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088⚫️草原の妖精たち

パリの冬は暗く、私の心もまた、出口のない迷路の中にある。

フランスの巨匠たちの影を追い、

写実という鎖に繋がれ、私の筆は死んだも同然だ。

私は一体、何のためにここへ来たのか。

自問自答の末に疲れ果て、キャンバスを前にまどろんだようだ。


不意に、冷たくも心地よい風が頬を撫でた。

目を開けると、そこは屋根裏部屋ではなく、

夕闇に包まれた故郷の草原だった。

遠くに馴染み深いグリップスホルムの城影が浮かび、

草の香りが鼻をくすぐる。

すると、霧の中から透き通るような影が次々と現れた。


春の妖精たちだ。

彼女たちは手を取り合い、

この世の重力など初めから存在しないかのように、軽やかに宙を舞い始めた。

あどけない少女のようでありながら、

どこか妖しげで華麗な、神聖なる輪舞(ロンド)。

その足が地を離れた瞬間、

私の胸を縛っていた重い鎖が、音を立てて砕け散った。

これだ。

私が描くべきは、目の前の現実ではなく、

この魂の奥底に眠る「北欧の真実」なのだ。


眼を開け、震える手でパレットを掴む。

夢の中で見たあの浮遊感、あの淡い真珠色の光を、

今すぐこの布の上に留めねばならない。

異郷の寒さも、孤独な苦悩も、もはやどうでもいい。

私の筆は今、妖精たちの踊りに導かれ、

ようやく本当の故郷へと帰り着いたのだ。


ーいやあ、ひさしぶりに実体空間で踊ったのは気持ちよかったね!

ー13人全員が揃うのは、なんかうきうきしちゃったあ!

ーたまにはいいんじゃないの?人生は楽しまないと、ね。

ーでも、なんかだれかに見られてたようだよ。

ーま、ちょっと喜びが他の世界線にも、もれちゃったかも、ね。


ニルス・ブロメール(ニルス・プロペテール)1850年「草原の妖精たち」

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