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五丈原にて諸葛亮を救い、その義子となる  作者: ほしかわ さとる
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面聖、皓を審る(下)

面聖、皓を審る(下)

満殿の喊殺の声中、陳祗は班中に立ち、口元がほとんど察せぬほど微かに上がった。先ほどの「大義滅親」の一幕は、竟然と満朝を瞒し通した。黄皓が倒れれば、通敵の罪はことごとくこの閹竖に圧し掛かり、この「清流忠直の侍中」は、かえって陛下の倚重をさらに得る。瞒天過海、竟然と成し遂げたのだ。彼の面上はなお痛心疾首の体だが、眸の底にはすでに得意の微光が漾いていた。


殿門のあたりが突然静まった。


諸葛雲が一身の風塵をまとい、甲冑には黄皓の屋敷を査抄した灰燼まで沾いつけて、大股に踏み入ってきた。彼女の手には二つの油布封囊が托され、その目光は刃の如く、まっすぐに陳祗の顔に钉ささっている。先ほどまで殿上にいなかった彼女が、この時、満室の肅殺を帯びて、陳祗の前に立った。


「臣、黄皓の屋敷を査抄する令を奉じ、その密室の暗格の中より、この物を搜得いたしました」


彼女は第一の封囊を龍案の上に置き、声は鉄の如く冷たかった。


「陳侍中、この紙樣、お分かりですか」


陳祗のその得意はまだ口元に凝っていたが、案上に広げられた密信を見た瞬間、顔色が「唰」と白くなった。その紙は、竟然と玄龍密令と同源、皆、禁中より出たものだった。


諸葛雲は一封ずつ広げ、朗々と読み上げた。


「断糧、圧械、改駅報、惑後主。この八字、陳侍中は熟しておられましょう。『孔明が死するを待ち、成都に主なくば、城を献じて大魏に報いん』。落款は陳祗の親筆、黄皓の副署」


彼女は十二封をことごとく案の中央へ押し出した。


「十二封、封封皆、侍中の手になるもの。紙樣はあの玄龍密令と同源、皆、禁中より出でおります。陳侍中、先ほどあれほど忠直を装っておられたが、この十二封が黄皓の暗格から、自ら跳び出してくるとは、思われましたか」


「黄皓の屋敷だけではございませぬ」


彼女は第二の封囊も龍案の上に置き、掀げた。


「臣の辖する白毦暗探は、すでに成都にて玄龍幇主・姚顯と某侍中との往来書函数封を截獲しております」


彼女は一封を抽き出して案の上に広げ、紙樣を照らした。


「この紙、先の十二封と同じく禁中より出で、あの無字の玄龍密令とも同源。書函中の『弘正を截殺せよ』の四字は、まさに姚顯が令を受けて行刺したことと合い、その『某侍中』の落款の筆跡は、この十二封の中の陳祗の親筆と――」


彼女は二紙を並べて一圧した。


「分毫も違わぬ」


――満殿死寂。先ほどまで「黄皓を車裂に」と叫んでいた陳祗は、この時、唇歯が震え、半句も継げない。


私は先に、陳祗こそが黄皓の上の「上家」ではないかと疑っていたが、確たる証がなく、もとより殿上で妄りに通敵の名を加える勇気はなかった。この時、黄皓の密室の十二封、白毦暗探が截獲した姚顯と侍中の書函、さらに玄龍密令の同紙を証として――三つの線索が、皆、陳祗一人を指している。私はついに確信した。瞒天過海の者こそ、彼だ。


私は勢いに乗じて前へ出で、最後の一物を抖した。


「其三、司馬懿麾下の軍令信物、司馬銅符一枚。密使が魏営より持ち帰ったもので、供述と互いに印証いたします。而して密使の供述に明言あり。調遣の令は、侍中陳祗が主使せりと。雲将軍が搜得したこの十二封、密使の親供のこの一条、桩桩件件、皆、陳祗を主謀と指し、黄皓は、ただ彼の手にある副署の印に過ぎぬ」


