表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

38/57

37話

 なんやかんやあった文化祭も、いよいよ当日。

 ついに、文化祭が始まった。


「ふっふっふ⋯⋯我ながら渾身の出来だよ⋯⋯」


 私は、お化け屋敷と化した自分の教室を眺める。狭い教室でたくさん怖がらせるため、所狭しとビックリギミックが用意されていて、中々ハードなお化け屋敷になった。

 入り口には、私の作ったホラー人体模型が飾られている。中々のクオリティで自画自賛してしまうくらいだ。


「リンネ、おはよ」

「おはようございます!」

「おはよー!」


 声の方に振り向くと、そこにはアリサ、サーシャ、セリナの3人が立っていた。まずは私たちのお化け屋敷を堪能しようという事か。


「おはよー!ささ、私たちのお化け屋敷楽しんで行ってよ!」

「楽しみね」


 そう言ってアリサたちが教室に入っていく。残念ながら中の反応を楽しむことは出来ないが、三人が出てきた時の反応が楽しみだ。


 待つこと約3分。出口から三人が出てきた。セリナは目がキラキラと輝いているが、アリサは少し顔が青く、サーシャは軽く震えていた。


「どうだった?どうだった?」

「めっちゃ楽しかった!」

「私はちょっと疲れたわね⋯⋯よくもあんな短い間にビックリする仕掛けを⋯⋯!」

「怖かったです⋯⋯!これ、リンネさんが全体設計をしたんですよね⋯⋯?」

「そうだよ!私の監修、私の演出がふんだんに盛り込まれたスーパーお化け屋敷!楽しんでもらえて何よりだよ!」


 しめしめ。どうやらお化け屋敷は中々のクオリティらしい。異世界で化け物と戦っていたサーシャが怖いということは、一般高校生にはかなり怖いはず。リアルに寝る間も惜しんで頑張ってたので、良い物が作れて良かった。


 そこから約2時間、受付役として私はお化け屋敷の前に立っていた。かなりの数、私目当てでやってくる生徒が居たので、全員にお化け屋敷を勧めて入ってもらったが、それはもう皆良い顔で出てくる。何人かリタイアして入口から出てきたくらいだ。


「凛音お疲れ!すごい好評だよお化け屋敷!みんな超怖いって!」

「ふふん。もっと褒めていいんだよ桜」

「よっ!名監督!スーパークリエイター!ホラー界のニューホープ!」

「へへ、よせやい」


 お化け屋敷から出てきた白装束のお化け⋯⋯もとい、友人の渡会桜が私に労いの言葉をかけに来てくれた。お化け屋敷の中で見ると中々怖いが、明るい廊下で見るとただのコスプレである。


「着替えてくるからちょっと待ってて!文化祭回ろ!」

「うん!待ってる!」


 私と桜は同じシフトを組んでいる。その為、一緒に文化祭を回るよう約束していたのだ。


 メイクを落とし、クラスTシャツに着替えた桜と共に、交代の生徒に挨拶をしてから文化祭に繰り出す。色々な催しがあり、興味が尽きない。


 幾つか展示物を出しているクラスを見たところで、私たちはアリサの居るクラスに辿り着いた。見てみると、凄い行列である。

 これに並ぶのはちょっと面倒だな⋯⋯と思っていた所で、グイッと教室に私を引きずり込む手が。突然の事で思いっきり踏ん張るが、すんなりと教室に引きずり込まれる。私をいとも簡単に招き入れるステータスを持っているということは⋯⋯!


「あ、アリサ!」

「ちょうど良かったわリンネ。人手が足りないの。執事服は在庫切れだけど、男子用のメイド服が余ってるから、リンネはメイド服着て手伝いなさい」


 そこには、黒い執事服をカッチリと着込んだアリサの姿があった。紅蓮の髪をポニーテールにまとめ、白い手袋を身につけている執事服のアリサは、身内贔屓を除いてもめちゃくちゃカッコイイ。こんな執事が居たら、主従の関係なんて簡単に飛び越え、仲良くなりすぎてしまいそうだ。

 って、ん?アリサなんかとんでもない事言ってなかった?


