谷口(こっこう)設伏(せつふく)(下)
第24 谷口設伏(下)
数人が楊儀に冤を鳴らし、我が多疑を以て非となせり。彼らは知らず、彼らの口の「妥たたき帖帖」なる長史の袖の中に、まさに魏営へ送らんとする密信を隠せるを。彼らが彼に鳴らす「冤」は、やがて親ら彼が落網するを目撃し、口を拭うばかりとなるであろう。
帳の簾が閉ざされるまで、私はゆっくりと口を開いた。「丞相、彼の反応を御覧じよ。核心軍務より排除されたるを知り、神色慌て、眼差し閃めき、決して正常にあらず。もし心中に鬼なかりせば、何を以てかくも安からざるや?」
諸葛亮は眼を閉ざし、久しくして開けば、瞳は一片の冷たさなり。「彼なるか否か、速やかに知るべし。今日、伏撃の計、発動し、全軍調動、彼が真に内通者なれば、必ず急に信を伝えん。諸葛雲が彼を監視せし、彼、逃るることあたわず。」
私は一つ頷いた。網を収むるの局、すでに布かれたり。内に対し、外に対し、二重の罠を同時に開く。
「丞相、そなたもまた少し準備すべきなり。」私は言った、「正午の刻、そなたは自ら谷口の大営に現れ、司馬懿の間者に『病重にして虚弱、辛うじて支う』かたちを目の当たりにさせ、初めて彼を徹底的に局に引き入るべし。」
「余、分かっておる。」諸葛亮は微かに笑み、「演戯など、余にもまだ出来る。」
両人相視れば、共に相手の眼の中の篤とを認む。
日の頭次第に高く昇り、天の中に至り、陽光熾烈、五丈原を照らし、暖かさ融融たり。蜀軍各営は平静に見え、士卒巡邏、操練、飯を炊く、すべて常の如し。なれど平静の下、精鋭はすでに悄然として開拔し、伏兵は持ち場に就き、弓弩は弦に架かり、刀剣は鞘を抜き、一声の令を待つのみ。
私は余すところなく知る、此刻の魏軍の大営の中で何が演じられおるかを——
司馬懿は主位に端座し、左にその子司馬昭、右に大将郭淮、帳下の諸将は両側に分かたず並ぶ。夏侯威は帳の中に立ち、正に意気揚揚として昨夜の「蜀軍大敗」の顛末を稟し、唾を飛ばし、得意せんばかりなり。
「丞相!我、昨夜親ら三百騎を率い、蜀軍の草料営を襲いし!蜀軍、果たして備えなく、一触即退、兜を棄て甲を捨てたり!我、旗数十面、軍械百余件を斬獲し、蜀軍死傷数十、我が軍に一傷もなし!」夏侯威は高く声をあげ、「見るに諸葛亮、果たして病危に起ち得ず、蜀軍の軍心はすでに渙散、敵うべからずと!」
司馬懿、聞き終えて、長髯を撫で、顔に一抹の笑みを浮かべ、眼差しはなお谨慎を帯びて、「おう?蜀軍、まことにかくも敵わざるか?そなたの見し所、守衛はまことに緩かりしや?」
「千真万確!」夏侯威は言った、「我、目の当たりに見たり、蜀軍の大営は乱雑を極め、士卒に闘志なく、巡邏は形のみに等しく。もし深入りに伏兵を恐れざりせば、我、直ちに彼らの中軍大帳に突き進み、諸葛亮の首級を取らんとしたるを!」
司馬昭、一歩前に出で、拱手して言った。「父上、児の見る所、諸葛亮は必ず命を一線に懸け、時日も残らず。蜀軍、龍首を失い、人心惶々たり、まさに我が軍一挙に撃退し、北伐を徹底的に粉砕する大好機なり!機を逸してはならず、父上に令を下さんことを請う、児、先鋒を願い、直ちに蜀軍の中軍に取りに参らん!」
郭淮も頷き、「丞相、蜀軍は長駆して北に上り、粮草艱難、膠着百日、軍心すでに疲れたり。今、諸葛亮病危にして、内部必ず変乱を生ぜん、我が軍この時出撃すれば、必ず大勝を獲ん!今日を過ぐれば、再びこの機あらず!」
帳下の諸将は相いざなって戦を請い、士気高まる。
司馬懿はゆっくりと起ち、帳口に歩み、遠く蜀軍の大営の方に望み、眼差し深遠なり。
彼は諸葛亮と半生相持し、己を知り彼を知る。この人、一生谨慎にして、算り遺さず、たとい病重なりといえど、決して易くかくも大なる破綻を露わすまじ。なれど夏侯威が目の当たりに見しは、蜀軍の潰え、営寨の緩き、また決して偽りにあらず。
真に天、曹魏を助け、諸葛亮は五丈原に命を喪いしや?あるいはまた諸葛亮の故に疑陣を布き、彼を誘い出ださんとするか?
