サイゴノオオイクサ②
「死ねええ!!」
[弱い弱い!!]
壁のように並べられる盾がヴィルゲートを囲むが空を飛び交う黒く光る剣とメイスにより最前列が吹き飛ぶ。それでも、兵士は死兵のように纏わりつき道連れの覚悟で剣をヴィルゲートに突き刺す、一つ動けば動いた部分が傷がつく、しかし、動かなければ後方の魔法兵や弓隊の攻撃をまともに受ける。ヴィルゲートは、そのまま前に突っ込み、盾の隙間に入り込んで聖火の奇跡を発動。
「ぐあ嗚呼嗚呼アア」
彼を中心に、神の使徒と同等の奇跡の奔流の黒い炎が立ち上る。
漆黒の炎は、消えずにひたすら生者から生者へと伝染し骨の髄まで焼き尽くす。
[まだ、この程度では私は死なんぞ!!!!!!]
私は、死ぬわけには行かない。ハハ、血が鼓動が高鳴っているの分かる。あの時とそっくりだ。あの時も3万ぐらい。いやもっと居たか、しかし、建築物は諦めるか、何も守れずに死ぬわけにはいかない。この地を守らねければ、
[水の奇跡]
神父を中心に黒い水が吹き出し、闇のように全てを吸い込むような水は、反乱した川のように勢いよく広がった。
「画嗚呼嗚呼嗚呼アア」
「黒い水に触れるな!!」
水の奇跡、は本来皆を回復させる魔法だが、瘴気に満ちたこの身体は、この黒い水で回復するが、生者はそうはいかんだろう。
「グハッ」
ほら来た。
黒い水を思っきり掛かった眼の前の男が黒い色に侵食され、血反吐を吐き出す。死病だ。この水に掛かった奴らは幾ら瘴気に耐性がある魔族といえどいずれ死ぬだろう。
敵は、荒い息をしながら剣を振るう。私は、地面をすらして下から振り上げる。飛び散る火花、横からヴィントと盾が接近する。
あの大男まだ生きて、、、
ドンというドス黒い音とともにヴィルゲートの骨がいくらか折れ、砲弾のように吹き飛ぶ。しかし、回復の余裕もなく勇者が追い打ちをかける。
死ねない、守る、死ねない、守る、死ねない、守る、死ねない、守る、死ねない、守る、死ねない、守る、死ねない、守る、死ねない、守る、死ねない、守る、死ねない、守る、死ねない、守る、死ねない、守る、死ねない、守る、死ねない、守る、死ねない、守る、死ねない、守る、死ねない、守る、死ねない、守る、死ねない、守る、死ねない、守る、死ねない、守る、死ねない、守る、死ねない、守る、死ねない、守る、死ねない、守る、死ねない、守る、死ねない、守る、死ねない、守る、死ねない、守る、死ねない、守る、死ねない、守る、死ねない、守る、死ねない、守る、死ねない、守る、死ねない、守る、死ねない、守る、死ねない、守る、死ねない、守る、死ねない、守る、死ねない、守る、死ねない、守る、死ねない、守る、死ねない、守る、死ねない、守る、死ねない、守る、死ねない、守る、死ねない、守る、死ねない、守る、死ねない、守る、死ねない、守る、死ねない、守る、死ねない、守る、死ねない、守る、死ねない、守る、死ねない、守る、死ねない、守る、死ねない、守る、死ねない、守る、死ねない、守る、死ねない、守る、死ねない、守る、死ねない、守る、死ねない、守る、死ねない、守る、死ねない、守る、死ねない、守る、死ねない、守る、死ねない、守る、死ねない、守る、死ねない、守る、死ねない、守る、死ねない、守る、死ねない、守る、死ねない、守る、死ねない、守る、死ねない、守る、死ねない、守る、死ねない、守る、死ねない、守る、死ねない、守る、死ねない、守る、死ねない、守る、死ねない、守る、死ねない、守る、死ねない、守る、死ねない、守る、死ねない、守る、死ねない、守る、死ねない、守る、死ねない、守る、死ねない、守る、死ねない、守る、死ねない、守る、死ねない、守る、死ねない、守る、死ねない、守る、死ねない、守る、死ねない、守る、死ねない、守る、死ねない、守る、死ねない、守る、死ねない、守る、死ねない、守る、死ねない、守る、死ねない、守る、死ねない、守る、死ねない、守る、死ねない、守る、死ねない、守る、死ぬわけにはいかない。
