第29話:火の温度
何をすべきか、考えたところで名案がすぐに浮かぶわけではないのでとりあえずダンジョンだ。特にRTAしているわけでもない俺達は、もしヴィントに無理そうな階層があれば一旦戻ることにして六人と一頭で攻略を進めている。
懐中時計は高価なのでパーティの誰も持っていないが、ほぼ正確な腹時計を持つオスカーとディヒトがいる。最初は本当かよと思っていたが、マジだった。おかげでメンバー全員の体内時計が狂うことなく日々を過ごせている。
で、今は薄暗い洞窟の雰囲気の三十五階層の推定夜。今日の見張りの時間はフォンゾと一緒だ。時折ツンケンしながらも質問に答えてくれるフォンゾとしゃべるのは何気に楽しい。今まで俺の周りにいなかったタイプだ。
「なー、フォンゾ。できたばっかりのダンジョンに古代の文字て。何の歴史もないのに歴史感じさせてくるとかどういうことよ。」
あんまり勉強のできる方じゃなかった俺でも、おかしいなと思う事は色々あるのに、「ダンジョンだからなー」という答えが返ってくる。
「俺達にとっては【ダンジョン=現実にはあり得ないことが起きる場所】という認識だから、不思議なのが当たり前なんだよな。」
焚火を見ながらフォンゾは言う。
「アラタお前、そのうち『どうして火は赤いの~』とか聞いてくるんじゃないだろうな?」
「え?温度が低いからだろ。」
「え?」
「え?」
***
…火の温度の概念は一般的ではなかったらしい。周囲に他の冒険者がいないことを再度確認して、フォンゾの質問タイムが始まった。
「火の温度が低いわけないだろ。ほら、素手で触れないくらい熱いんだ。異世界の物は温度で色が変わるのか?」
「えーっと、火は確かに熱い。でも今見てるこの焚火の火をもっと熱くすると青くなるんだ。今は燃料が木だからこの色だけど。」
「木だから?…燃料によって最高温度に上限があるってこと?」
「そう。ガスとかだと青い。俺のいた国ではそれで料理してた。」
「魔法がない世界だっけ。青い火なんて見たことないな。ファイヤーボールとか、炎系の魔法も青じゃない。どうにかして再現できないかな…。」
「魔法はイメージも重要って言ってたけど、温度を上げるイメージってフォンゾにとってどんなだ?」
「単純に魔力を多く、だとこうなんだよな。火」
人差指の少し上に小さな火がともる。生活魔法といわれる、誰でも使える初歩の魔法だ。魔力を少しずつ増やしているのか、徐々に火が大きくなっていく。俺もやってみるが、ガスを燃料にしているように意識をするだけで火は簡単に青くなった。
「何それ!うわ、悔しい!ちょっとそれそのままで!」
フォンゾは俺の出している火と同じ大きさになるよう自分の火を調整して、もう片方の手をそれぞれの火にかざして近づけたり、遠ざけたりを繰り返している。
「確かに温度が違う…。アラタは違う燃料を想像して、魔力をそれに変換しているという事なのかな。魔力消費量は変化ある?」
「んー、どうだろ。よくわかんない。なんかよく燃える不思議物質とか想像したら?」
「そんなんでうまくいったら苦労はないの。今の俺にできる範囲で何か…何か…。」
ダンジョンの超常現象を「ダンジョンだからな」で何とも思わない奴がなんか言ってる。でもこの世界の魔法使い的に理論とかなんかあるんだろう。
「じゃあさ、火の大きさはそのままで込める魔力を増やすとかは?」
「やったことないな。」
再び火。小さい火が不自然に揺れている。急にぐらついて
「「あっぶな!」」
ボワッとフォンゾの前髪をかすめる。今度は顔に近づけないよう何度か試してみるが中々上手くいかない。そろそろ交代の時間が近づいてくる。
「ねえ、逆にちょっと大きいの出してさ、圧縮したら?」
「圧縮?」
「ほら、入りきんない荷物を無理にポーチに詰め込むみたいに。ぎゅうぎゅうに。」
「あーなるほど。圧縮ってそういうことか。」
最初の二倍くらいの火を出すフォンゾ。それを小さく、小さく。
「うーん、あんま変わった感じしないな…。もっとか。」
そして試しに三倍、四倍、五倍…。
「色は変わんない。足りないのは何だろう。」
「フォンゾ、それ疲れたりとかはないの?」
「やったことない操作だから疲れはするけどそれほどでもない。しばらく検証だな。」
ここであきらめないのがフォンゾだ。研究肌というか、気になったことを追求できる根気強さがある。
──そして。
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ではまた来週土曜日に。




