番外編2
POV―サラ
幼い頃、私は姉のリンネと一緒に青い空を見たいと願っていた。白の都市のドームが人々を安心させるために映し出す偽物の空ではなく、本物の空を。
薔薇色の疫病の痕跡など何もない、澄み切った空を。
「……ねえ、見て。この空は本物だよ」
今では毎日その空を見ることができるというのに、少しも幸せを感じない。まるで運命の残酷な冗談のようだった。この世界には、疫病など存在しないというのに。
「パパ、お菓子買って!」
「もうすぐお昼だろう」
「今食べたいの」
「わかったわかった。でも、ママには内緒だぞ」
この場所には、物資を切り詰める必要も、Rウイルスに感染する心配もないようだった。人々は笑い、語らい、まるで本当に未来への希望を持っているかのように歩いていく。
一つの場所に長く留まっていると、人々は私について噂し始める。きっと、私の姿がこの場所にそぐわないのだろう。それでも歩みを進めるたびに、同じことを思わずにいられなかった――本当に、美しい場所だ、と。けれど、本来なら腕があったはずの場所を覆う血染めの包帯に目をやるたび、私はもう死んでいるはずだったのだと思い知らされる。
兵士の制服はぼろぼろに擦り切れていた。髪も手入れなど程遠い有様だ。そしておそらく、私の表情も見るに堪えないものだったに違いない。
浄化兵としての私の人生には、ただ一つの目的しかなかった――感染者を、たとえそれが仲間であろうと、すべて排除すること。けれど、この世界にはその「感染者」が一人もいない。
ここにいるのは健康な人々ばかりで、その多くは幸せそうにさえ見えた。
こんな世界のために、私は姉と共に戦い続けてきたはずだった。なのに今は、もし私がこの場所に長く留まれば、私自身がこの世界にとっての疫病になってしまう――そんな気がしてならなかった。
「くそ……くそっ……」
自分こそが疫病なのだと考えるだけで、絶望に押しつぶされそうになる。これ以上、こんな人々に囲まれてはいられなかった。かといって、帰る場所など私にはどこにもない。仕方なく、私はたどり着いたあの場所――川沿いの古い橋へと戻っていた。今もなお、乾いた血の染みが足元のコンクリートに残っている。
「……どうして、あの時とどめを刺してくれなかったの」
もし姉と同じ運命を辿っていたら、今頃どこか別の場所で、二人一緒にいられたかもしれないのに。まるで、私の苦しみをただ長引かせるためだけに生かされているようだった。
いつか目覚めたら、これがすべて悪夢だったと気づく日を、姉が私を起こしてくれる日を、私はずっと待ち続けていた。けれど、寒さも、飢えも、痛みも消えることはない。それでも……この世界が馬鹿げているほど優しいということは、否定しようがなかった。
「お嬢さん、大丈夫ですよ。少しですが、これを」
「お腹が空いているようですね。多めに作ったので、少し持ってきました。元気になってくださいね」
「これ、着てください。夜は冷えますから」
こんな私にさえ、通りすがりの見知らぬ人々が同情を寄せてくれる。もっとも、ただそこに助けを必要としている人間がいると分かっただけで、近寄ってきたのかもしれないけれど。白の都市であれば、資源不足を理由に非合理的だと切り捨てられていたはずの行為だ。
『どうして。私を助けたところで、この人たちに得なんて何もないのに。私のことなど知りもしないし、役に立てるわけでもないのに』
「これがもし白の都市だったら、とっくに追放か処刑されていただろう。もしかしたら、その方が――」
いや、これ以上考えてはいけない。
白髪の女性が置いていった食べ物に目をやる。贅沢な料理のように見えた。この世界の基準では普通のものなのかもしれないが、私のいた場所では、清浄都市の上層に暮らす人々だけに許されたものだった。
浄化兵に配給される合成ペーストとは違う、味も、食感も、香りもある食べ物。つい最近まで、歴史の本の中でしか知らなかったものだ。それでも――もう、私を助けようとするのはやめてほしかった。
そうすれば、静かに死んで、この痛みをすべて終わらせることができるかもしれないから。
「……あの人たちさえいなければ、リンネ、あなたにまた会えるかもしれないのに」
どうしても、どれだけ堪えようとしても、姉さんのことばかり考えてしまう。あなたがもういないのに、どうして私だけが生きているのだろう。
私の手は、そばに置かれた食べ物へとゆっくり伸びていく。力の限り止めようとした。ただ死にたいだけだったのに。けれど、今回もまた、無駄だった。
『死ぬことは許さない』
自分の意志に反して、私は食べ物を口へと運び、ゆっくりと噛みしめ始めた。
『死ぬことは許さない』
その言葉は、いつまでも私の中に刻まれていた。どれだけ試みても、自分の命を絶つことはできない。ただ諦めるしかなかった――仲間たちはきっともう皆死んでしまったというのに、この平和な世界で、私だけがのうのうと美味しい食事を口にしていることを責めながら。
「ふふ……本当に、私って幸運ね」
そして川の水面に目を落とすと、押し殺していたはずの痛みが再び胸の中で膨れ上がった。水面に映るその顔は、以前よりやつれ、虚ろではあったが、それでも双子の姉と瓜二つだったから。薔薇色の疫病がもう存在しないこの世界で、もう浄化兵でいる必要のないこの世界で――私は問わずにいられなかった。
「ねえ、神様。私、もう十分苦しんだんじゃないの?」
今にも、壊れた人形のように砕け散ってしまいそうだった。
「……新しい場所に来るのって、大変だよね」
涙で視界がぼやけていた。それでも、すぐ近くにいたおかげで、その人物が金髪碧眼の若い女性だと分かった。
「習慣も分からないし、人のことも理解できない。自分だけがよそ者みたいで、誰にも受け入れてもらえない気がする、みたいな」
『何を言っているの。分からない。どうして今、こんなことを話すの』
「私も同じような経験をしたの。でも、この場所に来た時、たくさんの人が助けてくれた」
そう言って、彼女は優しく手を差し伸べ、微笑んだ。
「だから――私と、友達になってくれない?」




