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29話

 例の事件から2週間が経過した。


 初めに私たちを襲ったスーツさん達は、ノクスとアリサが戦っている間に姿を消していたため、身元不明。ノクスについては、WIO日本支部長から、どんな人物か詳細な連絡を貰った。


 曰く、世界で二番目に強い人間。7人しか居ない特級の中で、1対1なら最強、という触れ込みの人らしい。その人にアリサがほぼ完封したという事で、その称号はアリサに移行した、らしい。


 アリサとノクスの戦いは、知らない人のチャンネルで配信されており、それを見たからか、あれからエリクサーを奪いに来る人は殆ど居ない。二回だけ来たけど、どっちもサクッと倒して警察に引き渡している。


 そんな事もありながら、この二週間ダンジョンに潜って配信してはみた。ただ、前回のコラボ配信で特級モンスターと戦い、その後は他人のチャンネルとはいえ、凄まじい個人戦を繰り広げた訳で。今さら3級とか2級のモンスターを倒すことに需要があるんだろうか。というのが最近の悩みだ。


 とりあえずサクサク敵を倒していき、今日は25階層。適正ランクは2級だ。出てくるモンスターは、ワイバーンだとかワイトキングだとか、結構中ボスっぽい奴が出てくる。


「はぁぁぁっ!」

『リンネちゃま、今日も槍筋が素晴らしい!』

『10000円:リンネちゃまの槍に突かれたい』

『流石にこの辺のモンスターも瞬殺やな』


 チャンネル登録者数は増加し続け、同時接続者数も常に12万以上をキープしており、十分な内容だと思うのだが、この辺のモンスターだと、私たちに掛けられているプレッシャーというか、期待というか⋯⋯そういったものを満たせている感じがしない。心做しか、コメント欄もちょっと静かな気がする。


 この前の戦いで、サーシャとアリサは人気が爆増した。サーシャは『ヤベー奴』的な人気が出ており、『サーシャたん、可愛い顔してヤバいからなw まぁ、俺はそんな所も好きだけどw』みたいなファンが付いている。⋯⋯何も言うまいが、頑張れサーシャ。


 アリサについては、女性人気が凄まじいのと、シンプルに強い人間が好きな層にぶっ刺さっていて、『探索者最強論争』みたいなのがあると、必ず激推ししてくるファンが湧いて出てくるらしい。まぁこれについては本当の事なのだが、あまり他所のファンには迷惑をかけないようにしてほしい。


 セリナと私は、ほか二人と比べると、やや人気が劣る。私は気にしないんだけど、セリナは少し悔しそうだ。何か機会があれば、今度はセリナに華を持たせてやりたいと考えている。


 さて、そんな事を考えながら今日の戦闘が終了した。いつもの投げ銭読みに入る⋯⋯前に、私は今の素直な気持ちを視聴者に聞いてみることにした。


「皆は、この配信つまんないなーとか無い?」

『無い!!』

『フルールが見れれば何でも良いよ!!』

『不安がってるリンネちゃまの顔、堪らん』

『たまにはお家で雑談配信とか見てみたいかも!』

「あー、雑談配信かー。そう言えばそんな感じのコメント、ワルキューレさんとのコラボ配信中でもあった気がするなぁ」


 ダンジョン活動での不満は特に無いようで安心した。その上で、雑談配信⋯⋯。今さら何を言ってるんだという感じだが、なんか家で話すだけって、生活感ある感じで恥ずかしく、なんとなく避けてきた配信内容だ。

 しかし、私たちは現状、顔出しはしてるものの謎にクソ強い女子高生でしかない。雑談配信で素性やら感情やらを話すことで、少し親近感が湧く可能性はある。それが良いのか悪いのかは置いておいて、やってみるのも悪くないかもしれない。


「みんなー、雑談配信するってなったらどう?」

「良いんじゃない?」

「あんまり上手く話せないかもしれませんが⋯⋯」

「私はお喋り大好きだから賛成!」

『50000円:え、嘘。俺の要望がこんな形で⋯⋯フルールの皆の話題にされてる!?幸せすぎて死ぬ!!』

『羨ましすぎてキレそう』

『雑談配信見たかったから提案助かる』

『雑談配信に向けて金貯めます』

『いつやるんだ!?』


 おお、なんか思ったより食いつきが良いな。幸い、アリサとセリナは好意的だ。サーシャは不安そうだが、そこは私も同じなので、一緒になんとか乗り越えていこう。


 そうと決まったらまずは今回の配信を締めよう。


 私は投げ銭してくれた人達の名前を読み上げて、討伐モンスターたちの素材を魔法袋に入れ、ダンジョンを後にした。ちなみに、今回の討伐報酬は約1000万円である。もう驚かないぞ。

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