私は顔を上げ、先ほど黄皓の誅を請うた数名の近臣をゆっくりと掃視し、最後に陳祗の顔に落とした。


「断糧の計は、運糧の吏員皆が証人となり得る。圧械の策は、武庫の主者皆が令を受けたことがある。改駅報の一件は、偽報を伝えた駅卒がなお押中にある。各位が臣を信じられぬなら、これらの人証を殿上に呼んで対質されよ。陳祗が黄皓を経て下したこの三計、計計すでに実処に落ちておる」


陳祗は万に一つも、私と雲将軍が前後して広げた鉄証が、竟然と一箭で自分を射貫くとは思わなかった。彼は満殿の義憤を借りて黄皓を除けば、独り善く身を保ち、あの「忠直侍中」の位に稳坐できると思っていた。だが密使が網に落ちたその刻から、彼と黄皓は、同じく網の中の人であることを知らなかった。


黄皓はすでに待宰の囚の如くなっていたが、これを聞いて猛然と頭を上げ、その眼に一筋の狠い光が爆ぜた。彼は悟った。生き延びるには、陳祗をこの鍋の底へ引きずり込むしかない。彼は忽ち陳祗を指し、嘶るような声で大笑した。


「よし。よきかな『大義滅親』の陳侍中。卿は先ほど誰よりも声高に叫んでおったが、どうだ、今、鉄証の前に、とぼけるつもりか。あの密信は卿の親筆、私印は卿が私に使わせたもの、死士は卿が主使したもの。この黄皓、いくら大胆でも、独りで通敵売国はせぬ。成都を献じようと言い出したのも、卿、陳祗が先に口を開いたのだ」


陳祗は怒りに全身を震わせ、彼を指して罵った。


「放屁。その私印は分明に卿が盗用し、密信は卿が私の筆跡を仿造して偽造し、私に罪を着せ、通敵の功を独り占めしようとしたのだ。陛下、明鑑を。臣は冤罪にございます」


「盗用」


黄皓は冷笑した。


「签发簿の『死字三号』には、分明に卿と私が上月十五に親しく発したと記されておる。この帳、卿は否認できまい。日頃は私を犬のように使い、事が露わになれば一推しに二清めか」


「この閹賊。卿が办差不力で馬脚を露わさねば、密使が截られようか。今になって私を咬むとは」


陳祗は目を赤くして急いだ。


「あの『魏のために效死せん』の信、字字は卿の口調、私と何の関わりがあろう」


「私の口調」


黄皓はほとんど撲りかかった。


「『成都を克した後、万戸に封賞』と言い出したのは卿だ、許した願も卿が開いた値だ。私はただ卿の走り使いをしたまで――」


二人は一言一言と、竟然と御前で撕扯り始めた。一人は相手が主謀と言い、一人は相手が偽造と言い、あの「通敵献城」の勾当を、原原本と喋り尽くした。満殿の大臣たちは目を瞠った。先ほどまで同仇敵愾で黄皓を殺そうとしていた衆人が、この時初めて驚覚した。なるほど、この二人は俱に網の中の魚、どちらもどちらより清くはない。


劉禅はついに拍案して起った。


「啪」の一声、案上の簡牘が震えて跳ねた。この、世に暗弱と讥られる後主が、この時、眸に稀に見る鋭い光を燃やしていた。


「もうよい」


彼は密使の供述の最終頁を拾い上げ、二人の前に抖開した。


「断糧、圧械、改駅報。これは朕の糧を断ち、朕の兵を弱め、朕の目を蒙るものだ。死士を派して弘正を截殺し、宮中の私印が敵の証囊に落ちた。これは朕の使を殺し、敵国に通じたものだ。孔明が死すれば成都を献じて大魏に報いん。この一条、陳祗の親筆、黄皓の副署。卿ら二人、一人は主謀、一人は副使、今になってもなお互いに攀咬し、推卸し合うか」


