最終話 別れ
暗く濃い霧の中、一隻の船が通る。
やがて、岸に付き乗船する霊を待つ。
「2人です。お願いします。」
乗船するのは二人、ズヴェズダー・ヴィルゲートとエルシア。ズヴェズダーは、エルシアのことを見て一言、
「何故、私を」
その問いにエルシアは不敵に笑う、ああやっと、やっと伝えることができる。
「貴方は、私に、笑いを悲しみを、安心を、人生の楽しみを教えてくださいました。そんな、貴方をどうして好きにならないのでしょうか。」
「はああぁ」
ズヴェズダーは頭を抱えて溜息をする。そこには少し呆れが混じっていると言ってもいい。とてもではないが、女性に愛を伝えられた人間がする態度ではない。エルシアは胸に針が刺されたような痛みを感じるが、ズヴェズダーに撫でられることで癒える。そして、彼は私を見る。真顔で真っ直ぐな眼が、私に向かいます。一瞬、緊張しましたが、温かい視線です。
「エルシア、貴方は私の娘です。貴方の親です。なので、貴女の思いは嬉しいですが受け取れません。」
沈黙が走ります。
嗚呼、痛いなぁ。
ポッカリ、胸から穴が空いた感じの空虚感、自分が消えるような、存在しているのを実感するような、心臓に氷水を掛けられた、そんな感覚が私に走りました。
知っていたよ。知っていたんだけど。やっぱり、やっぱり、駄目なんだ。私が、後9年、いやもっと早く生まれていれば、会っていれば、何かが変わったのかなあぁ。
嗚呼、涙が、止まらないよ。
もっと早く、生きている内に、聖女になる前に、愛を伝えていれば、何か変わっていたのかな。
わかってる、わかってる。何も変わらなかっただろうことなんて、でも、
諦められないよ。
「勇者との旅どうでした。」
「うん、楽しかった。」
「それは良かった。それとエルシア、私からも伝えることがあります。」
ズヴェズダーは、いきなり立ち上がる。それに応じて、エルシアも立ち上がる。
「何」
「エルシア、私は貴方に感謝しなければいけません。」
「何を、感謝するのは、、、」
「貴方は、私に家族という営みの素晴らしさ、大切な人を守る意味、その尊さ。貴方のお陰で理解できました。戦争で死んでいった戦友のや敵兵の自己犠牲、や私の罪をハッキリと理解できました。貴方のお陰で、大切ができました。愛してますよ我が娘、エルシア・ヴィルゲート。」
咄嗟に強い衝撃を受け、視界が回転し、気が付いたら船から落とされました。
「何で‥」
「親は、娘より早く死ぬものです。そうでなければいけません。私は、あの世で一人で寛ぐので貴方とは当分会いたくないですよ。長生きしなさい。」
この湖は、生者と死者の境なのです。此処で沈めば現世に戻れる。私は、もう戻ってもなにもないでしょうが、彼女は、これからも生きなければいけない。
私は、沈む彼女に一言言う
「エルシア、綺麗になったね。」
お世辞ではなく。本当に心からそう思った言葉、エルシアに伝える。
エルシアは、それを聞くと同時に顔が崩れ、体から力が抜けた。
ずるいです。そんなの
此処を沈めば彼女はまだ助かる。
かくいう私は、このまま裁判です。しかし、最後にやらねばいけない大仕事があります。封印に使おうとした奇跡の力をすべて使えば、私が今回殺した人間全て蘇生できる。神の使徒である聖人だからこそできるジョーカー。
「死者蘇生」
「お前、それをすれば地獄行きは確実になるぞ。」
船の漕ぎ手が私の手を掴み、私に忠告する。当然でしょう。死者を生き返らせるのは、神が作った自然の摂理を捻じ曲げる行為、しかも、何万という数の禁忌。きっと地獄でしょうね。しかし、
「だからなんですか。」
そんなの関係ない。
これが私のケリの付け方です。皆さん迷惑をかけてすいません。
何事もなく私は、発動させる。それと同時に身体をえぐられる感覚がつきまとう。そう、奇跡の量が足りなかったのです。それ故、消費されたのは私の存在力、抉られる度に周りから私に関する記憶が消え失せるのです。きっと、私に関する記憶はもう殆どの人間の脳に残ってないでしょう。それで良いのです。死んだものを何時までも引きずられずにどうか前に進んでほしい。
それと、エルシア、貴方が此処に再び来るときは私の存在は消え失せているでしょう。
ああ、エルシアの結婚式ぐらい見に行きたかったですねえ。まあ、出来ないことは、出来ません諦めま、、、、あれnなみdだggがどまらない。まだ死にたくない。ああ、涙が止まらない。でも、涙は自分が泊まる言い訳にはならない。
「さあ、行きましょうか地獄に」
涙を拭き、漕ぎ手に私は笑顔で挨拶をし、地獄の方へと向かう。地獄に近づくごとに、私が今まで殺してきた亡者の手が自分に絡みつくのを感じまず。私を引きずり込みたいのでしょう。
「無理やりしなくとも自分から行きますよ。」
最後に会えたのが、エルシアで良かった。
エルシア、私の娘で居てくれて、私の大切、になってくれてありがとう。
そして、さようなら。
ズヴェズダー・ヴィルゲートは地獄の闇へと消え去った。
暗い、怖い、此処はどこ。
あ。
光だ。
必死に私はその光に走り込む。何故かその光が自分を救うという確信があったので、
「エルシア、起きて、エルシア」
眼の前にいるのは、死んだはずのヨルナさん。何故、私はいつの間にか死んだのですか?
