第28話:楽しい食卓
すみません、大幅に遅くなりました。
宿を借りている状態は自分で思っているよりも不安だったらしい。いつか引き払うことを考えていたから、荷物を増やせなかったし。ディヒトはずっとテントで移動する生活だったから荷物を増やすという発想がなかったようで、定住するという感覚が不思議なようだ。この家は風の夜に飛ばされる心配がなくて良いな、と感心していた。
この世界に来て初めて「おかえり」を言ってもらった俺の口から自然に出た「ただいま」のせいで、俺は今更遅れてきたホームシック中だ。猛烈に家族に会いたい。
とはいえ、初めて一人暮らしをした時の経験から知っているのだ。一週間もすればこの気持ちに収まりがつくということを。そして長引かせないためには忙しくするのが俺にとって良いことなのも知っている。ダンジョンに行かないときは水路の掃除や薬草採取の依頼を受けて、買い出しにも積極的に付いて行った。お店のおばさんたちがオススメの調理法を教えてくれるからだ。できることなら食事には変化をつけたい。
父さん、母さん、兄ちゃん一家。急に顔を出してもいつも歓迎してくれて、実家は居心地が良かった。ディアスタが瘴気をなんやかんやするために俺の部屋とこの世界をつなげることができたということは、俺にもそれができるという事にはなるのだろうか。ただ、ディアスタが弱体化していることを考えると膨大なエネルギーは必要なんだろう。精霊にしかできない特殊な魔法なんだろうか。魔法がイメージなら、イメージで補完できる範囲はどのくらいなんだろう。せっかくだから家族のことを考えないようにするよりは、家族に会うための方法を真剣に考えてみよう。そして俺は今後どうなりたいのかも。
ある程度生きるのに必死にならなくなった分、考える時間がとれるようになった。
***
あれから考えがまとまってきたので皆に協力を仰ぐべく、食事中に話を聞いてもらうことにした。
「…と、いうわけでちょっと俺の話を聞いて欲しいんだけど。」
「何?アラタのくせにかしこまって。」
くそ、フォンゾめ失礼な奴だな。まあ若造の言うことなど流してやろう。俺は大人だからな。
「俺、異世界から来たって言ったじゃん。元居た世界に帰りたい。ディアスタが元の力を取り戻すのを待つだけじゃなくて、自分でも帰る方法を探したいんだ。でも、ここでの生活が嫌ってわけじゃない。だから可能なら時々、本当にたまに、好きな時にちょっとだけ実家に帰って基本こっちで過ごす、みたいな都合の良い生活がしたい。それを俺の目標にすることにしたんだ。」
だからそのために迷惑をかけることがあってもよろしく!と頭を下げると、オスカーが笑って言った。
「なんだお前、ルークみたいな生活が最終目標かよ!」
そういえばそ…いや、距離が全然ちげーわ。ツッコむ俺の頭をわしわししながら「照れずに俺に憧れたと、そう言っていいんだぜー」と笑顔のルーク。
「アラタは色々考えてすごいな。俺は今のところ特に目標とかはないな…。」
「いやディヒト、銀級目指してんじゃん。」
「オスカー、それは課題だ。目標ではない。ふむ…俺も何か考えた方が良いか?」
肉を食う手を止めたディヒトに、ルークが言う。
「そういう堅苦しいのは個人の自由だ。お前らを誘った時にも言ったが、俺達『銀翼』のモットーは何事も楽しむことだ。ちなみに俺はカッコいい気がしたから冒険者になって、向いてたっぽいから続けてる。大層な理由も目標もない!」
「そうだな、因みに俺はモテたくて冒険者になった!なのにちっともモテねえ!」
オスカーが酒のカップを持ち上げ、高らかに笑う。僧侶のくせにとんでもねえ奴だ。もう酔ってやがる。なんで弱いのに飲むんだ。そういえばなんで冒険者をやっているのか、訊いたことなかったな。
「へー、エデルとフォンゾは?」
「「黙秘だ。」」
もったいぶるなよ。あとで恥ずかしくなるぞ。
「エデルは~、俺が心配でついてきてくれたんだぜ~。いいヤツだろ~。」
ニヤニヤしながらオスカーが言う。それ以上はやめておけオスカー。また口きいてもらえなくなるぞ。寡黙な奴が更に喋らなくなるだけで結構怖いんだからな。エデルの耳が赤い。ほんとコイツ褒められんのが苦手だよな。
「そいでな~、フォンゾは~、」
「眠れ。」
酔っぱらいは口封じされた。
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ではまた来週土曜日に。




