第46話 白鷺六花は振り返っている。
月曜の朝。
白鷺六花は少し寝不足だった。
それでもいつものように制服へ着替え、
いつものように学校へ向かう。
変わらない朝。
変わらない通学路。
変わらないはずの日常。
なのに。
何となく落ち着かない気分だった。
◇
「六花ちゃんー!」
教室へ入った瞬間。
小春が飛んできた。
「おっはよ〜」
「おはよう」
「今日もかわいいね〜」
「朝から何言ってるの」
六花が苦笑する。
小春は満足そうだった。
いつも通り。
本当にいつも通りだった。
◇
昼休み。
五人が集まる。
最近では当たり前になった光景。
「聞いて聞いて!」
小春が言う。
「昨日ね、妹とゲームしたんだけど!」
「また始まった」
灰原が呆れる。
「最後まで聞いてよ〜!」
「長くなるだろ」
「なる!」
「威張るな」
玲奈が小さく笑う。
尚哉も少し笑う。
六花も笑った。
楽しい。
本当に。
ただそれだけの時間。
何か特別なことがあるわけじゃない。
でも。
六花はふと思う。
こういう時間が好きだった。
◇
授業中。
窓の外を見る。
青空。
風に揺れる木々。
遠くの校庭。
何気ない景色。
それが。
何故か六花には眩しく見えた。
「白鷺」
「えっ」
先生に名前を呼ばれる。
教室が少し笑う。
「ちゃんと聞いてるか?」
「き、聞いてます」
「怪しいな」
また笑い声。
六花も少し笑った。
◇
放課後。
帰り際。
「また明日ねー!」
小春が手を振る。
「また明日」
玲奈も頭を下げる。
灰原も軽く手を上げる。
尚哉も。
「じゃあな」
いつものように言った。
「うん」
六花も頷く。
本当に。
何も変わらない。
変わらないはずだった。
◇
帰宅後。
部屋へ入る。
鞄を置く。
制服のままベッドへ腰掛ける。
視線の先。
机の上には猫のぬいぐるみがあった。
土曜日に取ってもらったもの。
不機嫌そうなふてぶてしい顔。
少しだけ尚哉に似ている気がした。
「ふふ」
思わず笑う。
手を伸ばす。
抱き上げる。
柔らかい。
あの日のことを思い出す。
カフェ。
ゲームセンター。
夕暮れの帰り道。
楽しくて。
本当に。
幸せで。
◇
しばらくして。
六花はぬいぐるみを机へ戻した。
引き出しへ視線を向ける。
静かに見つめる。
開けない。
手も伸ばさない。
ただ見ている。
「……」
長い沈黙。
部屋は静かだった。
そして。
六花は小さく目を伏せた。
「……そっか」
誰に言うでもなく呟く。
その声はとても小さくて。
静かな部屋の中に溶けていった。
◇
窓の外。
夕暮れが少しずつ夜へ変わっていく。
今日も終わる。
明日もきっと同じように始まる。
小春が騒いで。
灰原が呆れて。
一色さんが笑って。
橘くんがいて。
自分も笑う。
そんな日々。
六花は静かに目を閉じた。
胸の奥が少しだけ痛んだ。
けれど。
それ以上は考えない。
考えないようにした。
ただ静かに。
夕暮れが消えていくのを見ていた。こ




