↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
94/132

第94話 橘尚哉は悩んでいる。

 いつもの四人の昼休み。


 小春が話している。


 灰原が適当に相槌を打つ。


 六花が苦笑する。


 最近では見慣れた光景だった。


「そういえばさ〜」


 小春が言った。


「来月だよね〜」


「何が?」


 六花が聞き返す。


「六花ちゃんの誕生日」


「あ」


 六花は小さく声を漏らした。


「そうだった」


「忘れてたの?」


「少し」


「少しじゃないでしょ」


 小春が呆れた顔をする。


     ◇


「白鷺らしいな」


 尚哉が言った。


「そうかな」


「そうだろ」


 灰原も頷く。


「自分のこと興味なさそうだし」


「それはひどい」


 六花は少しだけ頬を膨らませた。


     ◇


「で、何か欲しいものあるの?」


 小春が聞く。


「欲しいもの?」


「誕生日プレゼント」


「うーん……」


 六花は少し考える。


 そして。


「特にないかも」


 そう答えた。


     ◇


「はい出た」


 小春が天井を見上げた。


「絶対あるやつじゃん」


「本当にないよ?」


「嘘だ」


「嘘じゃないよ」


「そんなはずないよ」


 小春は譲らない。


 六花は苦笑した。


     ◇


 そのやり取りを。


 尚哉は黙って聞いていた。


     ◇


 放課後。


 二人で帰る。


     ◇


「そういえば」


 尚哉が言った。


「誕生日」


「うん?」


「本当に欲しいものないのか」


 六花は少しだけ驚いた。


 昼休みの話を覚えていたらしい。


     ◇


「欲しい物って言われても…思いつかないよ」


「本当に?」


「本当に」


 六花は笑う。


「だって今、結構幸せだし」


六花は少し俯きながら言う。


     ◇


 尚哉は黙った。


 六花は続ける。


「だからあんまり思いつかないのかな」


「ふーん」


 尚哉は短く返す。


 けれど納得していない顔だった。


     ◇


「何?」


 六花が聞く。


「別に」


「絶対別にじゃない」


「そうか?」


「そうだよ」


 六花は笑った。


 尚哉も少しだけ笑う。


     ◇


 駅へ着く。


 別れ際。


「じゃあまた」


「ああ」


 いつものやり取りだった。


     ◇


 帰宅後。


 尚哉はベッドへ寝転がった。


 スマホを取り出す。


 なんとなく検索画面を開く。


     ◇


「……」


     ◇


 数秒考える。


     ◇


 そして。


     ◇


『高校生 彼女 誕生日プレゼント』


     ◇


 検索した瞬間。


 尚哉は顔をしかめた。


     ◇


「なんだこれ」


     ◇


 アクセサリー。


 香水。


 ぬいぐるみ。


 雑貨。


 ランキング。


 おすすめ。


     ◇


 全然分からない。


 今まで全く興味のないジャンル。


     ◇


「いやこんなん分かるか」


     ◇


 そもそも。


 六花は欲しいものがないと言っていた。


     ◇


 でも。


     ◇


 本当に何も渡さないのは違う気がする。


     ◇


 喜んでほしい。


     ◇


 その気持ちだけは、間違いない。


     ◇


「……面倒だな」


 尚哉は呟いた。


     ◇


 本気で面倒だと思っているわけではない。


 むしろ逆だった。


     ◇


 こんなことで悩むのは初めてだった。


     ◇


 何をあげれば喜ぶのか。


 何なら笑ってくれるのか。


 考えても考えても全然分からない。


 小春に相談するか。


 いや、それはどう考えても最終手段だ。


     ◇


 それでも。


 考えること自体は嫌じゃなかった。


 六花が喜ぶ姿を一番先に想像しているから。


     ◇


 尚哉はもう一度スマホを見る。


 検索結果は相変わらずさっぱり分からない。


 それでも画面を閉じる訳にはいかなかった。


     ◇


 橘尚哉は悩んでいる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。