四十七話 傭兵と天使
規則正しい動きで進軍してくるパワードスーツ兵と、戦闘ボットに対し、アレン謹製の戦闘ボットが対物用コイルガンを放つと、二人のパワードスーツ兵の盾が防ぐ。
その瞬間、防御用の戦闘ボットから飛び出した三つの影は、一気に距離を詰める。
先頭を飛ぶイーディスに、銃口が集まり、鉛玉の雨が降り注ぐが、彼女のパーソナルシールドにより、防がれる。
横合いから飛び出すネオンと、リオンにも当然のようにパワードスーツ兵たちは反応し、銃器の引き金を引く。
パーソナルシールドを展開したネオンとは違い、完全生身のリオンは、短く息を吸う。
「すぅ」
その瞬間、"心速"を使用したリオンの反応速度が爆発的に向上し、世界が鈍化したような感覚に陥る。
銃口から弾道を見切ったリオンは地面を駆け、鉛玉を躱し、一気に距離を縮める。
「!!」
あまりにも速いリオンに、近接武器を抜く暇もなく、ライフルを斬られたパワードスーツ兵は、即座にライフルを捨て、腕部に格納されたブレードを展開し、リオンの返し刃を受ける。
リオンの応手は早く、三ノ太刀で、パワードスーツ兵の近接ブレードを斬り飛ばす。
武器としての性能差を格付けされたパワードスーツ兵は、瞬きの間よりも早く、首を飛ばされる。
リオンの圧倒的な近接戦闘能力により、仲間を屠られたパワードスーツ兵たちは、即座にリオンへ銃口を向け、引き金を引くが、そこへイーディスの機械翼から放たれた複数のレーザーが、防御に専念させ、リオンが一度引く隙を作る。
戦闘ボットと戦うネオンにも、レーザーを飛ばすイーディスは、ネオンが、パーソナルシールドを展開し、戦闘ボットの鉛玉の雨に耐えているのを確認する。
戦闘ボットはレーザーを撃ってきたイーディスに、標準を変えた瞬間、パーソナルシールドを消したネオンは、レーザーライフルの引き金を引き、戦闘ボットの脚部を貫き、破壊する。
通常のレーザーライフルではありえない威力に、戦闘ボットはネオンを優先排除対象に設定する。
ネオンをロックオンした二機の戦闘ボットが、アサルトライフルを斉射する。
ネオンがパーソナルシールドによる防御を強いられる中、ゼナと戦闘ボットの援護射撃が飛ぶ。
ゼナのレーザーライフルと戦闘ボットのコイルガンに、撃たれるとさすがの戦闘ボットの装甲と言えど無傷とはいかない。
別の戦闘ボットからレーザーが飛び、攻撃されるのを分かっていたゼナはすぐに防御用の戦闘ボットに隠れて難を逃れる。
ゼナと戦闘ボットのお陰で、飽和攻撃から脱したネオンは、パーソナルシールドを切ると、レーザーライフルを撃ち、脚部を破壊した戦闘ボットのメインカメラを破壊し、その奥にあるメインキャパシタを貫き、機能停止に追い込む。
一機の戦闘ボットを無力化したネオンに対し、パワードスーツ兵は一瞬動揺するが、すぐに持ち直し、剣を鞘に納刀し、再び向かってくるネオンに、銃撃を浴びせる。
ネオンの援護に向かおうとするイーディスは、戦闘ボットの間から出てきた義体兵士に気付く。
そして当然視界に捉えていたネオンだったが、戦闘ボットの銃撃で、パーソナルシールドを解けない。
暗赤色の機械翼を広げた義体兵士の右腕から、二本のバレルがせり出し、ネオンに向かって二発の弾丸が放たれる。
「っ!!」
とてつもなく嫌な予感がしたネオンは、バックステップを踏むが、音速の弾丸からは逃げきれない。
二発の弾丸はネオンのパーソナルシールドを貫き、ネオンの額を掠める。
パーソナルシールドは消失したわけではなかったが、ネオンの額から血飛沫が飛び、衝撃で仰向けに倒れる。
「ネオン!」
義体兵士は、そのままリロードし、再び照準をネオンへ向けるが、そこへゼナの援護射撃が飛ぶ。
正確無比なゼナの射撃は、義体兵士の頭部に命中するが、兵士のヘルメットはゼナのレーザーを防いだ。
戦闘ボットの銃撃によりゼナを引っ込ませた義体兵士は、今度こそネオンに照準を定める。
銃口から弾丸が放たれる瞬間、目が覚めたネオンは飛び起き、ほぼ反射的に抜いた単分子剣で、二発の弾丸を両断する。
「シールド貫通弾、油断した」
「ネオン!」
