命を受けて都に入る(下)
「雲!」
私は彼の身を返り返し、玄甲と衣の襟を引き裂いた――
手がその胸に触れた時、激しく止まった。
胸の下に平らに巻かれた素の布、その肩と頸の線は男子よりも柔らかく、喉に喉仏はなかった。灯火の下でいつも冷たい顔だった彼が、今は激しい痛みに薄紅に浮かび、明らかに……女であった。
脳裏に一つの念が炸じけた。義父が養った「義子」は、実は女の身であったと。
されど驚く暇はない。箭の鏃は幽らかな青に、創の周りの青紫が肉眼に見える速さで外へ広がり、脈の打ちは速く乱れ、時には一たび止まり――これは毒を淬ねた箭、神経の血に中ったのだ。あと半刻でも引けば、もはや手の施しようがない。
「堪えろ」
私は歯を食いしばり、薬箱はすでに手の中にあった。
箭を抜くに強に引くはならぬ。私は一手で彼の肩をしっかり押さえ、一手で箭桿を掴み、入った道の角に沿って、安く、正しく、速く、一気に抜いた。幽らかな鏃の先が黒い血の一束を連いて出た。直ちに滅菌ガーゼで創口を死に押さえ、噴き出すのを止めた。
毒はすでに血に入っている。私は薬箱を開いた。アドレナリン自己注射ペンを先ず彼の太腿の外側に当て、「かちっ」と一押し、崩れんとする心拍と血圧を支えた。さらにアトロピン安瓿を一本抽き、筋肉注射してこの毒箭の神経の毒を解く。静脈留置針を速やかに肘の静脈に刺し、生理食塩水を繋いで静脈の通路を開き、塩を補って内を養い、虚脱に抗う。さらに薬箱の中のその注射用の広域抗生物質を抽き、肘の静脈より押し入れた――この箭鏃はたった今、断魂坡の泥から抜かれたばかりで、馬糞と鉄錆を帯び、創口は何より汚れ気が血に入り、後日に潰爛して心を攻めるのを恐れる。この一針で先ず感染を門の外に堵ぐ。箭創は先ず生理食塩水で洗い清め、さらにポビドンヨードで徹底して消毒し、残留無きを点しかねて、層を分けて縫合し、加圧包帯を施した。
全体は一碗の茶ほどの時もなかった。
私はこの毒箭の凄まじさをよく知っている。幽らかな鏃の色は、アコニチンの類の神経毒を淬ねたもの。血に入れば心拍を乱し、呼吸の筋を痺させ、並の軍医ならただ箭傷として薬を塗るだけで、半刻で命を取る。アドレナリン・ペンが血圧心拍を支え、アトロピンがその毒の危な象を解き、広域抗生物質が感染を圧え、生理食塩水が利尿して排し、津液を補って内を養い心脈を支える――この一通は、この時代のいかなる医官にも出せぬ手だ。されど私が指先で彼の肋下のその束胸の素の布を撫で過ぎた時、胸の底が激しく沈んだ――この道中、彼女は男子の身を以て、義父のために幾つの明槍暗箭を凌いだか。
このように自ら手を下すのは、私にとって実は稀なことであった。蜀に入って救護の制を立て、医卒を訓れしより、途上と陣上の生死、大抵はすでにその法に帰し、私のこの二手を要らず。唯この一度、身の下に伏せるは雲なり、周りの白毦兵は刺客と咬み合い、半歩も医卒の替わり手を抽く余地なし――ただ自らの手を以て、彼女をその毒箭の下から奪い返すほかなかった。箱の中のその数本の注射用の抗生物質こそ最とも金貴なり、来る時よりすでに寥寥たる数なり。この一針を雲の身に推し入れたるは、初めてにて、且つこの一度のみなり――後に陣上の傷卒千万あれど、倚るべきは烈酒を以て創を滌い、その法なり。再びこの奇薬を費すことなかれ。
諸葛雲の睫が微かに顫え、ゆっくりと眼を開いた。彼女の目覚めの初めの念は痛みにあらず、証がまだ在るかどうかであった――それは暗刃として二十年養われ、骨に刻まれた本能で、痛みよりも先に覚めた。唇は蒼白く、指先が身の側で虚ろに一つ掴み、まるで本能的に懐を摸りに行くようで、すでに私に渡したことを思い出し、瞳が散りてより聚まるまで一息だけ、私の顔に落ちた時、その一点の戒めは薄らぎ、言い知れぬ一種の託しを換えた。彼女は先ず口を開いた。
