療法を立て本を治す(下)
諸葛亮の眸に鋭光一閃した。
「なんと蛇を穴から誘い出すか。そなたのこの心、歩歩連環、余地を留めぬようでいて、なお泰山の如く穏やかじゃ。」
私は苦笑した。
「私が心を緻密にしたのではなく、史に幾多の悲劇がたった一歩の大意に毀てしを知っているからです。私は負けられぬ。丞相も、蜀漢も、皆負けられぬ。」
この言葉は、重々しく語られた。諸葛亮は黙し、久しくしてようやくゆっくりと言った。
「安心せよ。今夜より、薬煎りの件は、諸葛雲が自ら配いせよ。白毦兵は精鋭、口の堅さ厳しく、決して半分も漏らすまじ。」
白毦兵に触れ、胸中いくぶん安らぎした。この蜀漢きっての最も神秘な精鋭の衛隊は、長年諸葛亮と先帝の左右を護り、戦の力強く、忠诚の度合いは論ずるまでもなく、諸葛雲が執掌すれば、あの王医官に通天の本领があろうとも、もはや薬に手を下すことは難かろう。
二人はさらにしばし議し、後の細かな筋を一つ一つ打ち合わせた。さらに再三、諸葛亮に食事・起居・情緒の禁忌をくどくどと叮嚀に言いつけた。過度の思慮を許さず、夜を徹して文書を批閲することを許さず、なおさら「罰廿以上は皆自ら覧ず」ことを許さぬと。これらの言葉、他の者が口にせば、とっくに諸葛亮に乱命と叱られておろう。だが私の口から出れば、彼は一つ一つ承り、半分の苛だちも見せぬ。
ちょうどこの時、帳外から再び軽く穏やかな足音が聞こえ、相変わらず諸葛雲の声、低くいくぶん重々しく響いた。
「丞相、配下、ご要事を密報つかまつります。」
「入れ。」
帳の簾が軽く動き、諸葛雲が大股で入り、片膝をつき、声を極めて低くした。
「丞相、配下すでに人を遣わして王医官を密かに監視つかまつりました。この者、帳を退きし後、医の帳へ戻らず、むしろ後営の馬廐の傍らへ回り、糧秣運送を管る一軍侯と密かに語らい、言葉は仄めかし、続いて密かに一方の素帛をその者に押し付け置きました。」
私と諸葛亮は目を合わせ、共に相手の眼に冷意を見た。
「素帛の上に何と認めし。」と諸葛亮は声を沈めて問うた。
「距離遠く、はっきりは見え申さねど、配下、必ず密信なりと断じつかまつります。」と諸葛雲。「その軍侯は張なる姓、半年前に後方より配られ、糧秣の押送を管り、普段は寡黙にして多く語らず、目立たぬ者。」
「糧秣の押送……」と諸葛亮は指先で寝台の縁を軽く叩いた。「この者、まさに軍中の糧秣、行軍の日程に触れられ、確かに消息を渡す好い位置じゃ。」
胸中密かに驚く。間者がすでに糧秣運送という要害まで渗み込んでいるとは。司馬懿の布石の深さ、早さを窺い知るに足る。もし今日即ち見破らねば、蜀軍の糧秣に差し支えが生じてからでは、それこそ真の滅頂の災いだった。
「なおあるか。」と諸葛亮。
「なお。」と諸葛雲は声を沈めて言った。「その王医官、医の帳へ帰りし後、さらに一羽の伝書鳩を取り出し、密かに放ちました。その方向こそ魏軍の大営にございます。」
伝書鳩。胸中ひとしお冷たさが走る。案の定、この王医官こそ司馬懿が据えた核心の眼線。地上の連絡役のみならず、伝書鳩をもって敵営へ直結している。諸葛亮の日々の病状、食事、軍務は、恐らく絶えず司馬懿の手元へ届けられているに違いない。史書に、諸葛亮「食少事煩」の報が、こうして司馬懿の耳に届き、司馬懿に死守不戦の決意を固めさせたのだ。
今この時、医の帳の中のあの王医官が何を考えているか、私はあまりによく分かる。彼は帳の柱に背を凭せ、伝書鳩の羽音が遠ざかるのを聞き、口元に抑えきれぬ得意を浮かべた。思えば思うほどますます痛快。素帛はとっくに張軍侯へ渡し、伝書鳩は魏営へ奔り、丞相は病膏肓に入り、薬は彼一身に経手。誰が彼の頭上を疑おうか。彼はすでに心头で算らくしておる。司馬都督が蜀を破るその日、己こそが第一の功。封賞、権位は指折り数えるばかり。彼は茶盏を上げ、得意げに一口啜り、あたかも己が平歩青雲し、冠を弾いて互いに慶ぶその日を見るかのよう。彼には見えぬ、帳外の暗がりに、白毦兵の刃先がとっくに密かに彼の後心を狙っていることを。なおさら彼には思いも寄らぬ、己が天衣無縫と自負する一歩一歩が、皆、私と諸葛亮の張った網の中に落ちていることを。ただ網の口を締めるその一刻を待つばかり。