劉禅は一字一顿、声は恐ろしく冷たかった。


「卿らはこれを赤心と呼ぶか。これは通敵売国、謀るは朕の江山だ」


この一句は、驚雷の如く殿上に炸裂した。


先ほどまで黄皓を殺せと叫んでいた衆臣は、この時斉しく冷気を吸い、顔色はあの二人よりも白かった。彼らは先ほど、この逆賊のために勢いを助け、危うく陳祗に銃として使われかけたのだ。数名が慌てて列を出、撲通と跪いた。


「陛下、明鑑を。臣ら……臣らは蒙蔽されたのでございます、決して包庇の心はございませぬ。陛下、罪を治されよ」


先ほどの老臣は長く嘆息し、袖を払って拜した。


「わしも老いぼれた。陳祗、黄皓、俱に逆賊、罪は赦されず」


――悪役は天衣無縫と思い、近臣は積威に流され、だが鉄証が一環一環と広げられ、陳祗のあの「忠直」の仮面が衆目の前で撕かれ、二人が自ら通敵の勾当を人尽く知るほどに吵げば、皆の目が初めて真に開かれた。この一刻の集団の冷気を吸う音は、いかなる喝罵よりも刺すようだった。


劉禅は跪いて震える二人を見、その眼に極めて複雑な色が一瞬走った。失望あり、痛惜あり、より多くは帝王の清醒だった。彼はゆっくりと龍椅に坐り直し、声を淡くした。


「多年侍奉の份を念じ、朕は卿らを殺さぬ」


黄皓、陳祗は猛然と頭を上げ、その眼に一抹の僥倖が掠めた。


「だが卿らの爪牙は、一つも残せぬ」


劉禅は手を挙げ、側に侍る近臣に命じた。


「黄皓は冷宮の偏殿に打ち込み、内外の交通を禁絶し、朕の旨なくば、半歩も出ることを許さぬ。侍中陳祗は黄皓と勾連し、ひそかに大魏と通じたれば、直ちに下獄し、同党を厳勘せよ。卿ら二人が互いに攀咬した那些の供述、ちょうど一つ一つ核験し、どちらが先に同党を吐くか見よ。宮中の内侍はことごとく入れ替え、朕の親信の者に掌らせよ。今日殿上で黄皓のために緩頬し、また危うく陳祗に銃として使われかけた者は、各々俸禄半年を奪い、以て效に儆めよ。次にまた忠奸を弁えねば、俸禄だけでは済まぬぞ」


黄皓は瘫軟して地に倒れ、二人の侍衛に生生と引きずり下ろされた。かつて呼風喚雨した宦官の頭領、一朝にして勢を失う。殿門に至り、彼はなお不甘の様子で、猛然と振り返り、殿上のあの一夜灯り続ける宮灯を一瞥した。それは彼が宮闈に数十年盤踞し、ついに手の届かぬ光だった。灯影の中、彼の影は長く引き伸ばされ、脊骨を抜かれた蛇の如く、もはや往日の風見鶏の灵动もない。


劉禅は続いて新しい簡を広げ、筆を執って疾く書き、連続四道の旨を下した。


一、糧署、武庫に命じ、直ちに全速で糧草軍械を啓運せよ。敢えて遅延する者は、軍法を以て論ず。


二、陳祗、黄皓の党羽を厳辦せよ。涉事の官員は一律に罷免査辦し、案情重大なる者は下獄せよ。


三、使を遣わして節を持し五丈原に赴き、三軍を慰労し、丞相、軍師及び諸将を褒奨せよ。


四、蜀中全境に、さらに糧草人役を徴し、全力で北伐を支援せよ。国を挙げての力をもって、関中を定めよ。


聖旨が出ると、成都の朝堂は震動した。かつて陳祗、黄皓の周りを囲み、阿諛奉承していた官員たちは、この時ことごとく頭を垂れ、脊に冷汗を沁み出し、連座を恐れた。一方、かねて黄皓に抑えられていた清流の忠臣たちは、ひそかに腰を伸ばし、その眼に光が宿った。宮門の外の暮鼓が一声一声と敲かれ、まるでこの多年濁った宮闈の積垢を、一層洗い流すかのようだった。


