↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
130/133

第130話 白鷺六花は繰り返している。

 目を開けると、見慣れた天井がそこにある。


 しばらく何も考えられない。


 頭が真っ白だった。


 そして。


 ゆっくりと身体を起こす。


「……え」


 カーテンの隙間から朝日が差し込んでいる。


 全部見慣れた自分の部屋だった。


 六花は時計を見る。


 午前六時十二分。


 そしてスマホを手に取った。


 表示された日付を見て。


 呼吸が止まる。


 四月一日。


「……なんで」


 声が出ない。


 昨日。


 いや。


 昨日ではない。


 あの日。


 駅のホームで。


 尚哉は確かに。


「……っ」


 胸が苦しくなる。


 頭の中にブレーキ音が蘇る。


 悲鳴と叫び声。


 線路。


 そして。


 尚哉。


 六花は首を振った。


 違う。


 落ち着かなきゃ。


 落ち着かなきゃいけない。


     ◇


 六花は学校へ向かう。


 桜が咲いている。


 景色が同じだった。


 嫌になるほど同じだった。


 全部。


 あの日と同じ。


 教室へ入る。


「おはよー!」


 小春の声が響いた。


 六花の身体が固まる。


 同じだ。


 あの日と。


 全く同じ。


     ◇


 尚哉もいた。


 窓際の席。


 友達と話している。


 笑っている。


 生きている。


 六花は思わず立ち尽くした。


 安心した。


 嬉しかった。


 でも。


 同時に恐怖を感じる。


 本当に戻っている。


 本当に。


 四月一日へ。


     ◇


 一日が終わる。


 放課後。


 六花は誰もいない教室へ向かった。


 確かめたいことがあった。


 あの黒いノートがすごく気になる。


 今の自分と関係がある気がした。


 教室へ入る。


 夕日が差し込んでいる。


 静かな教室。


 そして。


「あった……」


 黒いノート。


 前と同じ場所。


 前と同じ姿。


 六花は震える手でそれを開く。


     ◇


 最初のページ。


『白鷺六花は嘘をついている。』


 そして。


 次のページ。


『朝比奈小春は財布を忘れる。』


 六花は息を呑んだ。


 自分の字だった。


 間違えるはずがない。


 あの日。


 自分で書いた文字。


 誰にも見せていない。


 誰も知らない。


 それなのに。


 残っている。


     ◇


 夢じゃなかった。


 全部。


 本当に起きたことだった。


 尚哉は死んだ。


 そして。


 自分は四月一日に戻った。


「……なんで」


 呟く。


 答える人はいない。


 理由も分からない。


 仕組みも分からない。


 どうして自分だけ覚えているのかも分からない。


 それでも。


 一つだけ分かることがあった。


 書いておこう。


 忘れないように。


 次の自分の為に。


 六花はペンを手に取る。


 白いページを開く。


 そして。


 静かに書き始めた。


 白鷺六花は繰り返している。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。