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五十二話 状況整理

喧嘩していた三人もアレンが起きたことに気付き、ジーベックでの暗部との戦いで起きたことや、黒魔女隊《ヴァルプルギス》のエレシア・レン少佐との戦いについて全て説明した。


「エレン、そっちの状況を教えてくれ」

『はい、暗部の兵隊が戻ってきましたがネオンたちが撤退したことに気付いたようで、動く気配はありません』

「サボタージュの気配はないか?」


『ありません』

「分かった、引き続き警戒してくれ、何かあったらダイレクトチャンネルで教えて欲しい、それと苦労をかけるな、エレン」

『いいえ、この程度大したことはありません。しかしご褒美くらいは欲しいです』

「諸々が終わった後で用意する、期待しといてくれ」

『はい』


エレンとの通信を終えたアレンは立ち上がる。


「アレン、お疲れ様」

「ありがとう、ネオン。こっちもそれなりに苦労したけどそっちほどじゃなさそうだな」


アレンは血塗れのネオンの姿に、痛ましそうにその頬を撫でる。


「このままだと傷が残る、医療ポットを借りよう、それと服は新しく作る」

「お願い」


「ああ、二人は大事ないか?」

「私は遠くから撃ってただけだからな」

「光線や弾丸には負けぬ」


「よし、それでも身体は休めた方がいい。っとその前に二人のことが先か」


アレンはツーとスリーに目を向ける。


アレンに見られた二人は、思わずビクンと身体を跳ね上げる。


初めて見る目だった、自分たちを道具でも、敵でも、得体の知れない何かを見る目でもなかった。


アレンはただ二人の損傷を分析し、どう修理すればいいのか無意識に考えていただけだったのだが、そんな目で見られた経験のない二人には新鮮に思えたのだ。


「アレン・リード、ブロンズランク傭兵団スターリングの団長兼整備士だ、よろしく」


「02、ネオンはツーと呼んでいる」

「03、同じくスリーと呼ばれてる」


「よろしく。早速本題だがネオンが約束したことは俺も守る、そして君たちの身体も直そう、望むなら如何様にも」

「「?」」


アレンの言葉がよく理解できなかった二人は、首を傾げ、それを見たネオンが横から補足する。


「アレンが言ってるのはもっと性能の良い義体を作ってあげるってこと、生体部品製の有機義体だって作れる」


「それは本当!?」

「あ、ああ」


やけに食い付きがいいスリーに、ツーがその理由を説明してくれる。


「スリーは有機義体に憧れを持っている」

「あれは神が人間に与えた原点回帰の素晴らしい機械だからね!」

「あれも機械、つまり神は素晴らしい」


「私は有機義体を手に入れる為なら何でもするよ!、あっ、でも制御ユニットをもう一回積むのは勘弁してね」

「あれをもう一度搭載するくらいなら神の元へ身罷る」


「そんなことは絶対にしない、頭の外部通信ユニットも修理するけど、一切手を加えないと約束する。口約束になって悪いが」


「別に構わない、私たちの選択肢は少ない。より良さそうな選択肢を選ぶだけ」

「そうだね、約束通りカディアス・ベケットの始末に協力するよ。何が欲しい?」


「居場所」

「「知らない」」


「暗部の拠点は?」

「それはいくつか知ってる」

「でもそこに本人はいないと思う」


「チャック・ネイドの居場所は分かる、ヤツの身柄を抑えればカディアスの居場所も分かるかも」

「エグロン社付きの神父か、二人の上司?」


「筋金入りのクソ坊主だ、それと元上司だ」

「上司だと思ったことなんてないよ、制御ユニットがなかったら、誰が従うか、あんな野郎に」


二人からの評価は最低だが、マグラートとエグロン社を繋げた人物である可能性が高い神父を捕まえることが出来れば、カディアスの居場所が分かるかもしれないというツーの論法には説得力があった。


