39話
セリナのクラスの劇が終わると、体育館は爆発的な拍手に包まれた。セリナの演技も良かったけど、主演周りの人たちも凄い演技力だったし、何より脚本が良かった。まさか最後ああなるとは⋯⋯。
劇が終わり、舞台から捌けたセリナを体育館裏に迎えに行く。
「リンネ、アリサ、サーシャ!と、サクラさん?だっけ。観てくれたの見えてたよ!来てくれてありがとう!」
「セリナー!お疲れ様!すっごい良かったよ!」
「私も思わず涙が出たわ。流石私たちのセリナね」
「セリナさん、凄かったです!圧巻されちゃいました!」
「芹那さん、元子役とかじゃないんだよね?なんであんなに演技上手いの!?」
私たちが一気に喋るものだから、セリナは困ったような笑みを浮かべてしまう。
「どーどー、落ち着いて。とにかく皆ありがとう!」
照れているセリナを、アリサとサーシャ含めた三人で褒めちぎり、撫で回す。仲間が頑張ったなら、労うのが仲間の仕事だろう。
「てえてえ⋯⋯」
「まさかこんな至近距離でフルールの絡みが見れるとは⋯⋯」
「西条さんと同じクラスになれただけで、人生の運使い果たしたって思ったけど、どうやらまだ上があるらしい」
「芹那ちゃんの照れ顔堪らん〜〜〜」
何か聞こえてくるが、今は無視してセリナを撫で回すことにした。
それから、旅人役の子と脚本を作った子に挨拶した。二人とも満足気な顔で、とても嬉しそうだ。どうやら旅人役の男子と脚本の女子は付き合ったいるようで、お互いの頑張りをお互い認められたことが嬉しいようだった。
文化祭ライブのため、セリナを借りて離れる直前、なぜか主役と脚本のカップルと、フルール+桜の7人で写真を撮った。桜が一番混乱していたので申し訳ない。
そんなこんなで、桜とセリナのクラスメイトに別れを告げ、私たちは体育館の舞台袖に向かった。
舞台袖には、個人発表を控えた人達が何人か居る。今年の個人発表は私たちを入れて8組。漫才やマジックショー、バンド演奏など、多種多様である。皆、緊張した面持ちだ。
「あ、フルールだ」
「やべえよ⋯⋯俺ら、フルールの前座にもならねえよ⋯⋯」
「緊張してゲボ吐きそう」
なんだか唯ならぬ雰囲気だ。私はアリサ達を連れて、舞台袖でも人気の無いところに集まる。たぶん、私たちの姿が見えない方が良いだろうと判断した為だ。
「いよいよだね」
「ちょっと緊張してきました」
「配信用の機材は大丈夫なの?」
「うん。そこはワルキューレ・コードのレイナさんに相談したら、知り合いの業者さんを教えてくれた。プロのライブ会場で、ライブビューイングとか撮ってる人たちらしいから、ある程度信用して良いと思うよ」
そう。今回の配信は、現地で見たかった勢の不満をあまり残さない為にも、ガチでやる必要があった。なので、今回はお金とコネクションをフル活用し、本気の映像を皆にお届けする予定だ。
本当は機材などもガチらないつもりだったんだけど、事が事だったので、私たちだけ高校生らしからぬガチガチの機材を使用することになっている。⋯⋯まぁ、機材やスタッフだけガチで、当の私たちのパフォーマンスは素人そのものなんだけど⋯⋯。
涙を流したこともあり、それから私たちはメイク直しを行った。流石にメイクまでプロのメイクさんを呼ぶのは、タレント被れが過ぎるかなと思ったので、自分らでもある程度しっかりできるメイクについては、自分たちで行う。
普段、高校に行くかダンジョンに行くか、といった事が多かったので、あまり張り切ったメイクはした事が無かったが、今日まで家で沢山メイクの練習もしてきたため、私たちの顔を120%輝かせるメイクを施す。
「り、リンネ⋯⋯あなた⋯⋯」
「嘘でしょ⋯⋯まだ可愛くなるの⋯⋯?」
「は、反則です⋯⋯!」
「三人もめちゃくちゃ可愛いよ。普段も可愛いけど、今日は輝いてる」
自分たちもまだ上があるのか、と驚愕するほど可愛くなっているのに、アリサ達がこぞって私の顔を褒める。絶対に彼女たちには見合わない顔のレベルなんだが、何故か三人は私にメロメロらしい。納得いかないが、嬉しいので素直に受け入れよう。
あと、ステータスの魅力値が私たちの人気に少なからず影響していると思われるので、本番直前にはサーシャにバフ魔法をかけてもらうことになっている。
前代未聞だ。ライブでバフかけるとか。
時計を見ると、個人発表が始まる時間だ。一組目のブレイクダンスチームが舞台に出て、歓声が聞こえてきた。おお⋯⋯なんか実感が湧いてきて緊張してきたかも。
そう思っていると、生徒会長と文化祭の実行監督を務める教師がやってきた。
「今日は皆のおかげで素晴らしい文化祭が開催できた。改めて、ありがとう」
「いえいえ!元凶は私たちなので⋯⋯」
「30分前に抽選が終了した。君たちの前⋯⋯7組目の発表が終了したあと、席入れ替えの時間を20分用意してある。その後、君たちの出番だ」
教師の言葉に、ゴクリと唾を飲み込む。いよいよ本番を意識する時間になったのだ。私は、無意識にアリサたちの手を握る。
「よろしく頼むよ」
「り、了解です!」
「失敗したらどうしましょう⋯⋯!」
「大丈夫!たくさん練習したし!私は超楽しみ!」
「私も楽しみよ。必ず私たちが一番だと見せつけるわよ」
勝ち気なセリナとアリサの態度に勇気付けられながら、私たちは本番前の最終確認を行った。




