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5日目 メリー(1)

RPGツクールなるものを買ったので勉強してゲーム化したいなと、野望を企てたりしています。

師匠回です。

 私の名前はメリー、ただのメリーよ。


 私はシャクティの育ての親にして師匠の天才魔導師。種族はハーフエルフなのだったんだが……多分、今は違うと思うわ……。かつては帝国お抱えの宮廷魔導師をやっていたのだけどそれは今は昔、とあるきっかけで幼いシャクティを拾ってからは放浪の旅をしていて、7年前にこの遺跡に移り住んだの。最初はシャクティと二人して村の人達に迷惑をかけないよう、遺跡東区の迷路街跡の奥地に家を立ててひっそりと過ごしてたのだけど、魔導師だったときの癖で村人達の相談を受けるうちにいつの間にか遺跡村のご意見番にされてしまったのよね……。

 あ、ちなみに遺跡村は遺跡南区の緑地公園跡にあるの。


 え? 東部、南部って何???


 うーん、分かりにくかったかしら?


 じゃあ最初から説明するね。


 遺跡……ううん、この古代都市は大地が盛り上がった台地(テーブルマウンテン)に掘り込まれるように創られているの。……そう、砂場で山を作ったことあるでしょ? 丁度その砂山の上から頂上の部分を掘っていって、火山の噴火口みたくする感じよ。ふふっ、寺子屋(キャメル)の頃を思い出して懐かしいでしょう? 

 それにしても、台地テーブルマウンテンに一国の首都(クラス)の街を掘るのだから、信じられない話よね。土魔法を使うにしても一体どれだけの魔力が必要だったことだろうか……とても人間(わざ)とは思えないわ。きっと"神代の遺物"でも関係してるのでしょう。

 ――あぁ、神代の遺物というのはね、現代の人類には作ることの出来ない強力なマジックアイテムのことよ。アイテムボックスなどが代表例として挙げられるわね。そしてそれら神代の遺物(マジックアイテム)は能力もさておき大変貴重なものだから発見された殆どが国によって大切に保管されている、というのが一般常識ね。国の所有物として厳重に管理されているのだから、ただの平民の人間の手に渡ることは絶対にないの。

 でも実は唯一国の手が及ばず、かつ平民であって神代の遺物(マジックアイテム)を所有することが許される場合があったりする。それが古代遺跡の最奥に安置、収蔵されている場合などよ。

 それらの神代の遺物(マジックアイテム)は遺跡の管理人や遺跡(ダンジョン)を攻略した人に所有する権利があるの。


 だから冒険者のなかには遺跡を攻略し、最奥の古代遺物を入手することを生業としている者もいるんだよ。もし入手した遺物がマジックアイテムで、それも神代の遺物だった場合、管理人になって観光客に公開することで一生働かずに過ごせるからね。


『遺跡にはロマンがいっぱいなんだよぉ〜』って、シャクティが言ってたっけ……。


 ま、そんな訳なんだけど……残念なことに、この遺跡には遺物が全くない。

 

 それはもう遺物のいの字もないわけ。あるのは風化して壊れかけた土器や、なんの面白みもなく錆びきったごく普通の金属器たちのみ……、こういう遺跡を冒険者風にいうと俗に「スカ」っていうのでしょうね。


 もちろん旨味の絞りっカスもないこの遺跡に冒険者がやってくることなんて皆無な訳よ。ま、だからこそ、誰も興味を持たない訳で私達の絶好の移住先になったのだから、私としては大変結構なのだけど……、

遺跡ガイドやりたいって言い出したシャクティには悪かったわ……。


 あの子、張り切っていたからどうしても応援したくなっちゃうのよね。……彼女の悲しむ顔が見たくなくて、なんとかしてあげたくなるの。


 そう、あの日も。師匠という立場に甘んじていた私はいつもつい弟子のシャクティにイジワルしてしまう本当にダメな人間(ハーフエルフ)だったから、あの日もその罪滅ぼしにと分不相応にも関わらず「あの子がいつまでも笑っていられるように」と願ってしまった。愚かにも願ったのだ。元は私の蒔いた種だったのに……。元は私のせいだったのに……!! 気付いたときには全て手遅れだった、あの日、全てが終わってしまったように感じた。そして、ようやく気付けたのよ。私が悪かったことに。


 ああ、……あの子が落ち込む原因を作ったのは全て私だったのに……全く笑えないね、ホント可笑しなはなしよ……。

 どうすればあの子に報いてあげられるか、あの子を幸せにしてあげるか、皮肉なことに天才魔導師だった私には正解が分からなかった。

 そして悩みに悩んだ末、結局、結論は地に転がった。



 ……私は私の胸に従うこととした。



 私は、私が信じることを信じ、為すべきことを為す。

 


 決して(ゆる)ぐことのない誓いを心に立てた。



 魂を触媒に魔法で己を縛った。



 それから、私はシャクティの為に動くことにした。


 

 あの子の、彼女の為に、


 

 したいからやるのっ!



 シャクティの笑顔を見るためなら私は何だって、それこそ私の全てをあの子に捧げたい!!

 

  

 この激なる感情を誰が止められんや。



 そう、私の不動心が彼女を求めていた。



 もう、私から離れないでおくれ。





 ✢ ✢✢ ✢  ✢✢✢ ✢


 あの日を堺に、私には塔が見えるようになった。

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