“推し” とは???
信じられない不思議な話に思考が占拠されて、カテリーナの心と頭は煮詰まっている。
「ひとまず、書き直すかどうかは置いといて……。ちょっと休憩しません? 気分転換に何かおしゃべりしましょうよ」
「そうね。どうせなら楽しい話がいいわ」
「楽しい話ねぇ……」
何かひらめいたのか、ライセはポンと手をたたいた。
「ここだけの話ですが、あなたの生きた時代に私の “推し” がいるのですよ♪
推しの実在を確認できるって、本当に素晴らしい! オタク冥利に尽きますねぇ。このお仕事で唯一の役得。
文化芸術に全振りした人生を過ごした私には、超ご褒美なのですぅ。くふふっ」
カテリーナの知らない言葉が出てきた。
「“おし” とは?」
「あなただって、素晴らしい声を持つ歌手が歌曲を見事に歌いあげたら応援しちゃうでしょ?
パトロンになったり、弟子入りしたり、演奏会のポスターを保存用、閲覧用、布教用に三枚ゲットして友人に布教したり、劇場に通いつめたり、
ついには同人誌まで出しちゃったり!! 熱狂的に推すでしょ?!」
ライセは一気にまくしたてた。
先ほどまでの話し方とは明らかに熱量が違うし、圧が凄い。
「そこまでは、しないけど……。ひいきする相手を “推し” と言うのね?」
「そうです。そして、その応援活動を “推し活” といいます」
「おしかつ」
「そう。推し活!」
未来の言葉は興味深い。
(嘘や演技ではなさそうね。でも……変な人!)
瞳をキラキラ輝かせて熱い想いを語るライセに、カテリーナはほんの少しだが親しみを感じた。




