30話
「今日も始めるよー!フルールチャンネルのリーダー!リンネとー?」
「アリサと」
「サーシャと!」
「セリナだよー!」
『私たち、フルールです!』
おお、なんか家でやると中々恥ずかしいな⋯⋯。
私たちは、前の家からそう遠くない、WIO推奨の超セキュリティタワーマンションに引っ越していた。今日は、そのタワーマンションに作った配信部屋からお届けしている。
DIVERに限らず、数多のプラットフォームで人気の女性グループインフルエンサーの部屋を参考にし、白を基調とした清潔感あって可愛い部屋が完成した。四人それぞれの個人配信部屋も作ってはみたが、そっちは滅多に使わないだろう、と思っている。
この家が何LDKで家賃いくらなのかは知らない。考えるのが怖かったからだ。その辺を任せたサーシャ曰く、今の収入状況なら全く問題無いとの事だ。それを信じるしかないだろう。
『うおおおおお!!』
『雑談配信きたーーー!!』
『50000円:部屋着尊すぎる⋯⋯!』
『50000円:な、なんか⋯⋯えっちじゃないですか?』
『こ、これがJKの⋯⋯』
『定期的に犯罪者予備軍さんが来てるようだな』
『自重しろ』
コメント欄は大盛り上がりだ。今回は私セレクトで、四人とも可愛い部屋着っぽい服に着替えている。私の策略にまんまとハマりおって⋯⋯。
「よーし、じゃあ雑談配信スタート!気になるコメントを読んでいくよー!」
『きたああああ!!』
『生きてて良かった』
『四人は付き合ってるんですか?』
『好きなタイプは?』
『(コメントが削除されました)』
『昨日何食べた?』
『四人の出会いを聞きたい!』
『(コメントが削除されました)』
『彼氏はいますか?立候補したいな〜ナンチャッテ!』
おーおー。DIVEの機能で、無数に来るコメントから幾つかランダムに数件ずつだけ流れるようにしているが、それでも目で追うのは大変だ。
あと、定期的にコメント消されてる奴は何言ってるんだ⋯⋯セクハラやめてください。
私が拾う質問を眺めていると、セリナが「これにする!」と拾うコメントを決めたらしい。こういう時に一番手を取ってくれるところ、本当に助かるな。カラオケの時も絶対最初歌ってくれるし⋯⋯ありがたや、セリナ様。
「えーっと、四人の出会いはどんな感じだったんですか?また、その時の印象から変わった所はありますか?」
「おー、ベタなやつ拾ったね」
「うーん、出会い?」
一応、三人には私が異世界に召喚されたこと、勇者として云々の話は内緒にしてもらうように頼んでいる。その代わり、出会いは私の親が三人を養子に取って、いきなり家に来たとかそんな話にしている。
アリサがその辺をボヤボヤとふんわり話し終え、続いて第一印象と今の印象、的な良くある話に移った。
「どう答えてく?」
「誰か一人選んで、その子について最初どう思ったかと、今どう思ってるかを他三人でそれぞれ回答。それを四人分する、ってので良いんじゃない?」
「いいよー!じゃあ最初は、私の印象とかから聞かせてよ!」
セリナがニコニコと立候補してくれる。ありがとう、セリナ。
うーん⋯⋯第一印象か⋯⋯。どんな感じだったかなぁ⋯⋯。
私は、セリナと初めて出会った日の事を思い出していた。
◆
「ようこそおいでくださいました、勇者様」
「へ?え?」
セリナは、異世界に召喚されてから初めて会った人間だった。というのも、セリナは元々お姫様だったのだ。私を勇者召喚した、アナザルド王国の。
私は18歳になった瞬間、気が付いたら王城の広間に立っていた。パジャマ姿のまま。
『スキル帰還者が自動発動しました』
『スキルの効果により、あなたは勇者としてこの世界に召喚されました』
『この世界の女神から『勇者の加護』を授かっています』
『スキルの達成条件、この世界で魔王を討ち滅ぼす、を達成することで、帰還することが可能です』
『この世界では死んでも教会で蘇生されます。安心して魔王と戦ってください』
私の脳内に響いた無機質なアナウンス音声に、私は腰を抜かしその場にへたりこんだ。そりゃそうだ、私はさっきまでただの女子高校生だったのに、突然勇者として召喚されてしまった。パニックを起こしても仕方ないだろう。
この時の私は、恐怖や困惑、親や友人と会えなくなる悲しさ、身勝手なスキルとこの世界に対する怒り⋯⋯などなど、複雑な感情だった。
そんな時、セリナが私を抱きしめてくれた。
「ごめんなさい。私たちの事情に巻き込んでしまって」
「っ!な、なんで⋯⋯」
