表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
53/77

案の定俺たちの勧進芝居を弾左衛門がぶち壊してくれたよ

 さて寺社奉行及び勘定奉行を通して上様から、直接の勧進芸の許可をもらった俺達は、それぞれで開催準備を始めた。


 引札(ひきふだ)をつかって、勧進芸の興業の日時や場所をふれて周り、芝居の練習を行って、桟敷席を作らせてそれぞれで準備をしたのだ。


「えびぞーもがんばて」


「うん、がんばる」


 清花と海老蔵はそう言ってるが、流石に海老蔵が芝居に参加することは出来ないが、まあ大人と一緒にうごきまわって飲料水や茶などの差し入れなどを手伝ったりしてる。


「大名様や奥女中様相手のお芝居ですと、失敗は許されまへんな」


 と藤乃も気合が入っている。


「ああ、でもあんまり気負わないでいいぞ。

 別に勝ち負けを競うわけじゃないしな」


 遊女や猿楽師や歌舞伎役者に絡繰り師といった“なにも生み出さない連中”とされている俺たちの汚名を返上するいい機会だし、気合が入るのもわかるけどな。


 俺たちは火除地の芝居小屋や河原の桟敷席をつくるのを弾左衛門にそれを頼んではいない。


「今回の件は弾左衛門は無関係だからな」


 そして結構早く芝居小屋や桟敷席は出来あがる。


「さすが手慣れたもんだな」


 そして興業を始める前に俺は皆を集めていった。


「今回の興行には上様自らの上意も取り付けてあるが、もし弾左衛門がやってきていきなり小屋などを壊し始めたら自分たちや観客の安全のために避難を優先してくれ。

 もし櫓銭を奴らが持っていったとしてもそれを無理に止めなくていい」


 中村勘三郎が首を傾げていう。


「なんでだ?」


「櫓銭の多くは幕府へ献上したり、被災地に寄進したりする予定の金。

 それをとっていったらどうなるかわかるか?」


「あ、ああ、なるほどな。

 言いたいことはわかった」


 江戸時代では強盗、十両以上の窃盗、十両以上の横領、十両以上の詐欺は全て死罪。


 放火は馬で市中引廻しの上、火罪、依頼放火は市中引廻しの上、死罪。


 誘拐も死罪。


 それらには田畑、家屋敷、家財を根こそぎ収公、すなわち没収のうえ、幕府の財産にするものである闕所けっしょが加わることも多い。


 勝扇子裁判にて敗訴した弾左衛門側の芝居打ちこわしの直接責任者として、革買い治兵衛、房州穢多頭の庄兵衛と善兵衛らは遠島のうえ闕所に処せられているが、死罪から罪一等軽いとは言えその後の生活が悲惨な生殺しなのがこの遠島刑だ。


「とりあえず皆の命あっての物種だからな」


 そして、それぞれの興行がはじまった。


 河原での桟敷で絡繰師の結城孫三郎、江戸肥前掾たちが芝居をしているところに弾左衛門やその下の穢多頭がやってきて、自分たちに無断で芝居を興行していることに苦情をいい、弾左衛門達は配下五十人をつれて乗り込み、さらに金剛太夫猿楽芝居小屋へ現れて、見物の大名が居並ぶ前で芝居小屋の舞台を滅茶苦茶にぶち壊して、本来自分に納めるはずの桟敷席や小屋の建設依頼料代わりと櫓銭をひったくっていったらしい。


「おいおい、弾左衛門はまじでそれやったんか」


 金剛太夫や結城孫三郎、江戸肥前掾が早速勘定奉行の奉行所へ訴えたのは言うまでもないが、まあ弾左衛門はちょっとやりすぎだな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