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三十七話 予想外の事態

ビークルから降りたネオン、ゼナ、リオンの三人は目標の建物を見上げる。


「現在工事中のビルですが、工事は休止中です。建物内の地図は渡しておきますが、工事前のですのであまり宛にせずにお願いします」


エレンは、事前に手に入れたビルの地図を三人に送る。


「ありがとう、エレン」

「いえ、大したことはしていません、お気をつけて」


「ん、リオン、ゼナ、敵施設への突入経験は?」

「ないな」

「テロリストの基地を制圧した事ならあるでござる」


「それなら私が前衛を張るから、ゼナは真ん中で最後尾がリオン」

「分かった」

「承知」


「私の命令に従うこと、目的は本を取り戻すこと、その障害になるものは退ける、でも派手な破壊行為や殺人はなるべく避けること」


ネオンは目的である本の表紙の情報を二人に共有する。


「完全武装の陸戦装備じゃないからセーフティに行くから、そこは念頭において」

「今回はお前に従うよ」

「うむ」


大まかに作戦を決めた三人は、工事が休止中のビルに入っていく。


ビル内は、薄暗かったのでネオンとゼナは、レーザー銃に装着されたライトを点灯させる。


「しらみ潰しに探すのか?」

「そんな面倒はしない、人の痕跡を探す」


ネオンがライトで足元を照らすと、薄らと足跡が残っていた。


「足跡」

「ネオン、窃盗団は四人でござるよな?」

「ん、そのはず」


「この足跡は、七つある、つまりここには七人の人間がいることになる」

「そうみたい」


しゃがみ込んだネオンは、足跡をつぶさに観察する。


「訓練された人間の足跡が三つ、他四つは素人」

「足跡だけでそんなことも分かるのか?」


「分かる」

「訓練された人間の歩きには規則性があるのでござる」


「待てよ、そうなるとこの先には窃盗団だけじゃなくて訓練された謎の三人組もいるわけだ」

「ネオン」

「大丈夫、たとえ特殊部隊が相手でも同数なら何とかなる」


「信じるぞ、その言葉」


ネオンとリオンの白兵戦能力を真近で見たわけではないので、少々不安に思うゼナがジーベックに侵入した傭兵部隊を二人で撃破した実績を信用することにした。


レーザー銃の引き金をいつでも引けるように準備するゼナを、他所にネオンは、至って普通に足跡を追って歩いていた。


数分ほど、足跡を追ったところで足跡が一つの部屋に繋がっているのが見えた。


ハンドサインで停止を指示したネオンは、最大限警戒して、部屋の中を覗く。


「ーーー」


中の様子を確認したネオンは、合図を送り、三人は部屋の中に入る。


数歩進んだところで、床に倒れる四人の人間と、床に散らばる数十冊の本が目に入る。


再びハンドサインを送り、二人を停止させたネオンは周囲を観察する。


「ゼナ、()()には近付かないで」

「トラップか?」

「可能性はある」


「ネオン、あそこに本が」

「ん」


目的の本を見つけたリオンの報告に頷きつつ、ネオンは死体に近づきたくないので、判断に迷う。


「ネオン、火薬の匂いはせぬ、本を回収し、早急に撤収した方がいいでござる」

「ん、賛成」


レーザー銃をホルダーに入れたネオンが、本を取ろうとしゃがみ込んだ瞬間、銃声が響く。


ネオンの頭を狙った銃弾は、前に出たリオンの居合斬りにより両断される。


さらに連続して銃声が響き、ネオンは本を回収しながら、リオンと一緒に物陰に飛び込む。


「いきなり撃ってきた」

「某とネオンに気配を察知させないと只者ではござらんな」


別の物陰に隠れているゼナに、無事かどうか確認すると、彼女は問題ないとハンドサインで答えた。


ゼナは牽制としてレーザー銃を撃ち返すが、敵も同じように物陰に隠れているのでそう簡単には当たらない。


ネオンは、レーザー銃を牽制として放ちながら、物陰に滑り込みリオンと一緒にゼナと合流する。


「目的は達したから逃げる」

「大賛成だが、敵さんに逃がす気はなさそうだ」

「何やら運が悪かったようでござるな」


「敵の目的がなんであろうとどうでもいい、ひとまず逃げるのが最優先。アレン、聞こえる?」

『聞こえてるぞ、銃声が聞こえた気がするんだが、大丈夫か?』


「絶賛襲われてる最中、何とかして戻るからいつでも出発できるようにしといて」

『分かった、気をつけろよ』