私は階下に立ち、側の諸葛雲と目を見交わした。彼女の甲冑にはなお黄皓の屋敷を査抄した塵灰が沾いつき、傷處はまだ痛むが、眉宇の間にはこれまでにない晴れやかさがあった。二十年の暗刃、今日ついにこの満朝に隠された暗桩を、ことごとくこの昭昭たる殿宇の下に剖き出した。


私は階下に立ち、軽く息を吐いた。


この一局は、陳祗が黄皓を経て駅報に最初の一字を動かしたその時から、すでに我らの張った網の中に入っていた。彼が糧を断てば、我らは暗糧を走らせ、彼が械を圧せば、我らは秦嶺古道を走らせ、彼が駅報を改めれば、我らはその密使を截り、彼が死士を派せば、かえってその催命の縄を、自ら陛下の手に渡したのだ。


劉禅の目光は私に戻り、稀に見る鄭重さを見せた。


「軍師、遠路より帰還し、また雲将軍の命を救った。大功なり。前線のことは、朕すでに尽く知っている。卿らはただ放手して戦え。後方は、朕が卿らのために稳めてみせよう」


彼は言葉を切り、なお傷を帯びて側に立つ諸葛雲を見て、その語気に幾分かの長輩の温厚さを加えた。


「雲将軍、卿の義父が白毦親兵を卿に託したのは、果然として人を見誤らなかった。今日すでにこの大功を立てたれば、これからは安心して朕のために、卿の義父のために、この後方を守れ」


諸葛雲の眸光が微かに動き、拳を抱いて垂首した。


「陛下の隆恩に謝す。臣……銘記いたしております」


私は軽く身を屈め、この話の流れに乗じて進言した。


「陛下が後方を稳めると仰せられるなら、臣に一策あり。正に北伐久戦の患いを解くもの――糧にございます」


殿上の衆臣は一怔し、皆、私が糧を請うものと思った。だが私は随身のその沿途札記の巻を開き、指先でその中の一条を点した。


「蜀中の軍糧は、多くが生粟の散儲。最も怕れるは二つ。一は潮、梅雨が過ぎれば芽を生じ、潮を泛べ、虫に蛀まれ爛れる。二は遠、千里の転運、沿途の抛撒損耗、十に七八も存せぬ。前線がいかに善戦しようと、糧が断えれば、それは前功尽棄にございます」


私は顔を上げ、側の諸葛雲を見た。


「この法、臣と雲将軍が成都ですでに推敲いたしました。蜀中の軍糧を文火で焙炒し、焦黄の香ばしさに至らしめ、水分を逼り出し、虫卵を殺し、澱粉を熟透させて定型し、もはや霉変せぬようにいたします。熱いうちに木型で圧して磚と成し、陰干しに収存すれば、これが『糧磚』にございます。一つ巴掌大、水に遇えば即ち軟らかく、飢えを充たし耐え、背負い軽便、屯聚経年、散糧より十倍も勝ります。日后大軍が出征すれば、随軍には磚のみを帯び、営地に至れば一煮すれば一鍋の熟糧となり、後方に囤積すれば十年壊れず。この法こそ、真に『後方』を北伐の上に钉死する釘にございます」


諸葛雲は意を得て、微かに頷いた。


「臣、この法に依り、成都にて統籌督辦いたしたく存じます。民夫を調集し、大鉄鍋を支え、庫糧をことごとく熟化圧磚し、さらに運糧軍を以て祁山糧道に沿いて前線へ送り抵らせます」


