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魔法使いになった俺、ちょっと実家に帰りたい  作者: ぼっち飯


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第39話:転がれ!ギルド長

「今回も詳細な情報に感謝する。」


最近『銀翼』が提出してくるダンジョン内部の調査報告は大変わかりやすくまとめられており、詳しくて正確で助かっている。


「いやー、アラタが本当に優秀でね、助かってるよ。それで今回はダンジョン内の報告の他にちょっと相談したいことがあるんだ。ここからはフォンゾとオスカーに話してもらおう。」


「どうした。珍しいな。」


ザックの息子がリーダーを務めるパーティ『銀翼』は冒険者にしては堅実なパーティで、訳アリな奴を抱えてはいるが今のところ問題を起こすわけでもなく、楽しくやっているようだ。いつもはルークだけで報告に来るのだが、今日は魔法使いのフォンゾと治癒師のオスカーが一緒だ。フォンゾが口を開く。


「結論から言うと、治癒魔法陣の書き換えに成功した。」


「…は?」


何を言ってるんだこいつは。魔法については専門外だが、魔法陣の書き換えの難しさについてはよく知っている。最高位の宮廷魔導士ですら、一生かかってもできるかどうかわからない偉業を、こんな若い奴が?多分間抜け面を晒しているであろう俺に向かって、今度はオスカーが続ける。


「使用魔力量の90%削減及び対象への確実な治癒が可能になる陣ができました。治癒と範囲治癒ができる者ならそれほど苦労することなく習得することが可能です。」


「僧侶のお前が保証するのか。…歴史的快挙だな。」


「いや、オスカーは証人としてきたわけじゃない。開発者だ。オスカーと俺、それにアラタの三人で考えた。それでこの陣に関する情報を、習得方法も含めて領主様に売りたいんだが、できるだろうか。」


「できる。条件は何だ。」


「話が早くて助かります。ギルドで講習会を開く事。受講料は初級のものと同じ金額にすること。魔法の使用自体に制限をかけない事、我々の名前を出さない事。特に最後の条件は必ず守っていただきます。」


ギルドで講習会を開くということは冒険者はもちろんの事、冒険者でなくても学ぶ機会だけは開かれるということだ。だが。


「お前たちはそれで良いのか?魔導協会か魔法省に行くこともできるんじゃないか?」


それに、名前を出さないということは手に入るはずの地位や名誉を自分から手放す行為ではないだろうか。なぜだ。


「アラタが希望したことでもある。あまり目立ちたくないというのは俺も同意だが、あいつはこう言った。待ってる人のところに帰れる人が増える方が大事だと。『銀翼』で独占することもできるが、広めるべきものではないかと。それに、ライゴウ様に受けた恩返しをしたいそうだ。」


「アラタは色々と心を砕いていただいた領主様にいたく感謝しておりましてね。冒険者としての筋を通してギルドから話を持っていく形にし、受けた恩をぜひともお返ししたいと。この技術はきっとヌフのためになるから、と。良い話ではありませんか。我々も感銘を受けましてね。アラタの希望を最大限叶えてやることにしたんですよ。」


そうか。確かアラタはディヒトと一緒に保護されたんだったな。ディヒトの一族が犠牲になったと思われる、ダンジョンの出現。ダンジョンは金を生みもするが、危険と隣り合わせだ。実力のあるものでも運悪く…なんて話に事欠かない。


詳しく話を聞いてみると、クズ魔石を使うとのことだ。今までほとんど使い道がなかったものに、とんでもない価値が生まれた。クズ魔石で良いなら、駆け出しの奴らの仕事にできる。


すっかりその気になって頭の中で計画を立てていた俺の前に、くるりと巻かれた一本の紙が差し出された。笑顔のルークが話し出す。


「それと、アラタは字も上手に書けるようになったから大丈夫そうなら渡して欲しいって、ライゴウ様への手紙を預かってるんだ。父さんに預かってもらうよりガルドさんの方が良いだろうって。預かってもらって良いかな。」


…胡散臭い。アラタを利用して逆に恩を売りつける気じゃねぇだろうか。いや、そうだろう。ルークならやりかねん。アラタ、騙されてコイツの片棒を担がされてねぇだろうな?


ルーク達は冒険者ランク的に言ってもライゴウ様に会うくらいは問題ない。オスカーは対貴族のマナーも多少の心得があるし、もっと話を詰めたら直接交渉の場を作ってもらおう。



***



あの後、割とすんなり謁見の許可が下りてトントン拍子に話が進み、既に数人が新しい魔法陣での治癒魔法の習得を済ませた。いくつかのパーティと騎士団で試験運用し、結果を見てギルドで講習会を始めることとなる。が、俺も見たがあの魔法はすぐに広まるだろう。クズ魔石の準備も着々と進んでいる。


領主館からの帰り道でルーク達にネタばらしされたところによると、今回の話の持って行き方はほとんどアラタの考案だそうだ。末恐ろしい。恩を返すと見せかけて恩を売りつけやがった。


俺は全くわからなかった。ライゴウ様がどこまで気付いたかはわからんが、腹芸は苦手なんだ。なんだろう、いいように転がされているような気がする。


素直で純粋なところがありながら、したたかで狡猾。ルークと組ませたらダメなやつだったか?いや、ギルドとしては頼もしい限りなのか。…まあいい。今は剣術の事を考えているであろう年相応の楽しそうな背中を、応援してやろう。

少しでも「面白い」「続きが気になる!」と思っていただけましたら、下↓にある【☆☆☆☆☆】をタップして

【★☆☆☆☆】にしてくださると嬉しいです。なお、

【★★★★★】にしてくださるととても嬉しいです。


応援してくださる方、本当にありがとうございます。

読んでくれている誰かがいるってわかるのは、結構テンション上がります。


ではまた来週土曜日に。

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