023⚫️支配する力 幸せな心
もし、’神のごとき力’を持つ者が現れたとしたら、どうだろうか。
彼、もしくは彼女、今は’それ’と呼ぶことにする。
’それ’は全知全能である。
世界にあるもの、生存している人々、起こる現象のすべてを知り、
それに基づき、どんな対応も可能だ。
どこかの誰かが、自分の居住区への’テロ’を思い浮かべている。
極秘の思考は、’それ’によっていとも容易くに把握される。
対抗手段として’それ’は物理弾を放つ。
遠く地球の裏側から、光の矢が’テロリスト’の拠点を破壊する。
生存者は皆無である。
豪華な食事、すばらしい異性、最高に心地よい環境。
すべての人々が’それ’を敬い、恐れ、従順に従う。
反発することは、即ち地上からの抹殺を意味する。
だが、全世界を掌中に収めた今、’それ’は幸せなのだろうか。
ミステリーを読もうとしても、最初のページをめくる前に
トリックも犯人も分かってしまう。
誰かがプレゼントしても、’それ’は既にいくつも所有している。
愛を囁かれても、それが畏怖からなのか、利益のためなのか、
あるいは真実の愛なのか・・・すべて判別できてしまう。
全てを手に入れるということは、
孤独で、退屈なのではないだろうか。
一方、全てを支配するのではなく、
自分の心の主であることを望んだヒトがいる。
彼にとって、自らの欲を絶ち、煩悩を捨てること。
その状態を保つことが、魂の安寧であった。
満足な食事を必ずしも取れるわけではない。
暑さや寒さに晒され、身体的な苦痛を味わう。
衣類も質素で、持ち物は必要最低限。
だが、彼はそれ以上を求めない。
もし命を失う事態に直面しても、
死すら彼に動揺を与えない。
万物は流転し、因果は応報する。
天然自然の中で生かされていることに満足し、
不滅を願わず、有限を心の安定とともに過ごす。
彼は
幸せだったのではないだろうか。




