お得なお試しプラン
「そろそろ、お考えがまとまった頃かと……。で、どうされます? 復讐しますかぁ? しませんかぁ?」
「復讐したいけれど……」
現状すらろくに把握できていない。さらに酷い状況になっても困る。
「じゃあ、とりあえず一か所だけ書き直してみます?」
「お試しプランとやらね?」
「はい。いきなり本番は不安でしょ? 予習や練習が必要ですよ。解説付きで、お試しも本番も手厚くサポートいたします。あ、でも、私の職務上許される範囲で」
「そうなのね。それはそうと……人生の書き直しは、途中でやめられるの?」
「いいえ。ノンストップで最期まで突っ走りますよ。だからお試し制度があるのです」
今の状況が夢か現実か、お試し後ならわかるかもしれない。
「というわけで、今ならお得なお試しセットがご用意できます……って、通販か?!」
まるで人が隣に立っているかのように、ライセは誰かの胸をはたくしぐさをした。
何が面白いのかわからないが、ひとりで笑っている。
「本当に、試した後で決めて良いのね?」
「はい。人生のなるべく最初の頃の小さな出来事で、何か心残りがありませんか? ああすればよかったなぁって後悔したこととか」
急にそんなことを言われても思いつかない。
「真っ先に思い浮かんだことが良いかも? 他人の人生計画書に支障がないなら、何でもオッケーです」
ふと、祖母の顔が浮かんだ。
「おばあさまを助けたいわ」
カテリーナが7歳の時、祖母アリーチェは階段を踏みはずして足に大怪我を負った。
それがきっかけで病気がちになったが、カテリーナは何故か自分のせいだと罪悪感を抱いている。
「貴重な練習を他人のために使う人は初めてです」
ほんの数秒、ライセは目をつぶった。
「……うん。大丈夫。誰の人生計画にも支障ないそうです。では、7歳のその日に戻りましょう。一日限定のお試しですが」
「今、誰に尋ねたの? 私はまだ何も教えていないわ」
「管理人同士のネットワーク……ええっと、つながりがありましてね。あなたと関わる人の情報を問い合わせると、上の存在と相手側の管理人が許可する範囲で情報をもらえるのですよぉ」
「便利ね。手紙のやりとりだと何日もかかるのに」
「あなたが5歳から13歳まで、ヴェネツィア共和国で父方の祖母に育てられたことも知っています」
(もしかして、魂の管理人は……ライセは神の御使いのような存在なの?)
それにしては俗物すぎるが。
「お試しを、するわ」
どのみち、もう失うものは何もない。
「私もご一緒します。あなたにだけ私が見えて話せるようにしますので」
「わかったわ」
ふと我に返ったカテリーナは、本当にこれは現実かと改めて自問する。
死に際に見る夢なら、なんとイカレた妄想か!
(もしそうなら……いつか目覚める時まで、この妄想を受け入れよう)
「では、始めましょう。今から私が3つ数えます。数え終わったら目を開けてくださいね」
覚悟を決めて目を瞑る。
「さあ、7歳のあなたの世界に戻ります。1……2……3!」




