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73話 治療

 ミザリー様の後に続き、救護院の階段を下る。

 ノエルは静かに私の後を付いてくる。


 階段が途切れた先には奥へ続く廊下があリ、いくつか部屋があるのが見えた。

 ミザリー様は手前の部屋には目もくれず、真っ直ぐに進んでいる。

 目的地は一番奥の部屋のようだ。


 奥の部屋は遠目にも見えていたが、扉には鎖がぐるぐると巻かれ、南京錠の様な物が掛けられている。


「驚いたかい? これに更に魔法が掛けられているのさ」


 ミザリー様は振り返りながら、恐らく目を丸くしていた私に向かってニヤリと笑った。

「この中に暴れ回った輩を閉じ込めているのさ」


「常人とは思えない力があるからね。応急処置程度のものさ」


 頷き返す私に微笑んで、ミザリー様は扉の鍵と鎖を手を触れずに解除していく。


 重量があるだろう鎖は、重さを感じさせない動きでフワフワと宙に浮く。

 こういうのを目にすると、最近忘れがちだけどもここが異世界なんだと再認識する。


 そうこうしているうちに、扉が開くとお世辞にもいい匂いとは言えない、臭気が鼻をつく。


「やれやれ、流石にこのままじゃあまりに可哀そうだったかね」


 床には後ろ手に縛られている、人のようなものが転がっている。

 

「ミザリー様、床に転がっているのは人ですよね?」


 人と呼ぶにはいささか形が逸脱しているそれらに、私は思わず確認した。


「ああそうさ。例のポーションを飲み続けてこれなのさ」

「栄養剤のつもりで飲んでただろうね、気づいた時にはご覧のとおりさ」


「……そうですか」

「驚くのは無理もないさね」


「人間ってバカだね……」

 いままで静かにしていたノエルのあきれた声が足元から聞こえた。


 身体も変形させてしまうポーションなんて怖すぎるよ。

 菜摘は無意識のうちに自分を抱きしめていた。


「さぁてしんみりするのは終いだよ。 本格的に治療を始めようじゃないか」


 そう言うと、ミザリー様は私の頭を軽く叩いた。


「じゃがその前に、一旦綺麗にしておこうかの」


 手にした杖をかざして、ミザリー様は呪文を唱え始めた。

 杖の先端から小さな竜巻が出現して、転がる人の間を抜けながら、部屋の隅々をぐるぐると動き回る。  

 小さな埃を巻き上げながら廊下に流れて行った。


 その後にどこからともなく羽妖精たちがやってきて、良い香りの粉をパラパラと部屋中に撒きだした。

 清々しいフローラルな香りが充満して、一気に気分がよくなった。


「よしよし、いい感じになったの」

「菜摘、例の頼んだやつをそこへ出しとくれ」


 ミザリー様がパチンと指を鳴らすと、何もなかった部屋に机を顕現させた。

 私は肩掛けカバンからありったけのポーションをそこへ出した。


 机が出てきて驚かないかって? いやいや妖精で既に驚いてるから……

 平気そうな顔して対処させていただきます。

 

 ポーションは、彷徨いの森で私が丹精込めて作った。

 ふんだんに濃い瘴気が漂っている彷徨いの森で、魔素を存分に身体に取り込み、幻の薬草ソーマをこれでもかと投入して作りあげた『超超スペシャルポーション』だ。


 ありとあらゆる呪いを撥ね退ける対呪効果。死人も生き返るほどの蘇生能力。

 解呪・再生・解毒に関わる効力を発揮する。

 と私の『鑑定』スキルが評価した珠玉の一品。


 どうですか師匠。

 とドヤ顔でミザリー様を見れば、早く寄越せという視線が返ってきた。


「ほほー上出来じゃないか」


 手にしたポーションを一目みたミザリー様から、お褒めの言葉を頂きました。


「菜摘は、隅にいる奴にやってくれるかの」

「分かりました」


 部屋の中で転がっているのは三人。


 菜摘はポーションを手に取ると、部屋の隅に転がされている人間の元へ近寄って行った。


 



ミザリー様は菜摘ちゃんとは言わないので、呼び捨てに修正しました。

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