第33話:そういえば受けていた調査クエスト
「1。」
その声と共に、人差指が向けられた方へ真っすぐ飛んでいく小さな火の玉。初級魔法・火球だ。
ただし普通の火球ではない。目でやっと追えるか追えないかという速度。的代わりにしていた土壁のそばにいたディヒトが駆け戻り、興奮気味に報告する。
「すごいぞ!ど真ん中だ。200メートルは離れていたのに!」
「マジか。さすフォン。」
「さすフォンはやめて。」
さすがフォンゾ、略してさすフォンを一昨日から使っているのだが、フォンゾは嫌がっている。まあ、口だけであんま嫌がっている風でもないが。どや顔が隠しきれてないぞフォンゾ。
「これなら火矢は覚えなくても良さそうだな。…にしても古代語の数字を使うとは、格好良いじゃないか。この調子で他の魔法も改良してみようぜ!」
「そうだね。火球が魔力のコントロール次第でこんなに変わるんなら、他にも色々試してみたい。」
オスカーの言葉に頷いて答えるフォンゾ。
結局、詠唱は数字を言うだけになった。短い詠唱の方が咄嗟に使いやすいこと、古代語を知っている人が少ないこと、古代語を知っていても数字だけだとどんな魔法か解析されにくいこと、フォンゾ自身が使う時にどのくらいの魔力を込めているか、口にすることでコントロールしやすいことなどが理由だ。
あと、皆であーでもないこーでもないしていたら数時間後に急に我に返ったせいもある。
「ところでさあ、今回は親父達にどう報告しようか。」
そう、『銀翼』は今回このダンジョン白塔に挑むにあたって速さを重視しないことにした結果、ギルドになるべく詳細な報告を入れる調査依頼を受けていた。おかげで俺とディヒトも冒険者として実地で色々教えてもらいながら登ることができたわけだ。
階層ごとに魔物や地形、獲れる素材、植生などの情報をまとめてギルドに提出する。提出したものをギルドは領主様と共有する。一応辺境伯軍の中からもチームを作って攻略を進めているそうだが、通常業務もおろそかにできないのでうちの他にもいくつかのパーティが調査依頼を引き受けている。
書類のできる筋肉・ギルド長は見た目の威圧感はさておきとても優しい。というと、ルークは遠い目をしながら「アラタは行儀が良いもんな…。」と言っていた。昔はよく怒られていたらしい。なんとザックの冒険者時代の仲間だそうだ。
現在俺達が到達した最高階層は三十八。マッピングしながら進むのは本当は結構大変なのだが、俺にはスマホの地図アプリがある。なぜかダンジョン内も使えたので、できるだけ歩き回って後で書き起こしている。俺が書きだした地図を見ながら皆で情報を追加していくスタイルで、ワイワイと報告をまとめるこの時間が好きだ。
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ではまた来週土曜日に。




