↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ウィーンの歌姫は来世の自分と共謀して邪教祖を断罪する ~魂の管理人 人生を書き直す1789年の復讐~  作者: チャイ猫


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

20/33

違和感


 ミリヤムはカテリーナと同じ声楽教師に師事していた。

 同い年の彼女は常にカテリーナをライバル視し、会う度に意地悪な言動をする。一生忘れられない酷い言葉を投げつけられたこともある。

 それに飽き足らず、カテリーナの髪型や持ち物を真似るなど、何でも奪いたがった。


「あの声楽教師とミリヤム、二人目の婚約者にも、二度と関わりたくないわ」


「フェリクスさんが死ななければ大丈夫。あの教師に習わなければミリヤムも避けられるし」


「そうね。そうなれば、歌の勉強を続けられるわね」

 

 声楽教師の間違った指導のせいで、カテリーナの喉は故障した。かすれた歌声しか出せなくなり、歌を学ぶことを諦めたのだ。


 この出来事はカテリーナの心と体に癒えない傷を刻み、マリアにつけこまれる一因となる。



「あの教師は最低最悪でしたねぇ。教える能力がないし、生徒を使用人みたいに扱って……。私も声楽を学んでいたので教師の良し悪しはわかりますよ」


「まあ。あなたも?」


 ライセとの意外な共通点だ。  


「私は生まれ変わっても歌を学ぶのね」


「はい。まあ、いろいろあって苦労しましたがねぇ……はぁ」


「もしかして、あなたもあの二人に?」


「ええ。声楽教師とミリヤムの来世の人物にね。あの二人はこの時代の人格の続きで生まれ変わり、似た環境で育ったせいか同じような性格になりました。

 普通はもう少しマシな人間になるものですが……。来世まで邪魔されるほどの悪縁ですよぉ? 

 だからキッパリと縁を切りましょうね。来世の私のためにも!」


 くわっと噛みつくように言い、ライセは「今度こそ、えんがちょ!」と、右手の人差し指と中指をクロスするように重ねた。


 その指は十字架を模している。

 神はあなたと共にいるという意味を持ち「成功を祈る」「がんばって」などの意味で、キリスト教徒は使うのだが……


「ライセさん。はげましてくれるの?」


「え? ああ……これは、日本では縁切りを意味します。

 ちなみに私は生前も今も、特定の信仰を持ちません……。

 宗教なんて、絶対に、は・い・ら・な・い! 

 他人が作った宗教に入るくらいなら、私が教祖になってやる!! 信者は一人もいらんけど」


 軽やかな喋り声がドスのきいた低音に変わった。

 物凄く私怨が混じっている。


(未来では信仰を持たなくても許されるのね。でも、何を心の支えに生きているのかしら?)


 きっと “推し活” だろう。 



「ライセさんも大変だったのね。よかったら話を聞くわ」


「おやまぁ。慰めてくださると?」


「話せば気持ちが楽になるもの」


「ありがとうございます。それにしても、あなたって本当にお人好し。そういうところですよねぇ、ろくでもない連中に食いものにされる一因は……私もそうだったわぁ」


 要約すると “優しくする相手は選ぶべき” ということか?

 カテリーナを哀れむ言いぐさだが、ねぎらってもらえた嬉しさが言外に滲み出ている。




 ふと、さきほど芽生えた違和感を思い出した。

 

 心がざわつく感覚。

 今ならそれを言語化できる気がする。


「……ねえ。今まで私の人生に何が起きたかを、あなたは全部知っているのよね?」


「はい。管理人になると、この魂Cが内包するすべての小さな魂Dたちの記憶を共有できるので。すべての経験と、そこから得た感情や知見もリアルに感じ取れます。同調すれば五感も共有できますし」


 それはつまり……

 今この瞬間も、カテリーナが思っていることがライセに筒抜けということか?!


 違和感の正体は、これだ。


「もしかして、今私が何を考えているか……わかるの?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。