第95話 会議前 〜生贄りゅうくん〜
母はいつも怒っていた。父はほとんど家にいなかった。
祖母が優しかった記憶はあるが、母が会うことを制限した。
完璧な息子がほしかったんだと思う。
外見も中身も勉強も性格も行動もすべて指示通りにしていた。
そうしないと母は怪物になる。
大きな音を立てる狂ったなにかに支配されてしまう。
家で落ち着いて眠ることなどできなかった。
完璧でいないと僕は生きていてはいけないから。
友達は母が選んだが最終的にはみんな離れていった。
常に笑っていて怖いっていう。母はそれでいいと言ったのに。
父が帰ってこなくなってから、母の行動はエスカレートした。
虐待という言葉は知っていたが僕は愛されていたのだろうか。
以前は勉強は暇つぶしにしていたことだったけれど
徐々にいつ母が部屋に来てもいいよう常に勉強机にいるようになった。
そうでなければ安全ではなかった。
僕は延々とイイコでい続けた。おかしいことかもしれないけれど
ほかの道は知らなかったし、ほかの生き方もわからなかった。
心臓の病が発覚しベットから起き上がれなくなった途端
視界から母は消えた。
もう机に座っている必要はないし、大きな音に怯える必要もない。
それでも顔に張り付いた笑顔が取れない。
二度と目覚めないとは考えず目を閉じた。
この体の持ち主?の人は封印されていた。
生命力が封印を維持するので死ななければ解放されない。
まるで僕と同じだったけれど、この体の持ち主は
自由を求めていたし、強く生きることを望んでいた。
相反する感情を抱え、僕はこの体で眠り続ける。
吸血鬼のお姉さんが用意してくれたベットから
出なくていいって言ってくれたから僕はずっとずっと眠る。
新しい世界?そんなものはしらない。とにかく今は眠っていたい。




