緑の魔術師
生い茂る木々、草花。小鳥はさえずり、耳を澄ましていると、様々な動物の声が聞こえてきます。風は優しく頬を撫で、空は高く、蒼く、とても清々しい森でした。
その森の奥深く、そこには一軒の小屋がありました。小屋の煙突からはもくもくと煙が出ています。その小屋から人影が扉から現れました。
真っ黒のローブを羽織り、フードを被っています。そのフードの下からは白く、陶磁器のような肌が見えていました。唇は艶やかな赤色でした。
空を見つめた時に風がふわりとフードをおろしました。
現れたのは太陽に照らされ淡く光る深緑の瞳と、瞳とは対照的なライムグリーンの髪の毛でした。
さらりと風がライムグリーンの髪の毛をとかしていきます。彼女は風が止んでからまた、フードを深くかぶりました。
彼女は森を歩きます。
森は彼女に道をあけるかのように、彼女の行く手を阻もうとはしませんでした。動物たちは彼女を遠目に見守っていました。
少し開けた場所に腰を下ろし、地面に生えている草を指で触れながら彼女は微笑んでいました。そして、丁寧に草を何本か抜き取りました。
その時です。ガサガサと音がして、小鳥が飛び立ちました。
「……そこにいるのは、何者だ」
草むらから現れたのは流行りのプールポアンにきゅっと脚が締まるホーズを着て、先の長細く伸びた靴を履いた男でした。プールポアンとホーズを結ぶリボンは赤色でした。
男は彼女が振り返ったのを見ると顔を歪ませました。
「お前、魔女か」
身構えた男を見て、彼女はゆっくりと立ち上がり、フードを下ろしました。露わになる美しい彼女の姿に男は魂を抜かれたように固まってしまいました。
その様子を見た彼女は赤色の唇を開きました。
「私が魔女と呼ばれるのは、そうでしょう。この姿を見て貴方のように固まってしまうのですから。これは魔女の力なのでしょう」
艶やかな彼女の唇が言葉を紡ぐ度、男は彼女から目が離せなくなりました。
「……失礼いたしました。美しさ故に魔女と呼ばれるとは、とんだ災難でしたね」
「いいえ、もう慣れっこですわ」
彼女は微笑んでそう言いました。
「こんな所で何をしているのですか? 此処には魔女がいると聞きます。こんな所にいては危ないですよ」
男は心配そうに彼女に言いました。
「私は森が好きで。ここの草花を愛でるのが楽しみなのです」
そして、彼女はしゃがみこんで咲いている花をそっと撫でました。うっとりと花を見つめる彼女の"蒼い"瞳に男も吸い込まれそうでした。
「一つ、ご提案が」
しゃがんでいた彼女はその状態のまま男を見つめました。"金色"の髪の毛から覗く蒼い瞳に男が映り込みます。
「何でしょう?」
「私1人では危ないと貴方は言いました。これからもう少し奥へ行きたいのです。だから、ご一緒に行くのはいかがでしょう?」
懇願する彼女に男はいいえ、とは言えませんでした。
「喜んでお守りいたします」
彼女はにっこりと笑いました。そして、フードを被って歩き始めました。
森を進む2人。先を行く彼女はどんどん、どんどん進んでいきます。男は一緒に歩いていきます。時々彼女と会話をしながら歩いて行きました。
「……これは」
男は道の途中で立ち止まりました。開けたその場所には沢山の十字架が建てられており、ひんやりとした空気が漂っていました。
彼女もその気配を読み取り足を止めます。
「……森では沢山の"生き物"が死んでしまうの。それをこうして弔ってあげているのですよ」
男は彼女を見つめました。
ゆっくりと振り返った彼女のフードが、突然吹いた風によって脱げてしまいました。
「お、お前は……!」
深緑の瞳とライムグリーンの髪の毛が木々の隙間から漏れる太陽の光によって怪しく光っていました。
緑の魔術師
>Do you like green?
7月最初の投稿です。
ちょっと、知識不足かもしれません(..;)
2015/7 秋桜空




