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魔法使いになった俺、ちょっと実家に帰りたい  作者: ぼっち飯


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第42話:お母さんを怒らせてはいけない。

「もしかしてレイさん?」


ルークの言葉にザックはうなずいた。


「そうだ。あの魔法オタク、すっかり引きこもってたんだが、この間ルネスが連絡したら興味持ったらしくてな。お前らに会いたいってよ。」


「昔の仲間ってことは、冒険者してた頃の?」


「おう。ディヒトは覚えてないか?パーティに長い髪の黒っぽい変な奴がいたろ。」


「…急に寝たり、叫んだり、笑ったり、絶望してたおばさんか?」


「おう、それそれ。」


なにそれ怖い。ザックの仲間ということは若くても四十代くらいだろうか。ルネスさんと仲が良いのなら、年も近いのかな。ディヒトにおばさんって言われてるけど、小さい子は二十代の女性にも平気でおばさんって言うからな…。かくいう俺も、自分で自分をおっさんということに抵抗はないが、他人から言われると地味に傷つく。


「魔法オタクってことは魔法使いの人?今は何してる人なの?」


「宮廷魔導師だな。王都で魔法の研究をしている。」


「…ザックって周りにすごい人がいっぱいいるよね。」


「キューテーマドウシってすごい人なのか?」


「多分すごい人だよ、ディヒト。宮廷ってことは王様に実力が認められているってことだし、魔法使いの中でもすごい魔法使いじゃないとできない仕事なんだよ。俺もよく知らないけど。」


なんか頭良くて地位の高そうな職業が出てきた。話したいことがあったと戻ってくるなり再びソファに転がったおっさんにそんな人脈があるようには、とても見えない。


「親父…せめて普通に座ってくれ…。」


ルークは頭を抱えている。


「そんなすごい人ならフォンゾは会ってみたいんじゃない?俺も会ってみたい。っていうかルーク、『銀翼』の他の皆はそのレイさん?に会ったことあるの?」


「いや、ないな。まあ、会ってみて損はないと思う。魔法に関しては本当にすごい人だから。母さんが連絡を取ってるとは知らなかったけど。それならいつが良いか皆に聞いてみるか。」


というルークの言葉に、人数分のドリンクとおやつを運んできたルネスさんがニッコリ笑って言った。


「じゃあ今からレイに連絡しましょうか。向こうの予定をいくつか聞いてみて、その中で皆の良い日を選ばせてもらった方が早いんじゃない?」


「そうだな、少なくともアラタは会ってみたいんだし。どこで会うかの相談も必要だから、母さん、一度連絡お願いしていい?」


「いいわよ。」


ルネスさんが小さな声で詠唱すると、淡く光るピンポン玉くらいの球体が現れた。そこに要件を話しかけている。録音した声を届ける感じか。俺もできるようになりたいなあ。

録音が終わったらしく、再び詠唱したルネスさんの手の上を離れた球体はくるくると頭上を回って、閉まった扉をすり抜けて行った。


「レイったら、珍しくどこか出かけてるのかしら?」


少し不思議そうな表情のルネスさんによると、いつもなら王都の方に向けて飛んでいく伝達魔法が逆方向に向かったのでおかしい、と。少し方角がずれるくらいならわかるけど、真逆は確かに移動しすぎだ。


っていうかヌフは辺境伯領ってことは国の端っこなんだよな。王都と逆方向って国外に出ちゃってないか?なかなか長期の仕事中なんじゃなかろうか。それならそれで帰りに寄ってもらう、とかできるのかな。


「親父、そっちの部屋は客用だろ。俺達、泊まりに来たわけじゃないし夕飯前には帰るぞ。」


ドアノブに手をかけたザックにルークが声をかけたが、真顔、というほど無表情でもない微妙な顔をしたザックは一旦止まって皆の顔を見回し、そのままさっき伝達魔法がすり抜けて行った扉を開けようとする。


「あらやだザック、なんだかんだ言って引き留め…。」


ドサッ。

扉に張り付くように立っていたであろう人物がずるりと床に落ちる鈍い音に、明るいルネスさんの声が途中で止まった。


髪の長い、黒っぽい人物は痛そうに鼻を押さえながら床に腹ばいになったまま首だけ上げ、顔を上に持ち上げる。ヤッベ、目が合った。思わず後ずさってルークを盾にする。


黒っぽい不審者の側に片膝をつき、両腕をその人物の方へ伸ばし、「ジャーン!」という効果音を背負いそうなザックが満面の笑みで声を張り上げる。


「紹介するぜ!俺の昔の仲間で、現・宮廷魔導士のアシュレイ・ロレイン・レイフィールドだ!」


「仲間は皆レイって呼ぶわ。ぜひレイお姉さんと呼んでちょうだい。」


ディヒトがドン引いて黙っている。おい、お前こういう時にぶっこむ奴だったろ。なんか言えよディヒト。黙り込む俺達を余所に「「サプラーイズ」」と言いながら楽しそうにハイタッチする残念野郎と不審者。スベっている。早く気付け楽しいのはお前らだけだ。


「くだらないサプライズは迷惑だって言ってるでしょうがああああ!」


「「ぎゃああああああ!」」


寒々しい空気はルネスさんの文字通りの雷が二人に直撃したことで霧散した。っていうかルネスさん、雷魔法使えるのか。


床でのたうち回る二人を見ながら、今後ルネスさんを怒らせるような絶対にしないと心に誓った。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。ぼっち飯を応援してやってもいいかな、と思ってもらえるような文章を書けるよう頑張ります。


さて、少しでも「面白い」「続きが気になる!」と思っていただけましたら↓下↓にある【☆☆☆☆☆】をタップして

【★☆☆☆☆】にしてくださると嬉しいです。なお、

【★★★★★】にしてくださるととても嬉しいです。


応援してくださる方、本当にありがとうございます。

読んでくれている誰かがいるってわかるのは、結構テンション上がります。


ではまた来週土曜日に。

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