第93話 会議前 〜マザコン王子〜
唐突に王子として死を迎えたこの体の舵取りを任された。
昔話や異世界もので見たことはあるが
まさか自分が王子になるとは、しかも国は崩壊状態だ。
迷宮に飲まれかけた国であったがそれでもなお権力にすがり
愚かな貴族たちは病んだ王のかわりに権力を持つ母
女王に手動権を渡すよう迫っていた。
王子である俺ならばまだ御し易いと思われていたようだ。
女好きすぎて問題も多かったがこの体の持ち主が
母親を深く愛する息子でもあったのが誤算だったのだろう。
毒の入った盃を手に取った母親を見て見ぬ振りはできなかった。
母のかわりに盃をあおり、その場で倒れ伏した。
その王子にも誤算があった。
毒に慣れるよう幼い頃から訓練していたため
死ぬことはないとたかを括っていたのだが
その毒は、毒の沼から算出された新種の毒であり
しっかりと致死量が盛られていたのだ。
どうせなら女に囲まれて死にたかったと
尚、強い生への渇望を見せたこの魂は救われた。
観客席から野次を飛ばす役割として。
おかげさまで俺自身、前の人生では清かった体も心も
あっさりサキュバスに食われてしまった。
体が芯から冷えていく感覚は痛みがなくても恐ろしかった。
自分が味わうのは二度とごめんだし
誰かに味あわせるのもいやだ。
でも自分が弱いことが原因で、この体の母親の二の舞を
女性に味あわせるくらいなら
俺はやっぱり王子と同じようにその盃をとるだろう。
どうしたって譲れない一線がある。
この迷いには時間制限がある。サキュバスが何を考えているか
まったくわからない。笑って死を受け入れるサキュバス。
この興味は恋愛感情ではないがやはり無視できない。
会議でぶつけたいと思う。




