、それが成功だったか失敗だったかなんて、簡単にわかるほど、みんなの顔からは成功を感じ取った。
——やりきった。
私たちは余韻冷めやらない中、別れの挨拶を済ませ、舞台裏に捌ける。
「〜〜〜っ!ヤバかったね!」
「私、ちょっと泣きそうでした⋯⋯!」
「当然の反響ね」
「楽しかったなぁ⋯⋯」
四者四様の感想を同時に呟き、私たちはお互いの目を見ると、次第に吹き出してしまった。
教師陣、生徒会の人たちも満足そうな顔をしていて、文化祭ライブは無事——大成功だったと言って良いだろう。
「ライブ超楽しかった!またやりたい!」
「私も私も!」
「皆さんに歌を届けられたので、私もまたやりたいです!」
「今度はもっと激しいダンスの曲もやってみたいわね」
セリナの言葉に始まり、全員ライブを心の底から楽しめたようだ。
まさか、異世界で魔物を殺し、魔王を討つため旅をしていた時は、日本に帰ってきて四人で文化祭ライブをやるなんて想像もしていなかった。というか、そもそも異世界に行くことも想像してなかったけど。人生何があるか分からないものだ。
四人で達成感を分かち合い、体育館から出ると、そこには沢山の人たちが並んでいた。
「リンネちゃまー!最高のライブだったよー!ありがとー!」
「セリナちゃんのキレキレダンス、超可愛かったー!」
「アリサ様のパフォーマンス、目が奪われました!!」
「サーシャたんの天使の歌声、本当に心が洗われたよー!!」
「今日のみんな、ビジュ良すぎて死んだ」
「今日ビジュ良いじゃん」
「いつも最高だろ」
全員、私たちに感想を伝えるために居るんだ。そう思うと、胸の奥がじんわりと暖かくなる。
すると、体育館横の校舎の窓——つまり、配信を見ていた生徒たちからも、窓から感想が飛んでくる。
「ライブ配信も凄かった!!」
「カメラワークも音響もガチプロすぎて満足度ヤバかったよ!」
「何よりパフォーマンスが最高だったー!」
「フルールありがとう!!」
そう言われて、スマホを開いて配信画面を見てみると、配信画面は誰もいない体育館の舞台を映したまま継続していた。
ライブも終わったというのに、同時接続者数は18万人をキープし、配信上で確認できる最高同時接続者数は30万人を超えていた。これは、DIVEの配信史上最も多い同接である。
『マジやばかったフルール』
『ドームツアーとかやってほしい!』
『え?これ文化祭ライブなの?』
『マジでプロすぎてビビった。今すぐデビュー出来るでしょ』
『投げ銭させてよ〜〜〜』
『てか、オリジナル曲?めちゃくちゃ良かったよな』
『ファンメイドの元動画見つけた。URL貼っとく。 https://www.dive〜〜〜』
『ぐう有能』
『ハトビのコール仕切ってたヤツ何者なんだよwww完成度高すぎてビビったんだけどwww』
『元々ハトビ大好きだったけど、今日でより好きになった』
『何歌わせても、何踊らせても神パフォーマンスになるの何で?強さに可愛さにパフォーマンス力もあるのヤバいって』
『神はフルールに百物は与えてるな』
コメント欄も、余韻に浸りながらの感想メッセージが絶えない。これを見れば、配信の方も大成功だったのだと自信が持てた。
色んな方向に笑顔を振りまいていると、宮園さん姉妹を見つけた。お姉さんの方には、本人確認登録のプラットフォーム作り関係でとてもお世話になったし、何より宮園さんには文化祭実行のアシストを沢山してもらった。
私は沢山の人々を掻き分け、二人の元へ歩いていく。
「宮園さん!お姉さん!見てくれたんですね!」
