僕はこの人に勘違いされている?
カイは、ルカとノクスを交互に見た。
部屋の窓は開いていて、夕暮れの冷たい風が入ってくる。
その窓際で、ノクスは椅子に座ったまま頭を抱えている。
そして、椅子のすぐそばではルカが、珍しくノクスに怒っているようだ。
「何? どうした?」
入り口のドアでカイが戸惑う。
その横から、アルヴェがひょいと顔を出した。
アルヴェはルカに目線を落としたまま、ノクスに問いかける。
「ノクス?」
「……なんでもない」
振り絞るような声。
アルヴェは頬に指を当て、首を傾げる。
「お説教?」
「…………」
アルヴェの問いかけに、ノクスからの返事はない。
かわりにルカが、ふんっと息を漏らした。
アルヴェは少し考える。これ以上、追求してはルカが可哀想かと一歩身を引いた。
だが、そこにカイが空気を読まず、割って入る。
「喧嘩か? 珍しい」
ノクスはドアの方は見ずに、ヒラヒラと手を振る。
それが否定か肯定かも、分からない。カイは首を捻った。
「夕飯、誘いに来たんだけど」
カイが、「どうする?」と、言う前にルカが勢いよく飛び身を乗り出した。
「行く! 行く、行く! 行きます!」
勢いよく手をあげ、二人に駆け寄る。
すると、ノクスも顔をあげて、3人をジトッと見た。
「ノクスも行くでしょう?」
アルヴェの助け船に、ノクスは頷く。
ノクスが椅子から立ち上がると、ルカは慌てて食堂へ向かう。
「あっ、ルカ。待てよ」
自分の小脇をすり抜け、部屋を飛び出したルカを、カイは追いかけた。
残されたアルヴェは、目を細めノクスを見る。
ノクスはアルヴェの目線が痛く、睨み返すが彼には通用しない。
何も言わないアルヴェに、ノクスは観念して肩を落とした。
「何もしていない」
「俺、何にも訊いてないけど〜?」
へらりと笑うアルヴェ。
性格の悪さに、ノクスは目眩がした。
「まー、言及する気はないですよ。言いたければどうぞ、お好きに」
アルヴェの減らず口に、ノクスはアルヴェの額を軽く小突く。
だが、悩みに悩む。
口を開けたり、閉めたりするノクスに、アルヴェの笑みは深くなった。
ノクスはアルヴェから目を逸らし、バツが悪そうに頭を掻く。
「ルカに嫌われた……、と思う」
アルヴェは目を見開き、腹を抱えて笑い出した。
「クッ……ハッ、ハハッ……、そう? そっかぁ〜」
やはり言わなければ良かったと、ノクスは後悔する。
言う相手を間違えた。が、他に聞いてくれる相手も居ない。
こういう時、自分の友人の少なさに嫌気がさす。
ノクスは、髪をぐしゃぐしゃと掻き揚げ、アルヴェに目を落とす。
「行くぞ」
「はいはい」
先に行った二人を追いかけ、歩き始めた。




