18話 その頃神たちは
遠見の鏡で様子を見ていたカヤノヒメは、隣にいた兄神をバシバシ叩いた。
「カヤノ痛いではないか」
「だって兄様。あれ見て! 菜摘ちゃんが危険な目にあってるのよ」
加護を与えた人の子が、よからぬ集団に捕まってしまった。
「もちろん見えてるとも」
それなのに、ククノチ兄様の呑気なこと。
「一体アムルダート様は何やってるのかしら」
「護衛を付けるといわれてたな」
「それね……ずっと見てましたけど付いていないわよ!」
「ずっと……って一体お前。いつから見ているのだ」
ククノチは呆れていた。
カヤノヒメは、兄神の呆れ顔など気にも留めず遠見の鏡を凝視する。
「菜摘ちゃんが!! あーもう! 気力を無くして目が虚ろになってるじゃない」
神といっても、さすがによそ様の領域には干渉出来ない。
カヤノヒメはもどかしくて、更に兄神をペシペシ叩いた。
「そうよ! 直接手が出せないなら、あの手を使えばいいじゃない!」
いい手があったとカヤノヒメは立ち上がった。
「何する気だ? カヤノ」
カヤノヒメの言葉にククノチは首をかしげる。
「兄様。私達は何の神ですか?」
どや顔のカヤノヒメ。
「そりゃカヤノが草で儂は木の神をやってるな」
ククノチ神は、何を今更という顔で答えた。
「そうでしょ!そうよね」
「で?」
「でっじゃないわよ」
ピンと来ない、兄神にイラつくカヤノヒメ。
「あれよあれ!草の根ネットワークですわ!!」
「草の根……ああ! あの草の根ね! 久方ぶりに聞いたなその言葉」
何世紀ぶりだろうかとククノチ神は思う。
「なあカヤノそんな昔の協定を誰か覚えていると思うか?」
『草の根ネットワーク』それはありとあらゆる世界に存在する木々や草花『自然』という言葉で、一括り出来る類いに関わる者たちが名を連ねる互助組織。
ククノチ神は、顎に手をあてながら、
「互助会の目的は確か……何かあればお互い協力しましょうね……だったか?」
「はいっ正解!」
「ユグドラシル経由で話しを通してみるわ、あの界隈にも出張ってるはずだから!」
カヤノヒメはネットワークを活用して現地協力者へ依頼した。依頼内容は菜摘をさりげなく陰から支えろ!である。
かくして、木や草たちの間に目に見えないネットワークが形成されつつあった。
ルプスの仔犬にさり気なく場所を教えたのは彼らである……。
一方その頃、アムルダート神達も水晶球に映し出される、事の成り行きを見守っていた。
「これは少々まずいことになってるの」
「ルプスの女王には伝えてありますのでもう間もなくと思われます」
下位神の一人はそう答えた。
「うむ。そなたが手配したのであったな」
アムルダート神は予想外の展開に渋い顔をしながら、
「儂も寄る年波には勝てぬということかの。もう少し気を付けておれば、このような目には合わなかったなずなんじゃが……」
水晶球の中を走っているルプスを見ながら、アムルダート神はぼそっと呟いた。