「あばばば、リ、リンネちゃま、急にオタクにそんな、しっかり目を向けて話されると、オタク死んでしまいます⋯⋯」
「この姉貴は⋯⋯。はぁ。ま、割と良かったんじゃない?成功と言っても良いでしょ」
結構なキモオタムーブをかますお姉さんと対照的に、宮園さんは相変わらずのツンツンムーブだ。昔のアリサよりツンツンしてるまである気がする。でも、そんな宮園さんでも良いと言ってくれたんだ。嬉しい事この上ない。
「それもこれも、宮園さんが文化祭実行に協力してくれたお陰だよ!ありがとう!」
そう言って宮園さんの手を取り、ぶんぶんと振ると、宮園さんは凄い勢いで手を振り払った。
「ちょ、ちょっと止めてよ!みんな見てるところで!」
「え?あ、握手嫌い⋯⋯?」
「いや、そう言うんじゃ無いけど⋯⋯とにかく、私は余計な嫉妬とか受けたくないわけ!」
そう言い、宮園さんはプイッとそっぽを向いてしまった。そんなに嫌がらなくても⋯⋯。
しょんぼりしていると、宮園さんが再度私の方を向き、口を開く。
「⋯⋯ねぇ、2曲目。なんであの曲を選んだの?」
「え?うーん⋯⋯。初めて聴いた時、すっごい素敵な歌だと思ったから、かな?」
「ふーん⋯⋯」
「なんかこう、私たちのもっとパーソナルな部分?を表現してる感じの歌詞が刺さったというか、シンプルに最高なメロディラインだったというか⋯⋯。とにかく、とても素敵だったから、あのファンメイド曲は大事にしたいな、ってそう思ったんだ!」
「⋯⋯そう。そんだけ褒められたら、作曲者も浮かばれてるかもね」
「うん!作詞作曲してくれたAM08:07さんには感謝してもしきれないよ!AM08:07さんには許可取りでメッセージ送って少しやり取りしたけど⋯⋯配信見てくれたかなぁ。届いてると良いなぁ」
私は空を見上げて独り言ちる。Re:Bloomを作ってくれた人に、この歌が届いてると嬉しい。そう純粋に思った。
「⋯⋯届いてるよ。絶対」
「?そ、そうかな?」
「⋯⋯うん。アンタらの曲作るくらい好きなら、絶対に見てると思う。アンタらのパフォーマンスも、気持ちも、絶対届いてるよ」
「⋯⋯そう、だよね。そうだね!ありがとう、宮園さん!」
何故か励まして?くれた宮園さんに感謝と別れを述べ、私はアリサ達の元へ戻って行った。
そこからは、またお化け屋敷の受付に戻り、色んな人からライブの感想を言われた。あと、フランクフルト屋のサインを見てきたのか、色んな人がサインを求めて来た。サイン色紙を持ってる人の方が少なかったので、スマホやらカバンやら、果ては体操服にサインを求められたりもした。たまに「これにサインして良いのだろうか」という思いを抱きながらも、私はひたすらサインを書いていった。
実質サイン会場も兼ねたのが良かったのか、私たちのクラスは、文化祭の閉会式でクラス展示物で最優秀賞を貰った。何故か当たり前のように私が賞を受け取りに壇上へ上がらされた。
「俺たち3-Aの優勝だー!」
「うおおおおお!!」
「西条効果が半端なかったぜ!!」
「打ち上げ行こうよ、打ち上げ!」
「それめっちゃアリ!天才の天才!」
クラスは打ち上げの事で大盛り上がりだ。勿論打ち上げには参加したいので、アリサ達には帰りが遅くなる旨を伝えた。
すると、全員各々のクラスで打ち上げがあり、それに参加します、といった返事が帰ってきた。どうやら三人とも、日本のクラスメイトと打ち明けられているようだ。
こうして、私たちの思い出——そして、高校最後の文化祭が幕を閉じたのだった。
文化祭編終わりです。
次回からはまたダンジョンに潜ります。




