寝台の側で脈を診る(下)
寝台の側で脈を診る(下)
蒋琬、費禕。この二人こそ、諸葛亮が生前に選んだ二代の後継者だ。
私は、諸葛亮がこのような時になお、まず案じるのが蜀漢の後を託す人々であることに、思いがけなかった。
「蒋公琰、費文偉の二名は、いずれも丞相が選んだ者。執政の折には遺命を謹んで奉じ、民を養い休息させ、蜀中に十年の安定を保ちました。」私は直言した。「ただ残念なことに、二人とも丞相の北伐開拓の志はなく、ただ守成を求めるのみでした。」
「守成……」諸葛亮は目を閉じ、一声長く嘆息した。「乱世の中、進まざれば退く。守成のみで、いかほど保てよう。」
「保てはしません。」私は直言した。「蒋琬は早世し、費禕はのち魏の降人に刺されます。その後、大将軍・姜維が兵権を執り、丞相の遺志を継ぎ、九たび中原を伐ちます。」
姜維の名が出ると、私は諸葛亮の目の奥に微かな動きを見た。
姜維、字は伯約。
天水の麒麟児、文武双全。諸葛亮が自ら収め、自ら育てた後継者であり、また彼の心中、軍事上の真の衣鉢だ。
「伯約……」諸葛亮は低く一遍復唱し、その口調には期するところがあった。「彼はいかがか。」
「姜伯約の一生は、丞相の教えを謹んで守り、忠心二心なく、死すまで変わりませんでした。」私の口調は丁重だった。「彼は丞相の北伐の志を完うするため、国の挙げての全力を傾け、連年にわたり征戦しました。ですが蜀漢の国力は微弱で、曹魏とは懸隔し、加えて朝中の宦官が政を乱し、後主は暗弱。ついに孤木支え難しとなりました。」
「後主……」諸葛亮の眉がきつく寄り、その口調には隠しきれぬ憂いの色があった。「禅児は……本当に暗弱無能なのか。」
劉禅、先主の子、蜀漢の後主。
諸葛亮は『出師の表』の中で繰り返し「賢臣に親しみ、小人を遠ざく」と叮嚀に、千度も万度も囑した。それでもなお、歴史の軌跡を遮ることはできなかった。
私はしばし沈黙し、責め立てず、ただ淡々と言った。「後主は、大過なく、また大志なし。蜀中に偏安し、進取を思わず、宦官・黄皓を寵愛し、賢臣を疎んじました。朝堂の上では奸佞が政を執り、朝外では伯約が連年征戦し、国力尽き、百姓は困苦しました。」
「ついには。」諸葛亮の声に、すでに一筋の察し難い震えがあった。
私は目を閉じ、再び開いた時、その口調は平静だが、一語一語が刃のようだった。
「ついに、魏の将・鄧艾が陰平を偷渡し、成都を奇襲します。兵が城下に臨む時、後主は戦わずして降り、蜀漢は滅びます。」
……
帳の中、死の静寂。
私の言葉が落ちると、帳中は灯花の弾ける音さえ聞こえるほど静かだった。諸葛亮は動かず、ただ、ずっと清らかだったその両眼が、何かに激しく深水へ押し込まれたようだった。
私は彼が呆然と座るのを見た。清癯な顔に何の表情もない。だが、そのずっと明るかった眼が、この時一点ずつ黯淡としていき、あたかもすべての光が瞬時に抜き取られたかのようだった。
先帝は半生顛沛し、蜀漢の基業を創った。
彼は二十七歳で山を出で、嘔心瀝血、鞠躬尽瘁した。
五たび中原を伐ち、六たび祁山に出で、食少なく事煩わしく、日夜操労した。
何のためか。
漢室を興復し、旧都に還り、天下の百姓を乱世の戦火の苦しみから免れさせるためだ。
だがついに――
国破れ、家亡び、後主降り、百姓は難に蒙る。
一生の心血、ことごとく流れに委ねる。
「咳咳咳――」
抑えきれぬ極みの咳が、猛然と爆発した。
諸葛亮は胸を押さえ、激しく咳き、身が絶えず軽く震えた。もと蒼白だった顔は、この時なお紙のように白くなった。
私は無意識に立ち上がろうとしたが、諸葛亮に手を挙げて止められた。
「無碍……」声は嗄れ、彼は軽く手を振った。口元に一筋の淡い紅の血の跡が溢れたが、少しも気にせず、ただ低く呟いた。「先帝……臣、託孤の重に背き……陛下の託に背き……蜀中の百姓に申し訳なく……」
その声の中の絶望と自責は、聞く者の喉元を締め付けた。
私は慌てて口を開き、声は急だった。「丞相! 事は人為にあり、まだ絶路ではありません!」
