第40話:理由はないけどただ見てみたい
「お!れ!も!行!く!」
「…いやなんでだよ。」
もう5分ほどこのやりとりを続けている。
事の発端はルークがちょっと実家に顔を出してくる、と言ったことだ。俺とディヒトはまだザックの家改めルークの実家に行ったことがない。故に行ってみたい。完全な興味本位である。
最初に「俺も行く~」と言ったら「なんでだよ」と言われたのでさほど興味がなかったはずなのに猛烈に行きたくなってしまった。
「いい子にしてるから~、お願い~!」
「うっわ信用ならねえ。俺の両親見に行って何が楽しいんだよ!」
「いえいえルークさんにはいつもお世話になっていますから、ここはひとつ親御さんに挨拶でもしておかなければ。人として。」
「何が目的だよ何が。俺はだまされねえからな。」
これはあれだ。親を見られるのがなんか恥ずかしい男子のあれだ。隠せば隠すほど期待値を上げてくるくせに実際に会ってみたら隠すほどでもないじゃん…。っていう。
「ちょっと実家気分を味わわせろよ~。普通の家庭が見てみたいんだよ~。」
そう言ってみると、うっと言葉につまるルーク。しめしめあと一押しだぜ。連れて行ってもらえれば俺の勝ちだ。
「心が痛む言い方をするんじゃない、アラタ。」
急に頭に手を置かれた。フォンゾめ。いいとこだったのに。
「ルークも一回くらい連れてってやれば?どうせ同じ地区内に住んでんのになんで渋るのさ。」
「なんか…連れてったら負けな気がして…。」
「バカなの?そんな大人げない理由ならもううるさいから行った行った。領主様に提出する論文、仕上げちゃいたいんだよね。」
すると外から声がする。
「じゃあ俺も行く!ヴィントも良いか?おっちゃんは馬をつなげる場所があるって昔言ってたよな!」
「ディヒトも良いぞ。良いけど…。なんなんだこの敗北感は…。」
ふはは。駄々をこねる奴の要求を呑んでしまったときの負けた気持ち、わかるぜ。満足そうな俺を見て、フォンゾが溜め息をつきながら机に戻る。
「普通に頼めば良いのに何でわざわざ…。どっちもガキくさ。」
すまんフォンゾ。俺は今、シンプルに暇なんだ。この世界、暇をつぶすものが少なすぎる。暮らしが安定してきたところで、そろそろこの世界の知り合いを増やしていくフェーズに入ったと思うんだよ俺は。
今のところ俺の世界は『銀翼』と冒険者ギルド、それからダンジョン。せっかくファンタジー世界に来れたのだから、いろんなものを見たい。手始めに、仲間の母親とか。悲しいことに両親が揃っているのはルークだけで、他のメンバーは孤児、孤児、絶縁、多分死亡という、日本では相当高齢のグループでもなければお目にかかれない組み合わせだ。
「あっ、ルークのお母さん何が好き?果物とか買ってく?」
「なんもいらねえよ。」
「こういうのは最初が大事なんだ。初めて会う人なんだから、第一印象が大事なの!」
「あっそ。」
「ルネスさん!リーダーの家に遊びに行くの!お土産何がいいかなあ。」
「あっ!おいコラ待てお前ら!」
ルークが言わないなら仕方がない。俺とディヒトで八百屋っぽい店の女性に突撃する。なんだかんだ俺達を可愛がってくれているので、同じ女性の立場からご意見をちょうだいしよう。
『銀翼』のホームから歩いて十分ほどのところにある市場の中のこの店は、俺のお気に入りの店のひとつだ。笑顔のかわいいおばあちゃんのお店だ。最近、おばちゃんというには失礼に見える店員さんが時々お店に立っている。
おばあちゃんの二番目の娘さんで、最初お姉さんと呼びかけたら「そんな年じゃないからおばちゃんで」と言われ、おばちゃんと呼ぶことがはばかられたので以降名前で呼ばせてもらっている。俺よりでっかい息子さんがいるとか。いいなー、美人の母ちゃん。
ルネスさんの勧めに従い果物をいくつか購入すると、おばあちゃんがルネスさんにもう上がっていいよ、と声をかけていた。
「あら、母さんありがとう。それじゃあ行くわよ、ルーク。」
行くわよルーク。ルークの方をゆっくりと振り返る。死んだ目をして斜め下を見ながらルークが言った。
「…カアサン。オツカレサマデス。」
少しでも「面白い」「続きが気になる!」と思っていただけましたら、下↓にある【☆☆☆☆☆】をタップして
【★☆☆☆☆】にしてくださると嬉しいです。なお、
【★★★★★】にしてくださるととても嬉しいです。
応援してくださる方、本当にありがとうございます。
読んでくれている誰かがいるってわかるのは、結構テンション上がります。
ではまた来週土曜日に。