「どう思う?」

「論は通る」


「残された時間は少ないし、闇雲に探すよりはマシだと思うな、マキウス教会と敵対するリスクを度外視すればの話だが」

「イーディスの話では、教会の裏切り者なんでしょ?」

「そのイーディスたちは、組織を追われたぞ」


「二人共」


意見を出し合うネオンとゼナが衝突しそうになるのを感じたアレンは、二人を窘める。


「手を貸してくれるか、メーヴェさん」

「裏切り者を処する話なら喜んで協力する」


「ありがとう」

「皆を呼ぶ」


メーヴェは天使の輪を介して、呼ばれたシスターズがアレンたちの前に集まる。


「裏切り者を捕まえるとか?」

「ああ、皆に手伝って欲しい」


「メーヴェが言った通り我々は協力します。それとアレン個人には大きな借りができました、本当にありがとう」

「俺は自分の仕事をしただけだ、でも彼女たちにここの設備を貸してくれると助かる」


「そんなのは許可を取る必要すらありませんよ。私たちはスターリングを歓迎しますよ」


◆◆◆◆


長かった一日の終わり、夜が明けると新しい一日が始まった。


シスターズとスターリングの一部メンバーは、リュケイオンのブリーフィングルームに集まっていた。


ブリーフィングルームには、シスターズからイーディス、アレリア、そしてまだ名乗っていない五人。


スターリングからはネオンとリオンが参加していた。


「先に我々から名乗ろう、其方らの団長に救われた者の一人、レイナ・テラメア、コールサインはデーモン1という」

「私はクーリア・テラメア、コールサインはフェアリー1、君たちのリーダーには感謝してる」

「私はネーニャ・テラメアだよ、コールサインはスピリット1、同じく君たちの団長に感謝してるよ」


「トロジー・テラメア、コールサインはゴースト1。メーヴェは私の小隊員、よろ、それとアレンさんには大感謝」

「最後は私だな、ギーラ・テラメアだ、コールサインはタイタン1、よろしくな!、それと私も皆と同じように其方の団長には感謝しているぞ!」


「ん、アレンに伝えとく。私も名乗っておく、ネオン・ヴァイク、ブロンズランクの傭兵」

「某はリオン・リベラート、ゴールドランクの傭兵でござる」


全員の名前を共有させたことで、会議が始まり、進行役としてアレリアが話し始める。


「現状を共有する、スターリングの母艦を襲撃した暗部の兵隊は夜明けと共に撤退しましたが、依然としてリノレス第二空港には暗部の監視の目が敷かれている」


中央にリノレス第二空港のホログラムが立ち上がり、空港全体が赤い丸で囲まれる。


「それとネオンの前に現れた黒魔女隊《ヴァルプルギス》の陸戦隊は消えた」


「ヤツらのステルス装備は万全」

「黒魔女隊《ヴァルプルギス》は我らの敵でござろうか?」


「現状は不明、私はネオンが戦ったというARMSが鍵だと思う」

「あのARMSが?」


「あくまで可能性があるという話、ただの推測だから聞き流していい。それに今回の作戦にヤツらの有無は関係ない、イーディス」


「チャック・ネイドはツーとスリーの情報から、第六社宅ビルの二十二階に住んでいることが分かっています」


ホログラムが切り替わり、高層ビルが表示される。


「最新の警備情報を入手しましたので、空から侵入し、警備を無力化後チャック・ネイドの身柄を制圧します」

「01はいる?」


「いません、おそらくは」

「おそらく?」

「私が入手した警備情報は、あくまでエグロン社のもので、個人の警備員までは分かりません」

「そっか、その警備情報はどうやって?」


「ネオン、その話は…」

「好奇心で聞いてるわけじゃない、情報源に欺瞞情報を掴まされる可能性だってある、判断材料が欲しい」

「欺瞞情報を掴まされることはありません」


「何故そう断言できる?」

「それは…」


「イーディス、話していいと思う」

「アレリア」

「懸念していることは私もよく分かる、けどネオンが知りたがる理由も分かる。むしろ私は彼女の評価を上げたところ」


「ふふ、それほどでも」

「とてもムカつきます、一発殴りたいです」

「某も加勢いたす」


「イーディス、冗談はそのくらいに」

「冗談ではありませんが、アレリアに免じて教えてあげますよ、感謝してくださいね、ネオン」

「ムカつく、そのバイザーごと殴りたい」


「コホン、我々の情報源は聖女イリステラその人です」


サラりと投下された爆弾発言に、二人は困惑を隠すことができないのだった。

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