ヴィルゲートは青年の方に急接近しメイスを投げるが、すぐに弾かれる。だが、隙は出来た。
「グハッッ」
勇者がメイスを弾いた思った一瞬の気の緩みの刹那、高速の指頭が勇者を貫く。
しかし、そんなダメージも、
「エリアヒール」
やはり、このままではジリ貧だ。私の与えたダメージもあの回復術師に全て回復される。尚且つバフ付与までやっている今は互角かやや優勢だが確実に長引けばこちらが負ける。
[やはり、邪魔ですね。]
ヴィルゲートは常時回復魔法を自分にかけ、メイスを回収し盾兵を破壊し、兵士の一人を足を持った。
[こういう時こそ残酷に行くが吉です。]
ヴィルゲートは兵隊の一人を振り回した。
「がすけて・、」
当然、有り得ないぐらいの鬼畜な所業に理解が及ばず勇者は思考停止。悲鳴の中、人形の新武器を勇者の脳天に叩きつける。当然防御のバフが掛かっている勇者は無事だったが、武器と成ったはずの兵士は頭蓋骨から胸の部分まで衝撃で破壊されその血を勇者は浴びた。
「ああ」
この戦士もまた何かを守るために此処まで鍛えたのだろう。このパーティーは自分が過去に戦った四天王より圧倒的に強い。倒せんかもしれん。ならば、その心に何時までも残り続ける傷を与えてやるぞ!!
私は、雑兵の足を次々と掴み敵に投げ飛ばした。兵士は敵に当たらずとも衝撃で爆散する。その爆散した血液がよい煙幕と成り一体は血の霧で包まれた。
ずっとこの間、敵を少しずつ少しずつ回復術師から離していた。移動しながら回復術を行うには何千回、何万回という数の痛みを己が身で味わい苦しまなければいけないのだ。回復は唯治すだけではない。代償がきちんと存在する。回復するそれに同等の感覚が自分に二倍になって襲いかかっていく。それに耐えられる猛者だけが回復術師に成れる。つまり、いくら丈夫な魔族といえど即死級の痛みをこの身に浴びせながら身体を動かすなど神に愛されている存在でなければ不可能だ。しかも近づきすぎれば私に狙われ得て死ぬ。適度な距離を保ったつもりかもしれんが、予備兵力もなしに、その距離の空間は唯空間的に分断されているに過ぎん。
私は、その間に最も厄介な存在な回復術師を始末するため大急ぎで敵の間をくぐり抜け、メイスを、、、
「引っかかった。反撃だ。」
眼の前に出てきたのは、正教の高官の服装をした剣士だ。
嵌められた!
私に剣を突き出し、腕を切り裂く、私は、切れた腕を剣士にくっつけヒールする。すると、腕が回復し、剣士の腹部を貫きながら回復し、致命傷を与えた。しかし、コレは集団戦だ。油断した瞬間、盾が私に向かって音速を超えた速さで投擲される。私は、すでに避ける。しかし、これは敵の想定通り、
「あのときの盾男か」
「圧壊!」
スキル持ちか!
避けた先に居た、ハンマーを持った男の攻撃を腕で受けたヴィルゲートの腕は粉々に砕け散り吹っ飛ぶ。その先は当然、リーダーらしき青年。ヴィルゲートは突き出された剣を、自分にかかった運動エネルギーと奇跡を使ってメイスで破壊する。そして、足を掴み大男の方に投げる。大男は青年を受け止める。
そこが隙だ。
私は、二人もろともメイスで地面に叩きつける。
「ガアアア!!!」
これで残るは雑兵だ。回復役がコイツラを回復する前に…
眼の前に、宝石の様に輝く石が、、、
[魔石!]
ヴィルゲートは、回避行動をしようとするが、叶わず半身が吹き飛ぶ、だが、この程度で死なん
[ハイヒール]
今すぐ回復役を始末しなければ、
ヴィルゲートは、前に進もうとするが、例の青年が足を掴んだことで止まる。
[離さないのなら死ね]
注意がそれた、だから
「ヴィルゲート、友からの選別だ。受け取れ」
殺したと思った剣士が私の心臓を貫いた。
[まだだ、ハイヒール]
しかし、ヴィルゲートは生き返る。何度でも
[俺は此処を守るんだ。我が娘との約束それすら守らんわけにいかん!!!!!!!!!!!!!]