私は少し間を置き、さらに一策を補った。


「陛下、糧は命を続け、医もまた命を続けます。軍中は従来、随軍医官のみに頼り、傷に遇えば各自が戦い、乱れ成一団。軽傷は重患へ拖し、重患は白白と命を送る者、十の中三四にございます。臣、請う、一支の『救護の制』を立てんことを。軍中より胆大心細の士を選び、臣が後世の医道を授け――分診軽重、清創止血、強心護脈、抗感染毒の法、さらに沸水にて器具を煮、手を浄め、烈酒にて創を滌ぎ汚を隔て染を防ぐことを教え、医卒、護卒に編し、各営に前営救護所を置き、陣後に転運を設け、薬材は臣が統籌配給いたします。別に三つの鉄律を立てます。其一、営中の飲水は必ず沸し、便溺には処を定め、病者は別帳に隔離し、屍身は速やかに移し遠く燔べし。瘟を未然に防ぐなり。其二、軍中にて竈を設けて烈酒を蒸留し、酒精に代えて消毒の資とせよ。この地に酒精なければ、酒を以てこれに代え、凡そ創口、器械、医者の手は、皆これにて滌ぎ浄む。其三、薬籍と傷亡冊を立て、薬材は耗を知り存を知り、傷卒は名あり数あり。傷卒が陣を下れば、先ず軽重を分かち、後に施治し、軽傷は即時に隊へ帰し、重傷は性命を廃せず。かくして三軍の傷病に託する所あり、一人倒るれども千人なお戦うを得。この『救護の制』は、糧磚と一般、皆、後方を北伐の上に钉死する釘にございます」


劉禅はこれを聞き終え、眸のその鄭重さが竟然と幾分かの亮色に化け、掌を撫して言った。


「朕は軍師が医に通じ戦に暁いとは思っていたが、まさか粮秣、救護の道までここまで钻研しておろうとは。糧磚は命を続け、医制は軍を続く。この二策は国を利し民を利し、正に北伐久戦の需めに合う」


彼は直ちに筆を執り、先ほどの糧草増徴の旨の傍らに二行を添えた。


「一、糧署に命じ、軍師の献じた『糧磚』の法に依り、即日軍糧を改制せよ。諸葛雲を以て統籌督辦と為し、民夫器具は悉くその請う所に従え。二、軍師に命じ、『救護の制』を立て、医卒、護卒を編し、前営救護所を置き、薬材は統籌配給し、三軍の傷病を一体に收治せよ」


筆を落とし、また顔を上げて私を見、その笑みには稀に少年天子の爽利さがあった。


「准めた。卿はただ前で戦え。糧磚は朕が卿のために焼き出し、救護の制は、卿が自ら立てよ」


殿を退く時、夜風が廊を穿ちて過り、彼女の散らばった鬢の髪を煽った。彼女は宮階の上に立ち止まり、振り返って殿中のあの長明の宮灯を一瞥し、ふと言った。


「軍師、先ほど殿上で、臣……竟然と不都合を覚えませなんだ。二十年ぶりに初めて、独りで扛がずに済みました」


私は外袍を解き、軽く彼女の肩に掛け、その傷を遮った。


「卿はもとより独りで扛ぐ必要などない。これからのこの北伐の一路、私が卿と肩を並べれば、それでよい」


彼女は手を伸ばして受け取り、指先が無意識に私の手背を擦り、ふと一顫し、何かに焼かれたように縮めた。私を見上げたその一瞬、頬に一点の薄紅が飛び、また慌てて伏せた。その神色は、彼女自身もたった今何かに気づいて、ただ認めたくない、あるいは認めるのが怖い、というようだった。


私はふと一怔し、心臓が一つ跳ね、竟然と深く考えるのが怖かった。彼女の口元はすでに微かに上がり、その笑みは傷薬よりも効いた。私はふと悟った。その笑みには、劫後余生の釈然だけでなく、女子が人に丁寧に護られて初めて、自らも気づかずに漾き出す、あの亮晶晶とした歓喜があるのだと。


その知らせが五丈原に届いた日――

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