「軍師……証は……」
「在る」
私は彼女が撐え起こそうとする手を押さえた――そう、今私はすでに心の中で呼び方を改めた。
「卿が気を失う前、私が身に密かにした油布囊に納めた、一滴も漏らさず」
彼女はこの時初めて緩み、口元に極めて淡い笑を引いたが、傷口を引くので眉を顰めた。目を私の未だ収めざる手に落とし、彼女は突然低く言った。
「軍師、すでに見えたれば……もはや隠すには及ばず。義父が雲児を養いし時、雲児はなお襁褓に在り。身の分を掩い、生き残らんがため、幼きより男装をなし、暗探の事を習えり。この身の『義子』、為してすでに二十年。今日……軍師に見え笑わせつかまつる」
なるほど、そうであったか。
孔明の養いしは、元より女であった。
私の喉の奥が熱くなった。二十年の男装、二十年の暗刃、白毦営の中の多くの兄弟さえも統帥が女であると知らず。彼女が義父のために為したは、これまで監察諜報なるのみにあらず、むしろ一身の安危を皆、「孔明は倒れず」との五文字に賭していた。たった今のその一扑、彼女は避くべきであったが、私を替わって箭を凌ぐを選んだ――この一扑、性別とは関わらず、唯「護るべき人を護り得たり」とのみ関わる。
私は彼女の肩を押さえ、唯言った。
「先ず命を顧みよ。女の身であろうがなかろうが、卿が生きてこそ、何より強し」
彼女は眼を閉じ、疲れ極まれるかのようでもあり、また二十年の重い荷を一つ卸したかのようでもあり、久しくして、極めて軽く「うむ」と一声漏らした。彼女は眸を垂れ、私が未だ肩を押さえる手に目を落とし、避けず、むしろ極めて軽く、顔をその掌の方へと斜めに寄せた――その一瞬の緩みと依黏、二十年来初めてなり。
私は彼女の耳の先がこっそり赤くなるのを覚った。たった今までのその殺伐決断の冷たさは、今は少女特有の当惑の一点を泄らした。彼女は自分が私の掌に凭れていると今さら気づいたかのようで、離れようとすれど、惜しむかのようでもあり、唯額の際を私の腕に軽く当て、悶として言った。
「軍師……義父には言わぬでおいてください、わたくし、さっき……怖かったと」
――このように弱きを見せるは、彼女の口から出るは、千軍万馬の陣の勢いよりも人を意外ならしむ。
夜風次第に強く、斜谷の霜気が林の隙を伝って滲み込む。彼女のさっきのその弱きを見せしはすでに気力を尽くし、今は私の腕に凭れ、身は次第に顫え起こりはじめた――寻常の冷たさにあらず、毒箭は解けたれど、血を失い過ぎたり、寒気は先ず骨の隙から漫じ上り、唇の色は前よりも白い。私は彼女の手背を探れば、溪水に浸した如く冷たかった。
「軍師……」
彼女の歯が軽く鳴り合い、まだ坐り直そうとし、私に軽く押し返された。
「動くな」
私は外袍を解き、さらに内層の短褐を脱いだ。されど単衣が二人の間に隔てられ、なお多くの暖もりを渡せず。私は一度心を決め、短褐も脱ぎ、肌を脱いで、彼女の身の全体を懐きに圈し、彼女の背を私の胸に密着させた。肌理が相触れる刹那、彼女は一瞬硬まり、耳の先のその赤が忽ち頸側へ焼け広がった。されど寒気が人を逼るゆえ、彼女は終に挣わず、むしろ暖源を得た小獣のごとく、顔を私の肩の窪みに埋め、極めて軽く息を漏らした。
心拍が心拍に贴る。初めは、彼女の一身の氷なり――私の胸が彼女の脊に贴る刹那、涼しさが嗖っと皮肉を伝って沁み込み、私の肩背の筋を一刺し緊張させた。私は臂を収め、彼女をより強く圈にし、体温を以てその一片の涼き脊を焐め、肩胛より腰線まで、一寸一寸寒気を自らの身へ逼り寄せた。