確か、最後の記憶は私の故郷を取り返しに、、、確か、、、、、、
咄嗟に白い靄が記憶を塗りつぶし思い出せない。
「ヨルナ、此処は天国?」
「違うわよ馬鹿、本当に死んだと思ったんだから、」
ヨルナが私をものすごい力で抱きしめます。少し苦しい。
「離して、」
「ああ、ごめん」
周りを見渡すと大破した自分の村と寝そべっている兵士たち。
「何が起こったの?」
白く塗りつぶされた記憶。彼女に思い出す術はない。
「わからない。気が付いたら此処って感じよ。」
「そう」
少し、落ち込む。何かが引っかかるけど思い出せない。なんだろう。
「あ、エルシア、起きたんだ。」
ユングたちがそういいながらコチラに来る。
「枢機卿は、起きてたみたい。一緒に話を聞きに行こう。」
「わかった。エルシア私、枢機卿のとこ行くけど歩ける?」
「うん。多分歩ける。」
「来たよ。何が起こってるか説明してよ。」
「はあ、ユングよ。私は、一応貴方より立場が上なんだ。敬語を使おうと思わんだか。」
「俺平民だもん。」
枢機卿は重い溜息を吐いて、一瞬視界を下に向けるが、すぐに戻して、答える。
「ああ、説明しよう_______ 」
枢機卿の話は至極単純で、聖女の故郷であるこの村に強力な魔族が潜んでいて、勇者とともに、討伐に向かったしかし、死の間際、魔族が魂を削り自爆した。そのせいで村がこの有り様ということ。
「そういう事で、ユングとエルシア、お前らはその功績を称えられ貴族になる。」
「げええ」
ユングが嫌そうな顔をする。実際、人にゴマをすり媚びを売るのは、ユングの大の嫌いなことなので、貴族は自分に合わないと本能で理解しているのだ。
「因みに、この契約は忘れてないよな。」
何でしょう。エルシアは凝視する。そして、自分の目が信じられなくなる。
「エルシアとの結婚契約!!」
先に声を上げたのは、ユングでした。
ユングの顔は言葉に反して真っ赤、照れているのがバレバレです。そういう私は、この契約を何故やったのかを思い出しあがねていました。何故、でしたっけ。思い出せません。
「たった二年ですね。わかりました。」
「エルシア!!」
ヨルナとユングが叫ぶ。
何故か自分の発言をした瞬間、胸を針で刺される感覚を感じましたけど、気の所為でしょう。
「ユングさん二年お願いします。」
「う、うん。」
「素晴らしい。忘れたからと反故されるかもと冷や冷やしたが、心配はなさそうだな。幸い、此処は教会だ。エルシアも自分の育った教会で結婚式を開きたいだろ。」
「あ、はい。」
「なら今、氏付けといっしょに行おう。」
「え、俺の意思関係無し!」
枢機卿が、ゆっくり剣を取り出し、ユングと私の方に乗せる。
「君たちはこれから、ユング・ヴィルゲート、エルシア・ヴィルゲートと名乗りなさい。」
「「はい。」」
最後まで『辺境の司祭 〜死んでアンデットになったので人類滅ぼします。〜』を読んでいただきありがとうございます。
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