昼休み(紀野視点)
「お前さ、これ、どういうこと?ちゃんと捨てなかったの?」
昼休みに入ってすぐ、屋上の入り口前の階段で折小野と対峙する。前置きなどない。話はクラスの誰かから聞いているだろう。
「いや!俺は確かに捨てたんだよ!しかもまだ全然ゴミ入ってなかったから溢れたとかもないと思うし!」
コイツとは知り合ってしばらく経つが、怒ったり喧嘩したりしたことはなかった。そのため、本気で怒る俺の姿にかなり怯えているのがわかる。
「でもあんなことになっただろーが」
「それは、本当に分からないんだよ!嘘じゃねーって!」
普段、場の雰囲気や人の感情の機微に疎いながらも、今は事態が相当悪いと分かっているようだ。その証拠に、普段は目尻にかけて上がっている眉が、ハの字を書くように下がっている。
(まあ、黒板の件に関しては流石にわざとじゃないとは分かっているが、)
「まあ、それはわざとじゃないとして、だから言っただろ。そもそもあんなの書くなって。面倒なことになるんだから」
「それは、、、本当に、すまん。まさかこんなことになるとは思ってなかった」
能天気な奴もここまで落ち込むことがあるのだな。想像以上にこたえているのを見ると、逆に何だか感情が落ち着いてきた。
「本当だよ。それに、何回も言ってるだろ。村田は昔からの友達だって。親同士もよく知ってるくらいなんだよ。どう考えても今更何もないに決まってるだろ」
「はい。本当にすみません」
見せかけだけではなく、心から反省しているようだ。
「まあ今回は本当に腹立ったけど、俺より村田に謝れよな。まじで失礼すぎるから。」
「はい。今日中に行きます。」
「俺も一緒に行くから。ちゃんと何話すか考えとけよ」
「おう、、、」
そう言って3、4回細かく頷いた。怒りを正面から受け取ってくれたおかげで溜飲はスッキリと下がった。それは俺の声色で折小野にも伝わっているかと思うが、当の本人はまだやけに挙動不審だった。
「どうした?」
大丈夫か?というのは何か違う気がして止めた。
「、、いや、何もない」
俺の問いかけに対して、若干の間をおいて折小野が答えた。
(さすがに言いすぎたか?でも別にそこまで強くは言ってないぞ)
「まあ、じゃあ、、昼飯、行くか」
「お、おう!」
その声は明らかに明るく聞こえさせようとしていた。だが、これ以上気まずい時間を過ごしたくなかったのは俺も同じで、とりあえず気にしないで進むことにした。
「いや、、うん、、、」
一拍ほど遅れた足音に、俺は気づかなかった。




