↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/75

第3話 薬師のおばあさんに弟子入りしました

「その草を、どこで手に入れたんだい?」

ハンナさんの鋭い視線に、僕は嘘をつけなかった。

「……畑のあぜ道です。スキルで見つけました」

「スキル? ああ、昨日の儀式で『雑草鑑定』をもらったという、あの子かい」

ハンナさんは、ふん、と鼻を鳴らした。笑うでもなく、馬鹿にするでもなく。

「ついておいで。見せたいものがある」

* * *

ハンナさんの薬屋は、村はずれの古い木造の家だった。

棚いっぱいに並んだ瓶と、天井からぶら下がる乾燥した薬草。ふしぎな匂いが、鼻をくすぐる。

「ここに、薬草を十種類混ぜた籠がある。どれが何か、わかるかい?」

机の上に置かれた籠には、見た目がそっくりな草が山のように入っていた。

(……雑草鑑定)

心の中で唱えると、一本ずつ文字が浮かぶ。

「えっと、これは熱さまし草。こっちは毒消し草で、これは……毒草です。触っただけでかぶれます」

「……ほう」

「あと、これは魔力草。この小さい葉っぱは、咳止めの原料になります」

僕が全部答え終えると、ハンナさんは長い間、黙っていた。

やがて、ゆっくりと口を開く。

「全部、正解だよ。私が五十年かけて覚えたことを、おまえさんは一目で見分けた」

「え、えっと……」

「いいかい、ケン。月光草は、百年前に絶えたと言われている幻の薬草なんだ。もしそれが生えていると世に知れたら、貴族や商人が、おまえさんを放っておかないよ」

僕は、背中がひやりとした。

「だから、そのスキルのことは、私とおまえさんの家族以外、誰にも言うんじゃない」

「……はい」

「それで、だ」

ハンナさんは、にやりと笑った。

「うちの弟子にならないかい? 食事つき、薬の作り方も教えてやる。月光草を安全に使うには、正しい知識が要るからね」

* * *

その夜、家族会議が開かれた。

「弟子入り? ケンが、薬師の?」

父さんと兄さんたちは、目を丸くした。

母さんは、そっと僕の手を握った。

「リナを助けてくれた子だもの。ケンが、やりたいようにしなさい」

「……ありがとう、母さん」

胸の奥が、じんわりと温かくなる。前世では、こんなふうに誰かに背中を押してもらったことは、一度もなかった。

(今度こそ、ちゃんと生きてみよう)

* * *

翌朝から、薬屋での修行が始まった。

「まずは、薬草の洗い方からだよ」

「はい、師匠!」

「師匠じゃない。ばあちゃんでいい」

そんなやり取りをしていると、店の戸が、勢いよく開いた。

「ハンナさん! 大変です!」

息を切らして飛び込んできたのは、騎士の鎧を着た若い男だった。

「領主さまのお屋敷の、お嬢さまの熱が下がらないのです! どんな薬も効かなくて……!」

ハンナさんが、ちらりと僕を見た。

僕は、ごくりと唾をのんだ。

(領主さまの、娘……?)

――第4話へ続く――

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。