火刑台のカテリーナ(2)
絶望がカテリーナの心を蝕む。
(何一つ復讐できないまま死ぬなんて……。どうして、今まで気付けなかったの?)
マリアはいつも聖女の如くふるまった。
そう。すべて見せかけだ。
誰もが魅了される作り笑顔。
三文芝居のような見栄え重視の善行。
悩み苦しむ者たちの思考や言動を否定せず、共感し、慰め、希望を与えるが、それも演技だ。
それらは耳ざわり良く薄っぺらな言葉で彩られていた。
そうやって信頼を得てから、時に厳しく、時に優しく接して相手の心を操る。
自分の言いなりになる信者を得るために。
神の教えを金儲けに利用しただけでなく、マリア自身を信仰の対象にすり替えたのだ。
信者は人生すべてを支配され、最期は全財産と命を奪われる。
(私も、その一人よ)
マリアのせいで、今までどれほどの人々が破滅したのか?
マリアが生きている限り、被害者は増え続ける。
悪魔の所業だ。
悪魔が人間に化けた姿がマリアなのか、人間のマリアが悪魔になったのか……?
カテリーナはマリアの姿を目に焼き付け、誓った。
我が魂の存在する限り、必ず復讐すると。
そして、己の魂と体からすべての力を振り絞り、声なき声で絶叫した。
「誰でもいい。私に力を貸して! マリアに復讐する力を!!!」
そう叫んだ瞬間、目を開けていられないほど白くまばゆい光に視界が満たされ、体の感覚が消えた。
(何が起きているの?!)
とまどうカテリーナを優しく包み込むように、白光は次々と金色の光の欠片に変化する。
そして、この無音の白い空間の四方八方に満ちあふれ、霧散した……
と思ったが、新たに金色の光が生まれては霧散する。
その繰り返しだ。
煌めく欠片は勢い良く回転しながら、どこかへ流れ込んでいくようにも見える。
「私でよろしければ、お手伝いいたします」
光に呼応するように響く女性の声。
全方位から聞こえたその声を、カテリーナは耳ではなく全身で聞いた気がした。
己の体を構成する細胞の一つ一つにまで共振する感覚。
それは、眩しすぎる白と金の光が消え、この何もない白い空間に静寂が訪れるまで続いた。




