表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/76

39話 路地裏走る

 クリスに忠告されてから、しばらくの間は緊張した日々を過ごしていた。

 何事もなく一週間が過ぎた頃には、心配するだけ無駄だろうと思っていた。

 身に覚えもない事で逮捕されるなんて有り得ない。


「お疲れさまでした! また明日もよろしくお願いします」

 

 ローランさんにそう挨拶をして、ノエルと一緒に帰ろうと薬師堂の裏口を出た。

 少し離れた路地からこちらの方向へ歩いてくる、鎧を着た数人の騎士が目に入る。


「騎士は珍しくもないけど、鎧着てるの初めて見るな……」


「ノエル今日は違う道から行こうか!」


 いやな感じがした私はノエルにそう伝えると、足早にいつもの帰り道とは違う方向へ歩き出した。

 ちらっと後ろをみれば騎士達は、薬師堂の前を通り過ぎて反対側へ行くようだった。

 

「何だーただの思い過ごしか……」

 

 少し考えすぎだったなと思いながら、目の前の路地を曲がる直前にもう一度見る、視界の端に通り過ぎた騎士達が踵を返す姿が見えた。


「なななっ何かやばい。ノエル急ごう!」


 ノエルを先頭に私は路地を走った。ガチャガチャと金属がぶつかる音が後方で聞こえる。

 

 路地裏の道は家路を急ぐ人達で溢れていた。その間を私とノエルは縫うように急ぎ足で進む。すれ違うほとんどの人達は走ってくるノエルにぎょっとして中には派手に転ぶ人もいた。


「うわー!! ルプスだ!」

「キャー!!」


「すみません! ごめんなさい!! 」


 慌てて物を落とす人達や悲鳴を上げる周りへ謝りながら、私とノエルは路地を進んだ。


「待てーそこの女!!!!!」


 大声が聞こえて振り向くと、先ほどの騎士達が集団で追いかけてきているのが見えた。住人達は騎士達の為に左右に分かれて道を譲る。


「そこの女ってやっぱ私のことだよね」


 だからと言って止まったりはしない。私は一目散に前だけ向いて走った。


「そこの女何度も言わせるな! 止まれ!」


 路地を抜け広場に出ると私はそこで走るのを諦めた。私の体力は限界だった。

 肩で息をしながら膝に手を当て、騎士達がやってくるのを待つ。


「ようやく止まったか……」

 騎士達の間からツカツカと一人の男が前に出てくるとそう言った。


「私に……何かご用でしょうか……騎士様?」

 息が上がってしまってすらすら言えない。


 騎士は手にしていた紙を広げ、そこに書かれているであろう何かと私を見比べている。


「黒髪に黒目、背丈はエール樽一つ半……犬連れ……と」


 そこまで言い掛けた騎士は、私の側にいるノエルを見ると腰に差した剣に手をかけた。

 

「インフェルノ・ルプス……か。随分小さいな……」


 ノエルは咄嗟に前へ出た。


「ノエル闘っちゃ駄目だよ!!」


 街中でノエルに暴れられたら大惨事になる。あまり刺激して欲しくない。


「我々は国の命令で人を探している。あんたはこの人相書きと合致しているのでな、我々と一緒にきてもらおうか」


「嫌だと言ったらどうなるのでしょうか」


「そうだな、あんたが働いているところに迷惑がかかるだろうな」


「……分かりました」

 

 私のせいでローランさん達に迷惑はかけられない。


「随分と物分かりがいいお嬢さんだ。おっと、そのルプスを使って何かしようとは考えるなよ。それからこれは決まりでね悪く思わないでくれ」


 私の両手には縄が掛けられた。トラウマになりそうだ。

 ノエルには魔力封じの首輪が取り付けられた。


 菜摘。こんなやつら蹴散らして逃げよう! ノエルが念話でそう持ち掛ける。

 それはとても魅力的な提案だけど……

 

 ノエル駄目。今は大人しくこの騎士達に従おう。私はそう念話で返した。

 

 何か誤解されているのなら、今後の為にも払拭しておく必要がある。

 それに薬師堂には迷惑はかけられない……


 私達は王城にある騎士団本部へと連行された。


-----------------


「ローラン先生。たったっ大変だぁー」

 

 路地裏の人だかりの中で成り行きを見守っていたジョンは、急いで知らせに走った。


「ジョンさんどうしたんです? そんなに慌てて……」

 

 薬師堂に残って明日の準備をしていたローランは、裏口から慌てて入ってきた常連客のジョンへ声を掛けた。


「嬢ちゃんが! 菜摘嬢ちゃんが!!」


「菜摘さんが? どうかしました?」


「騎士団に連れて行かれちまっただー」


「何だって! どうしてそんな事になるんですか?」


「儂も事情は知らねえ! 嬢ちゃんとあの犬っころが連れて行かれちまった」


「これは困った事になりましたね……」


 ローランは自身の気を落ち着かせようと、掛けていた眼鏡を外し眉間に拳を当てた。


 騎士団。騎士団か……あの伝手は今も使えるだろうか……

 目を瞑ってローランはぼそぼそと独り言を呟いていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