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五丈原にて諸葛亮を救い、その義子となる  作者: ほしかわ さとる
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谷口(こっこう)設伏(せつふく)(上)

第23 谷口(こっこう)設伏(せつふく)(上)

「はい。」私は頷いた、「この者の足取りは極めて軽く、守衛の交替の規律に通じ、音もなく中軍大帳に近づき得たり、決して凡の将領にあらず。しかも、彼は帳外に停まり、特に丞相の呼吸を聴き、丞相の病状を確かめ、明らかに『丞相の生死』を第一の要務として司馬懿に伝えんとせり。」

「真っ先に我が病状を知り得、また軍機に参与し、中軍に近づき得る者……」諸葛亮の指先が軽く榻の縁を叩けば、「営中、この条件に合う者は、数人に過ぎず:楊儀、費禕、姜維、魏延、および数名の随軍幕僚なり。」

諸葛亮の口にするこの数人こそ、まさに蜀漢軍中と中枢の核心たる人物なり。内通者がその中に潜めば、一旦発じれば、軍心を動かすに足る。

「伯約、あり得ぬ。」諸葛亮は断固として言った、「この者は忠勤時事に励み、思慮精密、心に漢室を存じ、我が自ら選びし軍事の後継者、決して二心なし。」

「文長……」諸葛亮は一たび頓どり、「性は高傲にして、同僚と睦まじからずといえど、忠心は漢室にあり、漢中を十年鎮守し、戦功赫赫たり。もし彼が反かんとせば、とっくに曹魏に降らん、今日まで待つに及ばず。ましてや昨夜あの如く切に我がことを案じおるべからず。」

姜維、魏延を除けば、残るは、楊儀、費禕、および数名の随軍幕僚なり。

私は沈めた声で言った。「費禕公は性は温和にして、処事公允、一向穏重なれば、暗中にて魏と通ずる可能性もまた極めて小なり。かくすれば、残るは……」

私は言わず、目の意はすでに甚だ明白なり。

楊儀。

諸葛亮の眼差しは微かに暗み、軽く嘆じた。「楊威公……才幹は出ずぐらい、軍務、後方の文書を処理し、井井として条に乱れず、かつて過ちなし。ただ心胸狭隘にして、人を容るること能わず、文長と水火の如くなり。余はずっとその才を念じ、捨つるに忍びず。まさか……本当に彼なのか?」

「彼とは限らねど、また排除することもあたわず。」私は言った、「乱世の中、名のためにあり、利のためにあり、家族の安危のためにあり、権勢富貴のためにあり。楊儀は一向自らを高く評し、丞相の後は必ず彼が権を執ると考えおる。もし彼が丞相の病重く望みなし、蜀漢必ず亡ぶと見なば、自らを保らんがため、暗中にて司馬懿に投ずるも、またあり得ぬに非ず。」

これこそ私が意図して埋めた又一重の伏線なり。歴史上、楊儀は魏と通ぜざりしといえど、争権に敗れ、怨言を吐きて賜死せられ、性格の欠陥が注定して彼を極めて不安定な要因となせり。この世において、我は故意に疑点を楊儀に向け誘う——一つは合理なる推測、二つは提前に敲き、提前に防ぎ、決して彼を再び内乱の引き金となさしめぬためなり。

たとえ内通者が楊儀にあらずとも、この清査を借りて彼の権欲を抑え、その行動を制限するも、また軍を穏やかにする計なり。

「余、胸中数あり。」諸葛亮はゆっくりと頷いた、「今日を以て、中軍の機密文書、行軍の調度は、暫く彼に経手させず、ただ粮草後方、日常の雑務を管らしめ、核心の兵権から遠ざくる。同時に、暗中に人を遣わして彼の一挙一動を監視せしむ。もし彼が真に魏軍と連絡あらば、必ず馬脚を露わさん。」

「丞相、英明なり。」私は言った、「かくすれば、蛇を驚かして草を動かすことなく、また内通者が為し得る破壊を制限でき、さらに文長将軍を穏やかにし、両人の再び衝突するを避くることもでき、一挙三得なり。」

私は余すところなく知っている。楊儀が中軍を退く時、袖の中にすでに書き上げ、魏営へ送らんと備えし密信が、彼の掌に握られて熱くなっていたことを。彼は胸中ひそかに得意に思う:諸葛亮は彼の核心軍務を削りしといえど、なお到底彼を信じて粮草後方を管さしめたり——このような要害、どうして彼の眼線なかるべきや。彼は己が天衣無縫に隠れおると思い、今朝黎明の前に中軍へ潜みて窺いし事すら、何人たりとも察せざりき。彼はただ司馬都督が蜀を破るその日を待ち、彼こそ献営有功の「功臣」なるべしと。彼には見えぬ、諸葛雲の遣わせし二名の白毦兵が、影の如く随い、彼の一歩一歩を皆冊の上に記せることを。

