第37話:治癒魔法を省エネしよう
範囲治癒に関しては割とすぐ覚えられた。
フォンゾとオスカーに魔法を教えてもらっているわけだが、最近覚えるのが早くなってきている気がする。
中級以降の魔法は理論とか魔法陣の構築とかが割と面倒なのだが、組み立て方がだんだん予想できるようになってきているのを自分でも感じられてきている。
俺が予想より早く範囲治癒を覚えたので、休憩の時にそんな話をしていると不意にオスカーが言った。
「魔法に関しては詠唱とか魔力の構築の過程、発動のプロセスとかをひっくるめて『言語』としてとらえる研究者もいるくらいだからなー。魔道具に付与する術式陣を見てるとわかりやすいかもしれないな。」
「へー、そっか。そういえばフォンゾとランプ作った時も強さの指定とかやろうと思えば結構細かく指定できてたもんな。」
プログラミングみたいだなと思ったんだよな、あの時。ん?言語?
「あーーー!」
「!…なんだどうした?おどかすなよ。」
そういえば、ディアスタに地頭よくしてもらったんだった。賢くしてやるという言い方ではなかったが、そんな感じだったはずだ。
改めてオスカーに習ったばかりの術式をよく思い返す。地面に広がった魔法陣の上にいる人が治癒される魔法だ。ワイヤレス充電みたいな感じだ。よーく見ると、魔法陣に近いほど効果が強く、接触しているならその面積が大きいほど回復が早くなるような内容の術式だ。
「なあオスカー、範囲治癒って魔法陣の上が効果範囲だよな。」
「そうだな。」
木の棒で地面にガリガリと魔法陣を書いてみる。これを自分の魔力を使って書き出し、発動できるのが魔法。魔力だけでできなくもないけれど、その場合不発や暴発の危険が跳ね上がる。
正確な発動のためには魔法陣を使えるようになる訓練が必要というわけだ。さらにそれをサポートするのが詠唱。魔法の難易度が上がる度に魔法陣は複雑になり、詠唱は長くなってゆく。
魔法陣の構築が苦手な人は詠唱を長くして補うこともできる。つまり詠唱が短ければ短いほどその魔法使いは魔法陣をきれいに描ける魔力コントロールができているということになり、実力の高さを知らしめることとなる。
地面に出来上がった魔法陣の一部を指す。
「ここなんだけど、体の傷や魔力の回復を促す術式の発動条件が『魔法陣に近い』って言うことをあらわしてるよね。魔力を多く使うから範囲治癒は乱発できないわけだけど、発動時に最初に込めた魔力量によって自分を中心に展開される範囲が変わるだろ。
ってことは普通範囲治癒はこの範囲分に魔力を使ってることになる。ならこないだディヒトと教わった、捕捉と組み合わせて…。」
「それならここはこう書き換えて、魔石を使えば…。」
数時間に渡り色々やってみて、クズ魔石を起点に複数名に治癒をかけることができるよう範囲治癒の魔法陣を書き換えることができそうになってきた。本当は弾丸みたいに治癒を飛ばせるようになったらカッコいいなって思ったんだけど。俺にはまだ難しい。
でもこの書き換えが成功すれば消費魔力が十分の一以下だ。魔力が節約できるということは魔力ポーションの節約になる。高いんだよな、魔力ポーション。
その後フォンゾも加わり、対象に当たるまで追尾する攻撃魔法の理論と組み合わせることで俺達の治癒魔法が完成した。火球の時はしなかったけど、今回できたこの魔法はギルドを通して領主様に売ることになった。だよね。これなら仲間だけをピンポイントに無駄なく回復できる。生存率は上げてこう。
なお、これにより『銀翼』がものすごい儲かったことだけは言っておく。
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ではまた来週土曜日に。