司馬懿、胸中に反復して权衡す。一方は不世の功——蜀軍を撃退し、北伐を平定し、名を青史に垂れん。一方は半生の谨慎——伏兵に中り、兵を損ない将を折り、前功を棄つるを恐る。
私は余すところなく彼が此刻の算段を知る。彼が口上にはなおあの勝券を握るが如き洋洋たる得意を帯び、胸中にはなお全て疑いなきにあらず——ただこの日を待つこと、余りに久しきなり。諸葛亮を耗して死なしむるは、彼が生涯最大の本願なり。この誘惑、大くして彼を賭けに走らしむるに足る。彼は根本より知らず、この賭、賭けるは勝敗にあらず、生死なりと。
久しくして、彼はゆっくりと身を翻し、瞳に一抹の決断が閃めき、さらに志在必得の狂喜を掩いきれず、「諸葛亮、一生、ただ謹慎なるのみ。今、彼は病重にして将に死、蜀軍大いに乱れ、すでに人心所向、大勢の趨く所なり。たとい彼に伏兵あれ、我が軍の兵力の強きを以てすれば、正面よりこれを破るに足る!」
「我が令を伝えよ!」司馬懿の声は高まる、「司馬昭をして五千の歩兵を率い先鋒となし、直ちに蜀軍の中軍大営に撲ち込め。夏侯威をして騎兵を率い側翼となし、先鋒を掩護せしめ。郭淮をして主力を率いその後に接応せしめ。余、自ら中軍に坐鎮し、全線より出撃す!」
「今日、必ず生きながら諸葛亮を擒え、蜀軍を蕩平せん!」
「命に遵ず!」
帳下の諸将、轟として応じ、士気天を衝く。人々皆、すでに蜀を破りし後の封賞を算段せずにはおられず、ただ生きながら諸葛亮を擒にし、師を回りて勲しを受くるを待つのみ——彼らの眼には、この戦、すでに勝ちたり。
蜀軍東側の山谷。
司馬懿の先鋒部隊は司馬昭、夏侯威の率いる所となり、浩浩として蜀軍の谷口の大営に直奔す。遠く望めば、蜀軍の大営は果たして旗散乱し、守衛緩く、士卒往来慌ただしく、戦陣の形なし。
中軍の大旗の下、一架の軟榻の上に、諸葛亮は左右の親衛に扶けられ、微かに倚りかかり、面色蒼白、息づかい微弱、いつ倒るるとも知れず、されど強いてそこに坐し、象徴的に軍を指揮するかの如し。
この一幕、明らかに司馬昭の眼に落ちたり。
「父上、果たして事を料りて神なり!諸葛亮、まことに病膏肓に入り、回天の術なし!」司馬昭、胸中狂喜し、高く令じ、「将兵ら!諸葛亮、もう死なんとす!突き入り、生きながら諸葛亮を擒え、賞金万両を与えん!」
「突け!」「討て!」
魏軍の士卒、歓呼雀躍、先を争い、何の防備もなく、一蜂の如く山谷に突き入る。人々皆、蜀営はすでに爛れ、諸葛亮は将に死なんと信じ、ただ突き入りて功を搶め賞を受けんと、何を以てか陣形の戒備を顧みんや。
山谷は狭長にして、両側の高山聳立し、草木茂密、寂静として声なし。司馬昭、一心に功を搶め、どこに危険を覚えんや、大軍を率い次から次へと涌き入る。夏侯威はなお得意洋洋、昨夜の試が真なりと信じ、馬を縦めて最前に駆け、ただ一番に蜀軍の営寨に突き入り、頭功を立てんとす。
まさに魏軍の大部すべて谷に入り、後隊剛う入り、前路将に蜀軍の営寨に抵せんとする時——
忽然!一つの尖鋭なる号角、長空を劃つ。
「嗚——」
直ちに、両側の高山の上より、鼓声天を震わし、殺声四起。
「箭を放て!」
姜維、一声の厲喝。
無数の箭が高処より傾け落ち、雨の如く、密に谷中の魏軍に射る。魏軍、不意を衝かれ、惨叫連なれり、瞬時に一片倒れ、盾は挙げる間もなかりき。
「伏兵あり!」「中ったり!」
司馬昭、大いに色を失い、顔は蒼白、高く驚呼す、「退け!早く山谷より退けよ!」
なれどすでに遅し。
山谷の出口に、魏延はすでに精鋭騎兵を率い去路を塞ぎ、身後に蜀軍の精鋭、鉄の陣を列ね、刀槍林の如く、すべての退路を封ず。
「司馬昭!」魏延、横に刀を馬に倚せ、声は洪鐘の如く、狂しく一笑す、「そなたが魏の爺がここで久しく待ちしぞ!早く馬を下りて死に候え!」
谷口の正面、もと「病重にして垂危」なる諸葛亮、忽然として親衛を軽く押し退け、ゆっくりと直ちに立つ。蒼白の色は一掃されて消え、息づかい平稳、眼差し鋭利、一領の青袍、手に羽扇を執り、身姿挺拔——どこに半分の病危の相あらんや?




