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29話 攻防戦

ダナンをバナンとしている所の修正と少し追加してます。

 ビエナ国のとある街。


 黒いフード付きのローブに身を包んだ男は、窓から身を乗り出し火の手が上がり空が赤くなっている街の様子を嬉々とした表情で見つめていた。


「オーランド様。ただいま戻りました」

 

 同じような黒いフード姿の男が音も立てずに室内へ入ってきた。


 オーランドは入って来た男が誰だか分かると身体を引いて窓を閉めた。


「ダナンか。君がいるという事はラミハサーガに送った第二からの定時報告かな?」


「ハッ。報告はこちらに」


 ダナンと呼ばれた男はオーランドの前まで来ると円筒を恭しく差し出した。

 円筒を受取るとオーランドは、中から紙を取り出して目を通した。僅かに方眉が上がる。


「第一は魔法士団に捕縛されたようだねえ。全く困ったものだよ」


 優しい口調だがその目は笑っていない。


「ダナン。第一に掛けたあれを発動させておけ。苦しまずに逝けるだろう」


「ハッ。承知しました」


 ダナンは了承しながら、冷酷な言葉をさらリと口にする主人に背中に冷や汗が流れるのを感じていた。

 オーランドの視線はまだ手元の紙に注がれている。続きがあるようだ。


「ほう。大分削れたようだね」


 紙にはラミハサーガ国の薬草地帯を四割程攻略したとの内容が書かれていた。


 こちらは予定通りのようだね……


 オーランドは満足気に頷くと、両手で持っていた紙を右手に持ち替え小さく呪文を唱えた。

 紙の端にポッと小さな火が点いてメラメラと燃えていく。それを傍らの鉄製の皿に投げ入れる。


「オーランド様。次はどのように」


 頃合いかと感じたダナンは主人へ声をかける。


「次か? 仕込みは済んでいるよ」


「ビエナの方はどうだ?」


「はい。こちらは情報統制下にありますので、他国には一切漏れていません」


「そうかダナン。よくやったと褒めておくよ。僕達にはまだ必要な事だからね」


「滅相もないことでございます」


 ダナンは謙遜した。


「まだ時間はある。君は引き続きラミハサーガに目を配ってくれ」

「分かりました。それでは私はこれで失礼いたします」


 ダナンはオーランドに断りを入れ、来た時と同じく音もなく立ち去った。


 ダナンが立ち去り、周りに人の気配が完全に無いことを確認すると、オーランドは部屋の奥に備え付けられた本棚の前に移動した。前に立ち呪文を唱える。


「ゴゴゴゴゴゴ」

 本棚が横に動くとその後ろに人一人が通れる空間が出来た。奥には地下へと続く階段が見える。


「ボッ」と音が一瞬聴こえたかと思うと、階段に沿って据え付けられた蝋燭に次々と火が灯っていった。


 足元が明るくなった階段をオーランドはリズミカルに下って行く。ほどなくして分厚い重厚そうな扉の前に出た。オーランドはその扉を押し開け中に入った。


 扉の先には大きな空間が広がっていた。天井はどこまで続いているのか分からない位遥かに高い。中央には祭壇のようなものが見える。視線を床に落として見れば床一面には大きな魔法陣が描かれていた。


 オーランドは魔法陣の中央まで歩いて行くと立ち止まった。次の瞬間。オーランドの身体は光り出し魔法陣の中へ吸い込まれて行った。





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 拠点としていた廃屋を失い、森の奥へ逃れた黒いフード姿の男達は新たな潜伏先を見つけていた。

 魔道士団に捕らえられた仲間の安否は気になっていたが、数日前に全員獄中死したとの情報を掴んでいた。


「あの御方が慈悲を下さったのだ……」


 一団のリーダーはそう理解していた。情報を漏らすことは許されない。明日は我が身と言う事に気を引き締める。


 巷では魔道士団の取り調べに疑念の声が上がっていたが彼等は知っていた。失敗した者の末路。仲間達はあのお方に粛清されたのだと。彼等に仲間を悼んでいる時間はない。


「次の地点へ急ぐぞ!」

 

 月明かりの中、目的地に向かって移動する。

 目的地に到着すると、男達は周囲を警戒しながら作戦通りに散開した。


 廃屋から逃れたあの日。

 攻略出来たところもあったが、魔道士団に先回りされ諦めた場所もあった。二度と失敗は許されない。


 男達は薬草地帯を取り囲むと等間隔に並んだ。懐から杖を取り出すと胸元で構え一斉に呪文を唱える。


「レーニナベーテスイハ!!」


 男達の手にしている杖の先から光が放たれると、その光は四方八方から帯状に延び薬草地帯の上空で交差して行った。

 交差した瞬間ぱっと光ったかと思うと取り囲んだ一帯に炎の雨となりそれらは降り注いだ。


「バリィバリィバリィバリィィドンッ」


 何かを引き裂いて爆発したような大きな音が辺り一帯に轟く。


「うわぁぁぁー」


「ギャー、!!」


「何だこれは!!」


 男達は一斉に身体を反らして後ろへはじけ飛んだ。その様は何かの衝撃波をまともに喰らったようだった。

 ドサドサっと次々に後方へ飛んで地面へ叩きつけられように落ちる。


 頭上には先ほど男達が放った炎の雨が降り注いできた。身体に火が付き堪らず転げまわる。


「早く火を消せ!!!」

 

 堪らず側に流れる小川に飛び込む者もいたが、魔法で作り出された炎は中々消えない。

 男達の中には回復魔法の使い手がいたが負傷している者が多すぎた。



「今だ掛かれ!!」


「おお!!!!」


 右往左往する男達の後ろから掛け声が聞こえたかと思うと複数の人影が現れた。


「観念しろ!」


 転がっていた男達は、火傷を負いながらもすぐさま反撃体勢に移った。


「あ奴らは魔道士団だ。皆戦闘の配置につけ!」


 回復魔法で立ち直った者は集団に向かって攻撃魔法を放つ。


 風には風、火に火と黒いフード姿の男達が放つ魔法に同じ魔法で魔道士団は対抗して来る。


 夜が明けるまで、黒いフート姿の一団と魔道士団は互い魔法をぶつけ合う、激しい戦いが繰り広げられた。



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