ちょうどこの時、帳外からまた足音が聞こえ、今度はやや急促にして、一抹の慌てを帯びていた。

諸葛雲の声が外で響き、凝重を帯びて、「丞相——長史楊儀、面会を求む、後方粮草の急務なる事を稟すべきと。」

諸葛亮と私は一眼を見交わし、共に相手の眼の中に一抹の冷意を見た。

曹操を言えば、曹操やって来る。

諸葛亮の神色は平静に復し、淡く口を開いた。「入れ。」

帳の簾が掀けられ、楊儀が速やかに入ってきた。この人は面容清瘦、眼差し鋭利、一領の文官の服飾、挙止の間に文人の傲気を帯びていた。彼が一たび帳に入れば、目をまず諸葛亮に落とし、諸葛亮の血色の好転を見て、眼に一つ極めて速やか、極めて隠なる驚きが閃めき、直ちに恭しさに化した。

「属下、丞相に拝す!」楊儀は身を屈めて礼を為す。

「起きよ。」諸葛亮の口調は平淡、「何事か稟すべきか?」

楊儀は立ち上がり、拱手して言った。「属下、清晨に粮草を点検し、後営の帳目にやや出入あるに気づき、恐らくは疎漏あらん、特に丞相に請う、再び査核すべきや否や?その他、各営の軍械、馬匹の調配も、また丞相の決定を待つ。」

彼が語るは条り明らか、言辞得体あり、誠に得がたき行政の人材なり。

私は傍らに立ち、動ぜずして観察す。この者の眼差しは閃めき、語る時、目は常ならず知らず諸葛亮の面色に漂い、事を報じる風を装えど、実は暗かに丞相の病状を探りおる。さっきの一抹の驚き、決して偽りにあらず——彼は明らかに黎明の前に窺いし時、諸葛亮を「病危に沈み眠る」と確認し、此刻また丞相の血色の好転を見て、こそかくも意外ならん。

疑点、また一重加わる。

諸葛亮は淡く言った。「粮草の帳目は、そなた自ら査核せよ、事々く稟ずることあるべからず。軍械の調配は、姜維将軍に一統して配せしむ。これより後、中軍核心の軍務には参与することを要らず、専ら後方をよく管り、粮草の絶えざるを確かむるこそ、大功一つなり。」

この言が出で、楊儀の顔色は微かに一変した。

核心軍務の参与権を剥奪し、後方の雑務のみ残すは、これこそ疎遠にされ、制限されたる信号なり。

彼が心に驚き、急に躬を屈めて、「属下……命に遵ず。ただ丞相、属下は一向軍務の処理を助けおったり、今、俄かに身を抽けば、恐らくは……恐らくは軍務に遅れあるかと。」

「余が在り、文長、伯約が在れば、遅れることはない。」諸葛亮の口調は微かに一沈、疑うべからざる威厳を帯びて、「そなたはただ分内の事をよく為し、その餘は多く問うことあるべからず。」

楊儀の心はいよいよ安からず、されど違うことあたわず、顔を強いて応じた。「は……属下、承知いたしました。」

彼はまた原地に立ち、支支吾吾、何か言わんとする素振り、目を再び諸葛亮に落とし、言わんとして止む。

諸葛亮は目に収め、胸中冷笑すれど、面に動ぜず、「また事あらば?」

「な、何もござらぬ。」楊儀は急に神を取り戻し、躬を屈めて一拝、「属下、直ちに粮草を査核に参り、告退つかまつる。」

言い終えて、彼は身を翻して帳外へ退き、足取りは来し時よりやや慌ただしく、後ろ姿に隠々たる驚疑と焦慮を帯びていた。

前営の一処、楊儀の旧部と相熟せる士卒数名が囲み坐し、声を極めて低くして語る。この言、のちに我が耳に届けり。

「わが長史ときたら、有名なる心細にして能く、」と一老卒が楊儀に不びんを抱き、「丞相、なぜ忽然として彼に軍務を管さしめぬや?我、長史が魏と通ずるなど決して信ぜず——彼、先帝の入川に随いしより、いずれの粮草の文書も妥たたき帖帖と弁ぜられずや?」

「さにあらず。」傍らなる者が和し、「あの孔先生、来て幾日ぞ?何を以て一言『内通者あり』を以て、長史の頭に疑いをかけおるや?外より来れる和尙は経をよく唱うと見え、疑神疑鬼、かえって忠臣の心を寒からしむるものと我は見る。」

「ああ、願わくは良き人を枉て冤罪にかけさせたまわずや。」ある者が嘆じ、「されどもし真に勝ち戦をなし、長史また後方の功を立てなば、丞相、必ず彼に清白を還すべきならずや?」

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