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快楽転  作者: よるとば
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第67話 生い立ち

両親ともに真面目な人だったけれど精神的にどっかおかしかった。

執拗に責めてくる母親といつも家にいない父親、という記憶しかない。

だから母親というものが怖かった。

家の中の、逃れられない圧倒的な支配者。

刃物を後ろ手に持って笑顔で向かい合ったこともある。

殴る蹴るは高校生くらいまで続いたけれど

これが虐待だと親に感じさせるような行動に出たため

それ以降はなくなった、と記憶している。

でも正直自分自身すでにおかしかったからよくわからない。

自分の価値はあやふやで大切なものとは思えなかった。

自分の体を、この世界に縛る入れ物、だと思って生きてきた。

それを変えたのが男の人たちだった。

もちろん私に酷いことをした人だっているけれど

そんなことはどうでもよかった。


私は男の腕の中で世界の秘密を知った気分だったんだ。

両親の手の届かない場所に私は来ることができたと感じた。


それはとても気持ちよくて、自由な喜び。

一期一会も良かったし、長く付き合って友達になるのも

男の人たちはとても幸せな気分にしてくれた。

親から心の離れた私は映画や音楽、バンドを組んで歌も歌ってみた。

13の頃には夜中に家を抜け出す不良少女であったが

一見なにも問題ない子のようには見えたはず。

でもどこか異常だったのだろう。


私の周りに男以外の友達がいた記憶がほとんどない。

たまにしか会わない女子しか友達は続かなかった。

普通のマトモな女子とは心の深部って共有できないなって思った。


宇宙のことも魂のことも、普通の女子って話題にしないのだ。

出てくるのは好きな芸能人や、オシャレの話。

どうせ遠くならもっとロマンのあるものを夢想したい。

画面の奥のそんな遠くて近いただの人間に

どうして興味を持てるのだろう?

でも映画は好きだった。他人の頭の中を映像化したもの。

音楽と同じ、心に入り込ませる行為だと思っている。


男とは先にやってしまえば弱みも奪われるものもない。

さらに体がほしいからか話も聞いてくれるし色々良くしてくれる。

車で迎えにきてくれるし、丁寧に扱ってくれる。

愛してくれた人もいたかもしれない。


でも私が自由にできるのは歌うことと楽しむことだけだった。

人生でたったの一度も自分を愛せなかった。

ただ生きてきただけで、今まで関わってくれた人には

ほんとに申し訳ないけれど、自分を愛せない私は

周りの人も愛することができなかった。


特殊なパーティイベントで当時一、二を争う有名な男優に

言われた言葉が根深く心に焼き付いている。

「君は人を信用しないから、到達できないだろう。」

それは当たっていると思う。


未だに、世界が変わっても私は私のままだよ。


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