「私たちには、勇者様の力が必要なんです。身勝手だって分かってます。その代わり、あなたは絶対に私が守ってみせます。この命、全てあなたに捧げましょう」
そう言って私を安心させてくれた。まだ私は混乱していたけど、セリナの言葉だけは、不思議とすんなり受け入れることができた。
◆
「うーん、セリナは最初、めちゃくちゃお淑やかなお姫様。って感じだったよ。今は元気いっぱいなギャル!って感じ」
「リンネに同じ。アンタどうやったらそんなキャラ変すんのよ」
「私も、です⋯⋯」
やはり他二人も同じ意見だったらしい。今でも覚えているが、王城を出てから今のテンション感になった時は、二重人格なのかと思ったくらいだ。
「あははは⋯⋯なんて言うの?こう、重圧っていうか、なんかこう、そうしないといけない空気に縛られてたのが、皆と冒険出来る!ってなってから解放されたんだよ!そりゃ私も素が出るって!」
「いくら何でも変わりすぎよ。ま、私は今の方が好きだけどね」
「アリサに同じ」
「私もです!」
「みんな〜!私も、みんなのこと大好きだよ!」
『2000円:てぇてぇ』
『うおっ、眩しい!』
『お姫様モードのセリナちゃん見て〜!』
『4000円:てぇてぇ』
『キマシタワー』
『俺は、この4人を見るために産まれてきたらしい』
『3000円:てぇてぇ』
てぇてぇの連呼が止まらない。語彙を失っているようだ。
そこから、アリサとサーシャの話になる。アリサとサーシャは、あんまり変わった感じ無いんだよなぁ。強いて言えば、アリサはもっとツンツンしていて、サーシャはもっとおどおどしてたくらい?
「そうかしら?」
「そうですか?」
二人はそんな事無い、という態度だ。コメント欄は想像が出来たのか、『わかる』『ぽいぽい』といったコメントで溢れかえっている。
あんなにツンツンしてたアリサが、自分の気持ちを伝えてくれて、初めてキスした日は嬉しかったなぁ。
人見知りが凄かったサーシャも、私に心を開いてくれて、大胆にキスしてきたんだよな。いやあ、懐かしいなぁ。
「はい次、私の番だよ!」
そして私の番が来た。地味に気になるんだよな。なんて言ってくれるんだろう。
「じゃあ、まずはサーシャ!」
「え?私ですか?⋯⋯うーん、最初はもっと不安そうで頼りない感じでしたけど、今はとても頼りがいがあるなって感じです!」
『頼りないリンネちゃま見てみたい』
『今はリーダー感あるもんな』
『そ、そうか?』
うんうん、なるほど。確かに皆と出会ったばかりの時は、異世界に来たばかりでどうしたら良いか分かんなかったもんな。今はリーダーっぽい⋯⋯かはさておき、昔よりは確実に元気だから、そういう印象になるんだろう。
私はサーシャにウインクを飛ばす。それをサーシャは小っ恥ずかしそうに笑いかけた。
「次はアリサ!」
「そうね⋯⋯。最初はリンネの立場とか、そういうのに嫉妬していて、ちょっと突っかかってたかもしれないわ。けれど、今は何より大切な守りたい人。そういう感じよ」
『てぇてぇ』
『アリサ様に守られ隊!!』
『意外。アリサ様でも嫉妬とかするんだ』
アリサ、そんな事思ってたのか⋯⋯。確かに、アリサは勇者を目指し、魔王を倒すために剣や盾の扱いを学んだと聞いた。それがぽっと出の異世界人に勇者の座を奪われ、平気ってわけにはいかなかったんだろう。
けれど、今は認めてくれて、アリサが私の事を大事に思ってくれている。嬉しくて仕方ない。私はそっと、カメラに移らないよう、アリサの手をぎゅっと握った。
「最後はセリナ!」
「そうだなー。最初は罪悪感やらなんやらで、守らないと!って思ってたんだけど⋯⋯思ったよりリンネは強かった!から、逆に勇気とか元気とかいっぱい貰ったな〜って思うかな!リンネが居なかったらここまで来れなかった。ありがとう!」
『なんかここも唯ならぬ関係を感じるよな』
『最近はアリリン、サシャリンが盛んだったが、ここにきてセリリン来るか?』
『リンネちゃまは総受け』
『誘い受け』
嬉しい⋯⋯!セリナ、嬉しすぎるよ⋯⋯!
普段からセリナに元気を貰っているのは私の方だ。いつも明るく、私たちを照らしてくれる。そんなセリナに元気を与えられているというのは、私としてはとても嬉しいことだ。
私たちはお互いの意見を聞き、少し恥ずかしくなり、ふにゃっとした笑顔になった。なんだかこういう話をする機会、向こうに居た時もこっちに帰ってからも無かったので、良い機会になった。
「よ、よーし。じゃあ次の話題行こう!」
「あ、これなんかどうですか?」
「はいサーシャ、お願いします!」
「1学期も残すところ僅かかと思いますが、楽しみなことはありますか?」