「え?私、メイド服着て手伝えって言われてなかった?」

「そう言ったのよ。時間無いから、ほら早く!」


 言われるがまま、気が付いたら私はフリフリのピンクメイド服に身を包んでいた。執事服は結構しっかりしてたのに、メイド服はなんともチープなコスプレ衣装感満載だ。変にコスプレ感が強いせいか、なんか恥ずかしくなってきた。


 メイド服を着たまま廊下を見てみると、ソワソワした様子の桜が行列に並んでいた。突然消えてすみません⋯⋯。


「お帰りなさいませ、お嬢様」


 声の方を見ると、女子客に執事アリサがにこやかな接客をしていた。接客された女子は、分かりやすく目をハートにしており、顔も真っ赤だ。⋯⋯なんとも言い難い嫉妬心が芽生えてくる。なんで私以外の女の子に色目を使ってるんだ!という怒りが湧いてきた。


「うお⋯⋯本当に凛音さんだ⋯⋯」

「メイドリンネちゃま、マジ天使⋯⋯」


 私が放り込まれた女装メイド喫茶には、メイド服を身に纏う男子生徒が沢山いる。かなり恥ずかしいが、仕方ない。客を捌いて捌いて捌きまくり、後でアリサに怒りをぶつけなくては。


「お帰りなさいませ、ご主人様!」


 私は目一杯の笑顔を客の女子生徒——執事喫茶もメイド喫茶も女子客ばかりだ——に向けると、その女子生徒はキャーキャー叫びながらカメラを向けてくる。私はご主人様に『チェキ500円』のプラカードを見せて対抗するが、その生徒はすかさず500円玉を取り出し、チェキを撮らざるを得ない羽目になった。

 仕方なく、女子生徒の作った片割れハートに、私のサムズアップを重ねて写真を撮ると、その生徒の目がキラキラと輝く。⋯⋯こんなに喜ばれると、恥ずかしさよりも嬉しさが勝つ。


 いつか、写真撮影会とか開いてもファンが喜ぶかもなぁと思いながら、メイドリンネとして接客を続けた。


 すると、ソワソワした桜が遂に入店する。執事喫茶とメイド喫茶のどちらに行くか見ていると、あろうことか執事喫茶に向かって行った。

 勝ち誇った顔の執事アリサが、横目で私を見るのが見える。


「お帰りなさいませ、お嬢様」

「あ、あああ、た、ただいま、です!」

「ふふ。そんなに緊張されて⋯⋯どうしたのですか?私はあなたの執事、アリサですよ」

「ひゃ、ひゃい!」


 おうおうおうおう。私のアリサが?私の桜と?イチャイチャしてるのを、この私が黙って見過ごすとでも?舐めてもらっちゃあ困るなぁ!


 私は簡素な仕切りを超え、ルール無視で執事喫茶に乗り込むと、桜とアリサの前に割って入る。


「ご主人様?お屋敷を間違えてますよ?」

「り、凛音!」

「あなたのメイド、リンネが待ってます!ささ、こちらのお屋敷に早くお戻りを——」

「ちょっと。メイドはあっちでしょ?ここは執事の屋敷。こちらのお嬢様は、私のお嬢様なんだけど?」

「ご主人様が間違えた時、正しい道を示すのもメイドの役目ですよ?それに、ご主人様は私のご主人様ですよ?」


 私とアリサの間に、バチバチと火花が散る。最も、アリサは私と仲良い桜を使って遊んでるだけだ。なんて罪な女なのだ。

 桜は、執事のアリサとメイドの私に取り合われて、目をぐるぐると回している。


 他の生徒から「羨ましい⋯⋯」「執事アリサとメイドリンネに取り合いされたい⋯⋯」「早くあれになりたい」といった呪詛が聞こえてくるが、私はそれを無視し、暫くアリサと桜の取り合いを続けた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