「ん」


通信を切ったネオンは、銃声が止んでいることに気付く。


「銃声が止んだ?、弾切れか?」

「いや、こっちが動くのを待ってるんだと思う。戦い慣れてる」


無駄な弾を撃たないのは、継続的な戦闘をする上で必須の技術だ、故にネオンは相手が戦い慣れてると判断した。


「リオン、ゼナ、私が囮になるから先に行って」

「おう」

「承知」


物陰から飛び出したネオンへ、待ち構えていた鉛玉が降り注ぐが、鞘から抜かれた単分子剣の腹で、自分に当たりそうな弾丸だけを盾のように受ける。


後退しながら銃弾を捌くネオンは、頃合いを見計らって、部屋の出入り口に飛び込む。


剣を鞘に納めながら、薄暗い通路を駆け抜けるネオンは、背後から追ってくる気配に、レーザー銃を撃ち込みながら、何とかビルから脱出する。


「ネオン!」


既にエンジンを始動させていたビークルに飛び乗る。


ネオンが乗ったことを確認したエレンは、すぐさまビークルを発車させる。


「怪我は?」

「ない」

「一体何があった?」

「いきなり謎の三人組に襲われた」


ネオンは、レーザー銃をホルダーに戻しながら答える。


「本を窃盗団から取り返しに行っただけで?」

「その窃盗団は一人残らず死んでた」

「えぇ?」


ただ窃盗団から盗まれた本を取り返すだけのはずが、どうしてそんなことになっているのか、アレンには理解できなかった。


「本は?」

「回収した」

「ならいいか」


「良くねえよ!、追ってきてるぞ!」


ゼナの言葉に振り向くと、こちらへ猛スピードで向かってくるビークルが見えた。


「ネオン?」

「私は何もしてない」


銃声が響き、何発かの鉛玉がビークルのリアバンパーに穴を開ける。


「ちっ、街中で撃ってくるのかよ、アレン!、絶対に頭を上げるんじゃねえぞ!」

「言われなくても!」


アレンは弾に当たらないように頭を抱えて、身を丸める。


「エレン、振り切れる?」

「やってみますが、可能性は高くありません」


運転手のエレンは、ボディのスペックをフル活用して、ペダルを踏み、ハンドルを切る。


「ビークルの性能ではあちらの方が上です、逃げ続けることは可能ですが、いつかは追いつかれてしまいます」

「クソ、あの野郎もっと良い車を持っとけよな!」


「ネオン、こちらからの攻撃は?」

「あのビークル、高性能なだけじゃない、ボディを耐熱加工処理してるからこのレーザー銃が効きにくい」


「軍用車レベルだぞ、それは!」

「ゼナ、落ち着いて、効きにくいだけで効かないわけじゃない」


後部座席に移動したネオンは、レーザー銃のリミッターを解除する。


「エレン、五秒でいい、直進して」

「合図を下さい」

「…今!」


ネオンの指示通りにビークルを直進させ、ネオンはレーザー銃のドットサイトに、敵の乗るビークルを捉える。


引き金を引くと、大口径のレーザーが敵の乗るビークルの右前部を貫き、制御を失ったビークルは、近くの停車していたビークルに突っ込んだ。


「見事!」

「大砲かよ!?」


「アレンのお陰」

「それほどでも」


アレンとグータッチを交わしたネオンはオーバヒートしたレーザー銃をホルダーに収めた。


「でも終わりじゃない」

「追加の追手だ、ビークル二台!」


現れた二台のビークルのルーフが開き、アサルトライフルを構えた人間が現れる。


その銃口はアレンたちが乗るビークルに向いていた。


リオンが眉を顰め、ゼナが苦虫を嚙み潰した瞬間、一台のビークルのリアバンパーが吹き飛び、制御不能になり、横転する。


横転するビークルを躱すように、一台の黒いビークルが現れ、その開かれたルーフから見覚えのある人物が、携帯型レーザーキャノンを構えていた。


「イーディス!?」


リオンの声に反応したかのように、フードを被るサイバーパンクシスターは、携帯型レーザーキャノンの引き金を引き、最後の一台のビークルは先ほど二台と同じ運命を辿った。


手早く片付けたサイバーパンクシスターは、こちらのビークルと並走し、ついてこいとハンドサインで示し、ビークルの中に戻った。


「アレン様、どうされますか?」

「…ついて行こう、何に巻き込まれたのか、教えてもらおう」


アレンの判断を受け取り、エレンは前方に躍り出たビークルについて行った。



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