「まだ絶路にあらず?」諸葛亮はゆっくり目を上げ、私を見つめ、その眼には一筋の自嘲があり、なお幾分かの冷たい殺意があった。「天命この如し。我が命長からず、大軍ここに膠着し、進退窮まる。後方の朝堂は次第に乱れ、人材は凋零す……そなた、路はどこにあると言う。もしそなた、本日の言、ただの一通りの妄言、天命を妄りに論じ、軍心を惑わすものなら――我がなおそなたの命を取らねばならぬ。」
殺意、隠さず。
「路はわしがここにある!」
私は猛然と声を高くし、一字一拍、斬釘截鉄に言った。
「丞相、我が改命できると敢えて言うからには、改命の底力があろう!」
「我は千年の後から来た。天下の大勢を知り、魏蜀呉各国の虚実を知り、司馬懿の隠忍を知り、曹叡の猜忌を知り、東呉の揺らぎを知る。さらに知っている……如何にして丞相の病を医すかを!」
最後の一句が、雷鳴のように帳中に炸裂した。
諸葛亮は全身が一震し、死に縋るように私を見つめた。「そなた……我が患える病を知っているのか。」
胸が一つ跳ねた。
これが第一の関門だ。
直接に現代医学の病名を投げ出してはならず、古人の解る言葉で描かねばならぬ。
私は声を沈めて言った。「丞相の病は、一日の寒にあらず。長年累月、睡眠を奪われ、思慮過度、飲食失調、体力の透支による心血管の耗竭なり。」
「外に現れる症は、常に心悸、動けば喘ぎ、血の糸を引く淡紅の泡痰、夜中に息が詰まって覚め、食が進まず、日ごとに痩せ細る。一見、普通の虚弱に見えて、実は心脈が衰え極みに達し、身の内が甚だしく虚しているのだ。」
私は諸葛亮の瞳が微かに縮むのを見た。
これらの症状を、彼はかつて他人に細かに語ったことはなく、従軍の医官でさえ、その表のみ知り、その裏を知らぬ。この突如現れた青年が、一語で破り、分毫も違わぬ。
「従軍の医官は、如何に言う。」諸葛亮は声を沈めて問うた。
「医官は経験のみで、労れ寒けに罹ったと判じ、症状を緩める方剤をいくつか出すのみ。」私は淡々と言った。「その薬は病根に向かわず、標を治して本を治めず。丞相は今、心脈が衰え、内が虚している。後世の強心、利水、内を養うをもって身を安定させねば、古い一通りの経験方剤だけでは命を続けられぬ。」
「では、そなた、何の法がある。」諸葛亮の声に、ついに一筋の本当の切実さが混じった。
彼は死を恐れてはいない。
彼が恐れるのは、己が一死すれば、大業がついに絶望となることだ。
私は深く息を吸い、無意識に手を伸ばし、身の脇のそのアルミの薬箱を軽く押さえた。冷たい金属の角が掌に当たるが、かえって妙に安心させた。誰かが軍令を下すわけでもなく、功過の簿冊があるわけでもない。ここへ来たのは、もともと誰の指令のためでもない。冷たい角が掌に当たるが、人に妙に安心させた。最も要る一歩は、すでに踏み出していた。先ほどの一瞬、武侯の目の奥の殺意が、散ったのだ。
私は頭を上げ、声は低く、だが疑えぬほどの篤さを帯びて言った。
「二法あります。」
「其一、治療の法。箱の中に蔵するは、皆、後世の救命の品。強心、利水、脈を整え、内を養い、丞相を危篤の際から引き戻し、咳血を止め、元気を回復させられます。丞相、我が言うことに耳を貸せば、少なくとも今回の北伐を凌ぎ、無事に成都へ帰還できます。」
「其二、謀略の法。司馬懿の心、魏軍の部署を知り、如何にして眼下の膠着を破り、最小の代償で魏軍に重創を与え、蜀漢に息つぐ間を争うかを知っています。」
「さらに重要なのは――」
私は目光を灼かせ、諸葛亮を直視して言った。
「私は、誰が後に本当に蜀漢を安定させ、丞相の志を継ぐ者かを知っている。私は、如何にして朝中の奸佞を事前に清除し、後主を安定させ、民心を安んじ、人材を育て、蜀漢が丞相の後に、迅速に分崩離析することがないようするかを知っている。」
「魏延の死は、避けられよう。」
「費禕の刺は、防がれよう。」
「黄皓の乱政の禍は、未だ萌えぬうちに遏えられよう。」
「後主の暗弱は、ゆっくりと導かれよう。」
諸葛亮は私を見つめ、その眼の中の一筋の冷たい殺意が、ついにすっかり散り、一つの重々しい倚靠に変わった。
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