イーディスのレーザーが、義体兵士にパーソナルシールドを展開させ、ネオンへの攻撃を一時中断させる。
「戦えますか!?」
「大丈夫」
額から零れる血を拭ったネオンは立ち上がり、剣を鞘に納めて、レーザーライフルを構え直す。
「援軍は?」
「来ます」
再び天井が破壊されると、天井の残骸と共に三人の天使が舞い降り、レーザーライフルとレーザーキャノンの一撃が、パワードスーツ兵と戦闘ボットに降り注ぐ。
奇襲により、レーザーキャノンをまともに食らったパワードスーツ兵の一人がレーザーライフルの銃撃をトドメに受けて脱落し、すぐに残りの三人は天使たちに向けて撃ち返す。
四機の戦闘ボットは、奇襲の一撃は装甲で防いだので、すぐさま反撃するも、前に出たシエラのパーソナルシールドに防がれる。
そのシエラを狙った義体兵士の銃撃は、前に出てきたネオンの銃剣の切りつけにより、中断されるも、そのままネオンに放たれる。
三度も見た弾丸を、ネオンは馬鹿にするなとばかりに弾道を見切って避け、銃剣の突きを放つ。
ネオンに見切られることを想定していたのか、義体兵士は、暗赤色の翼で突きを受け止める。
ライフルを引き、再度放った突きを今度は左腕から伸ばした近接ブレードで受け止める。
「「っ!!」」
ネオンの突きは、驟雨の如く義体兵士を襲い、義体兵士も、防ぎながらも反撃し、両者は激しく斬り合う。
その様子を観察しながら、床に上に降り立ったアレリア、シエラ、キアラの三人は、機械翼を収納し、それぞれパワードスーツ兵と戦闘ボットに襲いかかる。
『エンジェル3は私とパワードスーツ兵へ、デーモン2はドラゴン2と戦闘ボットへ』
『『『了解』』』
アレリアの指示を聞いたシエラとアレリアは、さらに一人のパワードスーツ兵を仕留めたリオンを援護しながら、パワードスーツ兵へレーザーライフルを撃つ。
『ぐっ!、ブロンズランクの傭兵団ではないのか!?、ここまで強いとは聞いてないぞ!』
『隊長、ここのままでは!?』
『狼狽えるな、援軍要請は?』
『既に要請済みです』
『ならば後ろの連中にも援護させろ、パワードスーツやコンバットスーツを着ていないコイツらならば、無意味ではない、あの剣士は絶対に近づけるな、緊密に連携し、隙を見せるな』
パワードスーツ兵たちの通信を傍受したアレリアは、パワードスーツ兵たちの後ろにいる戦闘員たちからの銃撃を、パーソナルシールドで防ぎつつ、状況を分析する。
(こちらの制圧を諦め、援軍を待つ方針に切り替えた。援軍を逐次投入されるのは厄介、物量ではあちらが勝る、何かしらの有効打を打たなければ負ける)
援軍がパワードスーツ兵部隊ならまだいいが、マグラートリアクターを積んだ戦闘ボット部隊を投入されると、非常に厄介だ。
機械は躊躇がないので、相手にするのは骨が折れる。
(彼女たちは船を捨てられないから、逃げる選択肢もなし、そもそも逃げ込める場所もリュケイオンか、ドラクロワしかない)
今こちらの船の居場所を露見させるわけにはいかない、ヤツらに聖女奪還作戦を知られるリスクは犯せないのだ。
『アレリア、提案があります』
『この通信回線は、機械知性のエレンか』
『はい、戦闘ボットにウイルスを仕掛けるので支援を要請します』
『具体的には?』
『あの戦闘ボットに対応した攻勢ウイルスをお渡ししますので、戦闘ボットに接近し、ウイルスを感染させて下さい、ダウンロード時間は60秒ほどです』
『あの戦闘ボット相手に60秒?、面白いことを言う』
『不可能ですか?』
『そんなことない、私は面白いと言っただけ、そのウイルスは他の戦闘ボットに伝染する?』
『します、あの戦闘ボットは並列化を行なっていますので、一台が感染すればその感染は広がります』
『その提案を受ける』
『よろしくお願いします』
送られてきた攻勢ウイルスのデータを確認したアレリアは、内心笑う。
『こんな凶悪なウイルスをこの短時間で作るとは、やるね』
『私が奉仕する主は電子戦のスペシャリストですから』
『なるほど』
アレリアはアレンの評価を上げつつ、仲間たちに同期通信を行なうのだった。