次第に、氷は解けた。彼女の脊の線が私の掌の中で僵直より綿軟に変わり、先の死白だった唇にもようやく活気の血色が洇み出た。温もりが彼女の体内から私に一つづつ喚び起され、逆に私の皮を焼く――彼女の暖もりが私の熱に贴り、あたかも二つの火種が一処に併せられたかのよう、誰が先ず焼き起こしたか分からぬ。私の耳根も思わず焼け、胸が彼女の脊に当てられし一所が熱く焼け、呼吸さえそれに従いて沈み、乱れ数分した。
彼女の束胸の素の布の下の起伏する呼吸が、一下一下私の肋骨を敲き、ますます焼け、ますます急なり。私の掌が虚ろに彼女の肩の紗布の外の衣料を覆えば、唯暖もりを渡さんと欲したに、自らの掌にも汗の渗むを覚え、指腹の下の衣料が二人の重なる体温に烘されて湿熱となれり。林の間に残るは火堆のかちかちという音と、互いの次第に同頻に疊なりて、ますます焼ける呼吸のみ。この一刻に軍師も暗刃も無く、唯二りの危うくも生きて還りし人、肌を相触れさせ、体温を相融かし、この一夜を焼き切れぬ一団の火に熬たためたり。
旖旎は必ずしも肌の相亲にあらず――彼女の冷たき背が私の懐きの中で一寸一寸焐められ、私が彼女より渡さる暖もりに焼けて耳根が熱くなることなり。彼女がついに私の懐きの中で震えを許し、私がついに手を伸べ、二十年独り扛ぎし寒を、半ば自らの身へ分け、また彼女の身の火に焼かれて、別の物となれり。
白毦兵はすでに残る刺客を尽く剿滅せり――黄皓の天衣無縫の截殺と思いきや、逆に死に送る餌となったり。私は人を遣わして刺客の身の上より黄皓の親ら発した、宮中の私印を捺した死士の令を捜し出し、一緒に証囊に収めた。さらに残る敵の中より玄龍幇の生け捕りを一人活つ捉えきり――その後生は反し縛られて私の前に引き出され、牙関を死に噛みしめ、半ばばかり経って実情を吐き出した。
「上の者、軍師の命を要る。地歩、黄皓の上に在り」
さらに逼問すれば、唯「成都玄龍幇、姚顯はわが幇主なり」と絞り出すのみで、それ以上口を開かず。伏兵すでに除かれ、道は通じ、糸口は城西のその廃れた絹行に係ったり。
私は外袍を解いて彼女の肩を包み、最後の一人の白毦兵の譲った馬に彼女を扶けて上らしめた。彼女の傷口はすでに縫ってあるれど、顔色はなお霜に浸した如く白く、されど強いて真っ直ぐに坐し、半ばの弱き態も露さじと――この道中二十年掙ぎ得た「男装の暗刃」の名を、彼女は一箭にて塌れしめじとす。私は突然悟った、たった今のその一扑は偶ならず――彼女の心の中には、性別よりも要なるもの在り、例えば義父の託せし命、例えばこの一囊の盤を翻すに足る鉄証。蹄の音が夜色を踏み、斜谷の風が彼女の零れた鬢の髪を掠め、私は初めて覚えた、この二十年隠されし薄刃にも、実は照らさるべき一面在りけんと。
その夜交替して背负い、私らは大路を避け、翌日の黎明に成都に達した。
宮門より報じ入れば、後主すぐに召見せり。私は油布囊を双手に捧げ奉った――密使の自白、黄皓の往来の密書、司馬の銅符、一応具わり、あの死士の令もその中に在り。
劉禅は正殿に坐し、初めはなお慵懶として凭几に倚り、漫然として案の際を敲いていた。読み至り「大に司馬懿を破り、関中を震わかす」の句に、身を微かに一直し、さらに読みて「ひそかに司馬と通じ、わが糧道を断ち、ひそかに死士を遣わす」――樁樁件件、皆黄皓の為せる所なり、神色すでに骤に冷たくなりぬ。彼は素より黄皓を寵信すれど、全く昏きに非ず――諸葛亮は在外にしてまさに長安を克復せんとし、誰かこの時掣肘して糧を断つ者は、即ち蜀漢全体と敵と為る。この理、彼は知る。そして黄皓がひそかに死士を遣わして弘正を截殺し、宮中の私印が敵の証囊に落ちしは、なお謀逆の実跡なり――たとえ多年の宠臣なりといえど、もはや保ち難し。
「死士截殺、宮中の私印」の数句を読みて、彼の指節は簡牘を掴んで白くなり、眸の中のその慵懶は尽く褪め去り、徐々に帝王の森としたものに凝じた。彼は簡牘を卓に重く按じ、重い声で言った。
「この事、朕は面に問いて明らかにせねばならぬ」