「よい、よいぞ。」と諸葛亮はかえって平静を取り戻し、顔に怒色はなく、ただ一片の氷寒があった。「わしは彼を薄く遇わず、医薬の安危を執掌させたのに、彼はよくも本相に叛き、仲達と密通するとは。」
「丞相、今すぐ手を下し彼らを捕らえますか。」と諸葛雲は手を剣柄に置き、殺気をかすかに現した。
「なかれ。」と私は即座に制した。「今捕えば、ただ藪をつついて蛇を出すだけ。一人の王医官、一人の張軍侯、その背後には必ずさらに上層の連絡する者がおる。我らが一度捕えれば、他の者は即座に証を毀ち形を隠し、後で捕えようとしても難かろう。」
諸葛雲は諸葛亮を見て、決断を待つ。諸葛亮はゆっくりうなずいた。
「弘正の言う通りじゃ。網を収めるには、一網打尽になさねばならぬ。諸葛雲、お前は引き続き厳に監視せよ。王医官、張軍侯と接触する者は、姓名・身分・位置をすべて記し、一人も漏らすでない。わしの令なきに、決して軽挙妄動するな。」
「配下、命に従いつかまつる。」と諸葛雲は声を沈めて応じた。
「別に。」と諸葛亮の眼が厳しくなった。「あの放たれた伝書鳩、阻むには及ばぬ。消息を送り返させよ。」
「丞相。」と諸葛雲は呆けたが、瞬きに諸葛亮の意を悟り、口元をわずかに上げた。「丞相、ご明察。これは将計就計、司馬懿に偽の情報を送り届けるなり。」
諸葛亮は私を一瞥し、眼に一片の默契の笑意を帯びて言った。
「そなたわが意を知るなら、多く語るに及ばぬ。諸葛雲、下がって手配せよ。覚えよ、隠密の二字、一切に重なり。」
「はっ。」
諸葛雲は再び身を屈め、身を翻して帳外へ退き、影は速やかに夜の色に没した。
帳内、再び静かになる。あの偽報はすでに放たれた以上、彼は輿図の前に歩を止めた。他の者がもし「軍権は楊儀・魏延に渡り、内乱まさに迫る」の八字が営に入るのを見れば、必ず蜀中は空虚、天の与えたる好機と言おう。司馬懿は性として疑い深く功を貪るゆえ、「孔明垂死、敵営自ら乱る」の餌に最も堪えられぬ。必ず一隊の精鋭を遣わし夜を趁かがって五丈原へ潜み上がり、あるいは営を劫し、あるいは将を刺し、あるいは糧を焚き、その虚実を試すだろう。普通なら、この刻は灯を尽く点し、全軍戒備の態なるべし。だが私はあえてそうせぬ。とっくに魏延に命じ、一軍を渭の浜の葦の荡に伏せ、ただあの一隊の魏卒が自ら撞き込んでくるのを待つ。この一襲、君を瓮に請い入れ、逆に一軍を将むなり。
私は静かに言った。
「丞相は伝書鳩に『諸葛亮の病勢いよいよ重く、薬は効かず、軍心揺るぐ』の偽の消息を、司馬懿へ伝えさせようと。」
「さよう。」と諸葛亮は淡く言った。「司馬懿が最も知りたるは、わしの生死じゃ。彼、消息を受ければ必ず大喜びし、わしの命もはや永からずと確信し、蜀軍は日を経ず自潰すると見なす。そうなれば、彼必ず警戒を緩め、ひいては小股の部隊を遣わして試みに挑ませよう。」
「その折、我らは機に乗じて伏兵を設け、彼に一場の小勝を浴びせ、蜀軍の士気を昂め、なおさら彼に信じさせる。丞相はもはや指揮する力なく、ただ受け身の守りのみ、と。」
「その通り。」と諸葛亮はうなずいた。「一計両用、内部の間者を安定させ、外部の強敵を惑わす。」
二人は目を合わせ、共に相手の眼に謀略の激突を見た。この言を待たず、一点で通ずる默契、人に胸中いよいよ安らがせた。諸葛亮このような千古の一相の大局の掌握と、私の後世よりの情報優位とを合わせば、この死局、本当に活かす見込みあり。
消息は、秋風よりも速く伝わった。その夜の後半、前営の火の堆の傍ら。数名の什長が火の堆を囲み冷えた餅をかじり、声を潜めて語っていた。
「聞いたか。丞相が……恐らくもうダメだ。」と煤に塗れた顔の老兵が舌打ちした。「昼間のあの先生、べらべらと旨いことを言っとったが、お前ら丞相の血色を見てみい。風が吹けば倒れるぞ。本当に良くなったんなら、中軍に籠もって面を見せぬものか。」