「死ねえ!!」
勇者が首を刎ねに背後を取る。私はそれを避ける。少し距離を取らねば、もう体はボロボロだ。回復が追いついてない。外側を優先して回復した弊害として回復しきってない胃酸や消化酵素が漏れ出て内側から崩壊していくのを感じる。
こんな、状況下でも人間とアンデットはいまだ均衡を保っていた。水の表面張力と等しいぐらい不安定な均衡。その均衡は、攻撃を避けると言う過ちでひっくり返る。
[しまった。]
避けるために飛んだ先に見えるのは眩しく彩る光
私は、死ぬわけには行かない。
少しずつ失っていく自我、周りに居た人間とも誰一人会えない。誰かに殺されるための生活。怖いんだ。本当は、誰ともあいたくない。彼らが私を拒絶するのはまだいい。しかし、そんな怪物の娘を世間がどう扱うか、とても怖い。
私の人生は、生まれながら灰色だった。
毎日が泥の味。
家族、絆、友という言葉を知る前に魔族、人、魔物の殺し方を学んだ。人の解剖は失格に成った同期だった。
だから、世界は白黒で、灰色で、最後の任務を行ったあの四天王の反応を理解できなかった。しかし、今思うと彼には悪いことをした。
人殺しの暗殺者である私は、地獄に行くのでしょう。
それはいい。
いや、良くない。
地獄なんてとこに行きたくない。天国に行きたい。
地獄に行きたくないと言う思いと何事もない日常を過ごしていくごとに、少しずつだが確かに感じ、募る、亡き同僚たち、殺してきた対象たちが、自分を覗いているという寒気。
彼らに引きずられて地獄に行ったとしたら、私は彼らに死後、報復を受けてしまうのではないか?
その恐怖が私を動かしました。
人には、カルマと言い、罪と善行は積み重なるだけで消えないという考え方があった。神は、悪行の高さと善行の高さを見比べて、裁判を行うそうだ。
つまり、いくら悪行をしたとしても、改心する余地はあるということだ。地獄に行ったら報復を受ける。しかし、天国にいれば報復などという野蛮な行為は許されないだろう。つまり、安全ということだ。
それが、始まりだった。だから私は、人助けをしました。
其の一人が、エルシアでした。
其の頃の私は、手当たり次第、目に付く人間を助けていた。しかし、彼女の場合、本当に欲しいものが何もなく居所の渇望が瞳から見えました。私は、当時、彼女を見て自分と同じだ。と思い彼女を保護し、無いなら一緒に居所を作ろう。つまり、家族になろうといったのです。
人とのコミニュケーションは微妙でしたが、彼女と過ごしていく内に毎日、少しずつだが色が戻ってきた。心の鼓動を高鳴りを感じ始め、安心を手に入れました。そのおかげで、初めて安眠することができたんですよ、毎日、亡者のうめき声とその手が自分に絡みつき引きずり下ろそうとしてくる感覚に終止符を打つことができたんです。このときの私は、本当に喜びました。胸の穴を何かが埋めてくれたような感じがしました。日々が楽しかったんだ。彼女も私を真似してなのか、人を良く手助けするように成った。
この時私は、大事なものができたんだ。
これを、愛、と呼ぶのでしょうね。
それを自覚した時、私はあの四天王が何故、アレほど憎んだ目で自害したのかを理解しました。
きっと、悔しさと惨めさ、そして何もできない自分に対しての憎しみがあったでしょう。大切なものを失くしたと言う事の辛さが彼を死に追いやったのでしょう。
死ぬのは怖い。地獄に行く可能性が少しでもあるから。
しかし、胸に穴が空いたあの頃に戻るのは、もっと嫌だ。
[まだ、、まだ、、死ねない。]
なんて、情けない。
自分のことが笑えてくる。
紅い炎が立ち上り街中を包み込む中、ヴィルゲートは、残った下半身で教会の方に進む。
もうこの街の面影は殆ど無い。
[神の審判]
空から高濃度の光の塊を落とすことで地面をマグマに変えるほどの威力、おかげで教会の方までにも火の手は上がっている。
