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33話

「ごめーん!お待たせー!」

「おかえりー!」


 セリナが劇の練習で帰りが遅くなるとの事だったので、お化け屋敷の準備もそこそこに、アリサとサーシャと私は、一足早く家に帰っていた。


 簡単に作った晩ご飯を並べ、全員で食卓につく。結局お金持ってても、こういう所に庶民が出るよなぁ。なんて思いながら、手を合わせる。


『いただきます!』


「んー!今日もリンネのご飯は美味しいねぇ!」

「リンネさんの異世界料理、色んな人の舌を唸らせてましたもんね」

「それが今じゃ毎日食べられるんだから、幸せなことよね」


 うーん、ただのカレーライスにこんなに喜んでくれるとは⋯⋯。作りがいがあるな、全く!


 私も皆に倣いカレーを貪りながら、セリナに話を振る。


「で、どう?劇の方は」

「んー、別にどうもこうも無いよ?ただ淡々と練習してるだけだし。私の役はもう覚えた」

「早っ!さすがお姫様⋯⋯」

「関係無くない?ま、あんまり難しい役じゃなかったからね〜」


 セリナは流石、色々器用に熟すなぁ。自分でも言っていたが、セリナは昔からやれば大抵の事はなんでも出来たらしい。なんかそんな感じするわ⋯⋯。

 セリナから私たちに逆の質問が来たため、それぞれ自分の情報を伝える。私は、アリサと宮園さんが揉めた件は伏せて、お化け屋敷の小物作りに励んでいることを伝えた。


「みんな順調そうだね!そしたら、ご飯食べたら歌とダンスの練習しようよ!」

「そうだね!まずは、何するか決めないと」

「あんまり私たちは日本の歌やダンスには詳しくないわ。リンネ、幾つかピックアップして教えてちょうだい」

「了解!」


 そうと決まれば善は急げ。カレーをパクパク食べ終えた私たちは、ワルキューレ・コードの切り抜き動画を見た時のように、ソファでくっついてタブレットを開く。エアコンで冷えた体に、みんなの体温が暖かくて気持ちがいい。うとうとしそうになるのを堪え、私は動画配信サイトを開いた。


「まずはどうしようかなぁ⋯⋯とりあえず、ジャンルごとに人気な曲聞いてみる、って感じでやってみようか」

「おっけー!」

「じゃあまずはJ-POP⋯⋯日本のポップミュージックからだね」


 J-POPって言っても、範囲広いよなぁ。とりあえずJ-POPの人気曲を幾つか開く。『Mr. BLUE BERRY』『ASAGATA』『Poindy』⋯⋯そういえば転移前ってこの辺が流行ってた気がするな⋯⋯。DIVEと同じように人気の配信サービス、TikTakで良く踊られる曲もランクインしているものが多い。


「へー⋯⋯音楽も、全然私たちの国とは違うわ」

「なんだかハイカラだねえ」

「異世界人にハイカラと言われるとは⋯⋯」

「何か好きな歌ありましたか?私はあんまり、テンポが速い歌は⋯⋯」


 歌うとなると、教会でも良く歌っていたサーシャが歌うことになるだろう。そのため、サーシャが苦手な感じの歌は避けたい。また、男性ボーカルの歌はどうしても違和感があるので、その辺は避けることになってしまう。


「となると⋯⋯」

「これ、良いんじゃない?」


 そう言ってアリサが見せてきたのは、現役探索者アイドル『サブリミナル』の代表曲『ハートビート・ダイブ』だ。テンポ感もそこまで早すぎず、合いの手も多くて楽しい曲。まさに文化祭ライブ向きと言えるだろう。


「ハトビかー!良いね!」

「これなら、歌えそうです!」

「よーし、そしたら一曲目の候補に入れよう!よし、どんどん聴いていくよー!」


 そこから、私たちは色々なジャンルの曲を再生していった。


 しかし、ハトビほど刺さる曲は中々無く、大抵のジャンルを聴き終えていく。⋯⋯できたら2曲編成で行きたいんだけど、まあ最悪1曲でも仕方ないかな⋯⋯。

 ⋯⋯うん?


「なんだこれ、フルール⋯⋯『Re:Bloom』?」

「リンネ、いつの間に歌作ったの?」

「いや作ってないよ。⋯⋯あ、これファンメイドの歌?」


 試しにその曲を聴いてみると、中々どうして私たちのことを上手く詩に落としている。配信で見せる姿に留まらず、学校や家で見せるプライベートな感じも上手く表現していて、結構良い感じだ。

 それにサウンドも今風だし、テンポ感もあまり速くない。しかも、CGの私たちが踊る動画まで二次創作⋯⋯この場合は三次創作っていうのか?まぁいいか。とにかく、この曲『Re:Bloom』に、ファンがCGの私たちを踊らせる動画を作っていた。

 うんうん、なるほどなるほど。どうやらこのダンス動画を作った人はプロの振付師らしく、振り付けはとてもそれっぽい。曲にも合ってるし。


「みんな、この曲どう思う?」


 私が皆に問いかけると、みんな呆れたような笑みを浮かべていた。


「え?ど、どうしたの?」

「どうしたって⋯⋯」

「リンネ、聞く前から顔に『絶対やりたい!』って書いてたわよ」

「リンネさん、お気に入りのもの見つけたら、すぐ顔に出ますからね」

「えっ嘘!そんなに分かりやすかった!?」


 私が照れると、私を囲む三人がヨシヨシと頭を撫でてくる。ぐぬぬ⋯⋯なんだかとても恥ずかしい目に遭っている気がする⋯⋯!


 こうして、私たちの文化祭ライブ曲は、『サブリミナル』の『ハートビート・ダイブ』、そしてファンメイドの『Re:Bloom』に決まった。


 私たちは早速、サブリミナルの事務所に使用許可を確認しに行くのと同時に、『Re:Bloom』の製作者⋯⋯『AKIA』チャンネルと、ダンスの振付師に連絡を取った。







 ピコン、とメッセージの通知が届く。


 そこには、フルールチャンネル——DIVEではない、普通の動画配信サイト用のチャンネル——から、オリジナル楽曲『Re:Bloom』を、今度行う文化祭ライブで披露して良いか?という内容だった。


 え?嘘、急に?私の、私の思いのまま作ったファンメイド曲が?フルールの初ライブで?歌われる?え?嘘でしょ?ほんと???


 私は一旦ノートパソコンを閉じ、家を出て1キロランニングし、しっかり酸欠になった状態から息を整えて再度パソコンを開く。

 しかしそこには、変わらずフルールからのメッセージが届いていた。


「ヤバイヤバイヤバイ⋯⋯どうしよう、こんな事、想定してないっつーの⋯⋯!」


 私は混乱する頭と、激しく高鳴る鼓動を抑え、フルールにえっちらおっちらメッセージを返す。正体(・ ・)に気付かれないよう、AIに何度もメッセージを読み込ませ、失礼の無い文章を作成、送信した。

 内容としては、全部アナタたちの為に作ったので、好きにしてください。という内容だ。


 無事送信ボタンを押した私は、深く深く息を吐いた。


「はーっ⋯⋯寿命⋯⋯縮まるかと思った⋯⋯」


 私は、写真立てに飾った彼女(・ ・)の写真を眺めながら、そう呟いた。

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