↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
38/132

第38話 朝比奈小春は皆と遊びたい。

 昼休み。


 朝比奈小春は弁当を食べ終えると、突然立ち上がった。


「ねーねー聞いて!」


 その声に何人かの生徒が振り返る。


 だが本人は全く気にしていない。


「決めた!」


「何をだよ」


 尚哉がパンをかじりながら言う。


「みんなで遊びに行く!」


「急だな」


「急じゃないもん!」


 小春は机を叩く。


「前から思ってたし!」


「絶対今思いついただろ」


「いいじゃん!」


 図星らしかった。


 灰原が吹き出す。


「まあでもいいんじゃね?」


「ほらほらほら!」


 小春が勢いよく指を差した。


「灰原くんは分かってるよ!」


「面白そうだしな」


「でしょ〜!」


 小春は満足そうに頷く。


「六花ちゃんも行くよね?」


「え?」


 急に話を振られた六花が目を丸くする。


「私は別にいいけど」


「やったー!」


 小春は両手を上げた。


「って事で橘くんも」


「なんで確定なんだよ」


「来るでしょ?」


「……まあ予定はないけど」


「はいキター!」


 小春は勝ち誇ったような顔をした。


 誰も勝負はしていない。


 その時だった。


「あ」


 教室の入り口で小春が声を上げた。


「一色さーん!」


 本を抱えた玲奈がびくりと肩を震わせる。


 昼休みの図書室帰りだろうか。


「こ、こんにちは……」


「ちょうどよかった!」


 小春は満面の笑みで手招きした。


「今ね、みんなで遊びに行く計画立ててたの!」


「え……?」


「一色さんも行こ!」


「わ、わたしですか……?」


「そう!」


 間髪入れない小春の勢いに押され、


 玲奈は困ったように視線を泳がせる。


「その……」


「予定ある?」


「ないです……」


「じゃあ決まり!」


「えぇ……」


 あまりにも強引だった。


 だが。


「一緒に行こうよ」


 六花が笑う。


「きっと、楽しいと思うよ」


 玲奈は少しだけ視線を下げた。


「別に無理しなくていいけど」


 尚哉が言う。


「来たいなら来ればいいし」


「そうそう」


 灰原も頷く。


「人数多い方が楽しいしな」


 玲奈は四人の顔を見る。


 誰も無理に引っ張ろうとしていない。


 ただ自然に誘っているだけだった。


「……じゃあ」


 小さく息を吸う。


「行きます」


「やったー!」


 小春が机を叩いた。


「全員参加!」


「だからまだ何も決まってないだろ」


「決まったもん!」


 小春は満足そうだった。


     ◇


 場所は駅前のショッピングモール。


 今度の休日。


 昼集合。


 気付けばそんな話になっていた。


「楽しみだねー!」


 帰り際。


 小春が何度目か分からないくらい同じことを言った。


「また言ってる」


 灰原が呆れる。


「だって楽しみなんだもん」


「何回目だよ」


「まだ三回目くらい!」


「八回目だぞ」


 尚哉が言った。


「数えてたの?」


 六花が笑う。


「暇だったからな」


「うわ、暇人まじやば〜」


「お前が言うな」


 小春がケラケラ笑う。


 灰原も笑う。


 六花も笑う。


 玲奈も小さく笑った。


 その笑顔を見て。


 小春は満足そうに頷く。


「うん!」


「何がだよ」


 尚哉が聞く。


「みんな来てくれるからうれしい!」


 その言葉に。


 一瞬だけ静かになる。


 けれど。


 誰も否定しなかった。


 多分。


 なんだかんだで皆一緒。


 次の休日が少しだけ楽しみになる。


 …そんな春の日だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。