幸い、炎が私の目隠しに成っていますが、
残念ながら、もうそろそろ私も死にますね。回復する力はまだ残っていますが、もうあのミスで、打開の為の奇跡の量は残っていません。
もう死んでしまう。
それなら、思い出の場所で、思い出の物を。魔族の手が触れぬよう、永遠に封印してしまおう。
協会に入り、体を引きずりながらお湯入れ。
エルシアが残した最後のお茶ですね、楽しまなければ。三分、抽出が終わるまで三分は必要です。
1分
2分
「いた、」
また、あの剣士ですか。少しは、空気というものを読んでほしいですけど、
ヴィルゲートは、筋を立てる。封印の完成までにもう暫く掛かる。その間見つからなければ、この教会、私が娘と過ごした日々が蓄積したこの教会だけは残せるのに、、、
眼の前に居たのは、正教の剣士の男と後ろに黒い靄の魔族がもう二対
正教の剣士の男は、私に剣を向け、、、、
私は、瞬時に後ろ二対の魔族の方に瞬時に移動し、鈍い方にメイスで攻撃を食らわせ、相手の身体はクッキーが砕けるような音がした。それと同時に、隣りにいた魔族と剣士が挟み撃ちで斬りかかり、私は、メイスを縦に円を描くように動かし、両方とも弾く、しかし、剣士はそれを受け流し、私の腕を断絶する。私は、もう片方の手で魔族を剣士に振り投げメイスともども、吹き飛ばす。喜ばしいことに、剣士は衝撃で意識喪失。
近づく魔族の剣を手の甲で受け流し私は魔族の心臓を貫く、その瞬間、大声で騒いでいた魔族の声も溺れるような泡音とともに脱力した。
私は、腕を魔族の身体から離し、暫く魔族を眺めた。彼もなにか大事なものがあったのだろうか、見るからに彼は、隣りにいた女の魔族が負傷してから怒号を上げた。彼女が彼の愛の受け皿だったのだろう。
しかし、君は私の受け皿を壊そうとした。自業自得だ。せめて、一緒に寝かしてやろう。
そう思い、私は、二人の魔族を近くに置いた。
その時
一本の剣が私の心臓を貫いた。
片腕はもがれ、顔も半壊するほどの重症、腹に至っては背中から腸が出るほどの傷で尚その剣士は動いた。
[ヴィルゲート、久しぶりだな、お前勘が鈍ったな。]
その一言で、悟る。その声は紛れもなく吾友ヴィソーカヤ・ヴィルゲートの声だった。私が、彼を魔族と認識したということは、
ああ、皆んな人間だったのか。
途方もない過ちに死の間際に気がつく、しかし、彼の絶望は止まらない。
そして、魔族だと思った原因と成っていた靄が次第に薄れ始め、自分がさっき殺めた二人を見る。
[何故、エルシア。]
「ヴィルゲートよかった。やっとわかってもらえた。」
絶望した私の目とは裏腹に、エルシアの瞳は喜びで包まれていました。失いたくないものをいきなり何の拍子もなく消え去ってしまうことへの混乱が、ヴィルゲートを支配した。彼が、自分の手で自分の愛する者を殺したのです。守ろうと、ずっとこの十年近く私がこの土地を守った理由を何とも皮肉なことに己自身で失くしました。しかし、悲しみそんな気持ちを味わう時間すら私には残されていない。
意識がもう暗くなって、、、、、、、、、、
エルシアの回復をしなければ、
[ヴィソーカヤお前も聖職者だろエルシアにハイヒールを!]
[ああ]
すると、エルシアからの断りの手が、枢機卿ヴィソーカヤを止めた。
[何故、エルシア。]
「ヴィルゲート、今まで言えなかったことがあるの。」
[そんな場合、、、]
わかってしまった。エルシアの状態はヴィソーカヤじゃ直せない。
笑える話だ。正に喜劇と言えるだろう。やっと見つけた。尊く愛くるしい温かさを、自分の手で消してしまったのだ。
私は己の奥歯を血が滲むほど噛み締め、彼女が心配にならぬようひたすら話を聞くべきだ。私のように人生に悔いが残らぬように。
[ズヴェズダー・ヴィルゲート今まで貴方のことが、恋い焦がれる人として、大好きでした。]
口に温かい感触が広がった。




