↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
30/131

第30話 花火は夜空に咲かない。

 後夜祭の時間が近付いていた。


 文化祭は大成功。


 校内には達成感が漂っている。


 来場者も徐々に帰り始め、


 残っているのは生徒達が中心だった。


 みんな楽しそうだった。


     ◇


「まだかな〜?」


 小春が言う。


「何がだよ」


 尚哉が聞く。


「花火〜」


「あと少しだろ」


「待てない〜」


「子供か」


「文化祭の日くらい子供でもいいじゃん〜」


 意味不明だった。


 玲奈が思わず笑う。


「確かに今日くらいは良いかもしれませんね」


「玲奈ちゃんが優しい〜」


 小春が感動したような顔をする。


「普段から優しいだろ」


 尚哉が言う。


「橘くんはちょー厳しい〜」


 また周囲が笑った。


 本当に。


 平和なひとときだ。


     ◇


 校庭には多くの生徒が集まっていた。


 後夜祭。


 文化祭最後のイベント。


 みんな、空を見上げている。


 打ち上げ花火を待っていた。


 玲奈も少しだけ楽しそうだった。


「花火なんて、久しぶりです」


「そうなの?」


 六花が聞く。


「はい」


 玲奈は頷く。


「とても楽しみです」


 柔らかく微笑む玲奈。


 六花も微笑む。


「そっか」


 嬉しい。


 本当にそう思う。


 だけど。


 …だけど。


     ◇


 時計を見る。


 午後六時。


 もうすぐ始まる。


 六花は無意識に校舎の方へ視線を向けた。


 何もなかった。


 予定通り。


 文化祭は終わった。


 問題も起きなかった。


 なら。


 もしかしたら大丈夫なのかもしれない。


 そう思おうとする。


 だが。


 心が納得しなかった。


     ◇


 尚哉も空を見上げていた。


 花火。


 後夜祭。


 文化祭の締めくくり。


 まぁ、悪くないな。


 そんなことを考える。


 そして。


 ふと。


 あの文字を思い出した。


 【彼は今回も死ぬ。】


「……」


 小さく眉をひそめる。


 だが。


 すぐに頭を振った。


 俺、考えすぎだ。


 今日一日。


 特別な事は何も起きなかった。


 もう…大丈夫だろう。


     ◇


 校庭にアナウンスが流れる。


『これより後夜祭を開始します』


 歓声が上がった。


 拍手が起きる。


 みんな空を見る。


 小春も。


 玲奈も。


 尚哉も。


 六花も。


 夜空を見上げていた。


 花火が上がる。


 夜空を彩り、いつか思い出になる。


     ◇


 だが。


 …上がらない。


     ◇


「あれ?」


 誰かが言った。


 数秒の沈黙。


 生徒達も首を傾げる。


「まだじゃない?」


「カウントダウンとかあるんじゃね?」


「そういう演出でしょ」


 そんな声が聞こえる。


 誰も深くは気にしていなかった。


     ◇


 十分後。


 それでも花火は上がらなかった。


 ざわつきが広がる。


 教師達が動いている。


 実行委員達も集まり始めていた。


「何かあったのかな」


 玲奈が呟く。


「トラブルじゃね?」


 尚哉が言う。


 だが。


 六花は嫌な予感しかしなかった。


 心臓が嫌な音を立てる。


 何かがおかしい。


 何かが始まっている。


 そんな予感がした。


     ◇


 その時だった。


「……あれ」


 誰かが言う。


 全員の視線が動く。


 校舎の方だった。


 二階。


 教室が並ぶ辺り。


 そこから。


 黒い煙が立ち上っていた。


     ◇


 一瞬。


 誰も理解できなかった。


 何が起きているのか。


 それが何なのか。


 理解が追い付かない。


 そして。


 次の瞬間。


 誰かが叫んだ。


「火事だ!!」


 悲鳴が上がる。


 ざわめきが広がる。


 文化祭最後の夜は。


 その一言で終わった。


 花火は夜空に咲かない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。